古典ライブラリー

紫式部日記 第11章

五節の童女と左京の君

五節の寅の日、作者は気が進まないまま道長に連れ出されて御前の試を見る。卯の日の童女御覧では、白昼に人目にさらされる童女たちに自分の身を重ね、宮仕えに慣れてゆく心を恐れる。かつて宮中にいた左京の君が介添え役で出ているのを知った女房たちは、日陰の鬘に歌を添えてからかう。

  1. 1寅とら寅とらとらののの日ひ日ひひのののあしたあしたあした殿てん殿てんてん上じやう上じやうじょう人びと人びとびとまゐるまゐるまいる。。。常つね常つねつねのののことことことなれなれなれどどど、、、月つき月つきつき頃ごろ頃ごろごろにににさとびさとびさとびにににけるけるけるにににややや、、、わかわかわか人うど人うどうどたちたちたちののの珍めづら珍めづらめずらしししととと思おも思おもおもへへえるるるけしきけしきけしきなりなりなり。。。さるさるさるははは摺す摺すすれれれるるる衣きぬ衣きぬきぬももも見み見みみえええずずずかしかしかし。。。
  2. 2そのそのその夜よ夜よよさりさりさり春とう春とうとう宮ぐう宮ぐうぐうのののすけすけすけ召め召めめしししてててたきたきたき物もの物ものものたまふたまふたまう。。。大おほ大おほおおきやかきやかきやかなるなるなる箱はこ箱はこはこ一ひと一ひとひとつつつににに高たか高たかたこううう入い入いいれれれさせさせさせ給たま給たまたまへへえりりり。。。尾を尾をお張はり張はりはりへへへははは殿との殿とのとののののうへうへうえぞぞぞつかはしつかはしつかわしけるけるける。。。
  3. 3そのそのその夜よ夜よよはははおおおまへまへまえのののとととかかか。。。うへうへうえににに渡わた渡わたわたらららせせせ給たま給たまたまひひいててて御ご御ごご覽らん覽らんらんずずず。。。若わか若わかわか宮みや宮みやみやおはしませおはしませおわしませばばばうちまきうちまきうちまきしししのゝしるのゝしるののしる。。。常つね常つねつねにににことことことなるなるなる心ここ心ここここちちちすすす。。。
  4. 4物もの物ものものうけれうけれうければばばしばししばししばしやすらひやすらひやすらい、、、ありさまありさまありさまににに從したが從したがしたがひひいててて參まゐ參まゐまいらららむむんととと思おも思おもおもひひいててて居ゐ居ゐいたるたるたるににに、、、小こ小ここ兵ひやう兵ひやうひょう衞ゑ衞ゑえ、、、小こ小ここ兵ひやう兵ひやうひょう部ぶ部ぶぶなどなどなどもももすびつすびつすびつにににゐゐいててて「「「いといといとせばけれせばけれせばければばば、、、はかばかしうはかばかしうはかばかしゅう物もの物ものものももも見み見みみえええ侍はべ侍はべはべらららずずず」」」などなどなどいふいふいうほどほどほどににに、、、
  5. 5殿との殿とのとのおはしましおはしましおわしましててて、、、「「「なとてなとてなとてかうかうこうてててすぐしすぐしすぐしてててははは居ゐ居ゐいたるたるたる、、、いざいざいざもろともにもろともにもろともに」」」ととと責せ責せせめめめたてたてたてさせさせさせ給たま給たまたまひひいててて、、、心こころ心こころこころにににもももあらあらあらずずずまうまうもうのぼりのぼりのぼりたりたりたり。。。
  6. 6舞まひ舞まひまい姫びめ姫びめびめどもどもどものののいかにいかにいかに苦くる苦くるくるしからしからしからむむんととと見み見みみゆるゆるゆるににに、、、尾を尾をお張はり張はりはり守のかみ守のかみのかみのののぞぞぞ心ここ心ここここちちち惡あ惡ああしかりしかりしかりててていぬるいぬるいぬる、、、夢ゆめ夢ゆめゆめのののやうやうようににに見み見みみゆるゆるゆるものものものかなかなかな。。。事こと事ことことはてはてはてゝゝておりおりおりさせさせさせ給たま給たまたまひひいぬぬぬ。。。
  7. 7このこのこの頃ころ頃ころころののの公きん公きんきん達だち達だちだちははは、、、唯ただ唯ただただ五ご五ごご節せち節せちせち所どころ所どころどころのののをかしきをかしきおかしきことことことをををかたるかたるかたる。。。「「「すだれすだれすだれのののはしはしはしもももかうかうこうさへさへさへ心こころ心こころこころ々ごころ々ごころごころにににかはりかはりかわりててて、、、出い出いいででで居ゐ居ゐいたるたるたる頭かしら頭かしらかしらつきつきつき、、、もてなしもてなしもてなしけはひけはひけわいなどなどなどさへさへさへ、、、更さら更さらさらににに通かよ通かよかよははわずずずさまざまさまざまさまざまににになむなむなんあるあるある」」」ととと聞き聞きききききにくゝにくゝにくくかたるかたるかたる。。。
  8. 8かゝらかゝらかからぬぬぬ年とし年としとしだにだにだに、、、御ご御ごご覽らん覽らんらんののののののわらはわらはわらわののの心ここ心ここここちちちどもどもどもはははおろかおろかおろかならならならざるざるざるものものものををを、、、ましてましてましていかならいかならいかならむむんなどなどなど心こころ心こころこころもとなくもとなくもとなくゆかしきゆかしきゆかしきににに、、、歩あゆ歩あゆあゆみみみ並なら並ならならびびびつゝつゝつついでいでいできききたるたるたるはははあいなくあいなくあいなく胸むね胸むねむねつぶれつぶれつぶれててていとほしくいとほしくいとおしくこそこそこそあれあれあれ。。。
  9. 9さるさるさるはははとりわきとりわきとりわきててて深ふか深ふかふこううう心こころ心こころこころよすよすよすべきべきべきあたりあたりあたりもももなしなしなしかしかしかし。。。われわれわれもももわれわれわれもももとととさばかりさばかりさばかり人ひと人ひとひとのののおもひおもひおもいててて、、、さしさしさし出い出いいでででたるたるたることことことなれなれなればばばにににややや、、、目め目めめうつりうつりうつりつゝつゝつつおとりおとりおとりまさりまさりまさりけざやかけざやかけざやかにににももも見み見みみえええわかわかわかずずず。。。今いま今いまいまめかしきめかしきめかしき人ひと人ひとひとののの目め目めめにににこそこそこそふとふとふと物もの物ものもののののけぢめけぢめけじめももも見み見みみとるとるとるべかべかべかめれめれめれ。。。
  10. 10たゞたゞただかくかくかくくもりくもりくもりなきなきなき晝ひる晝ひるひる中なか中なかなかににに、、、扇あふぎ扇あふぎおうぎもももはかばかしくはかばかしくはかばかしくもたもたもたせせせずずず、、、そこらそこらそこらののの公きん公きんきん達だち達だちだちののの立た立たたちちちまじりまじりまじりたるたるたるににに、、、さてさてさてもももありありありぬぬぬべきべきべき身み身みみのののほどほどほど心こころ心こころこころもちゐもちゐもちいととといひいひいいながらながらながら、、、人ひと人ひとひとににに劣おと劣おとおとらららじじじととと爭あらそ爭あらそあらそふふう心ここ心ここここちちちもももいかにいかにいかに臆おく臆おくおくすすすらむらむらんととと、、、あいなくあいなくあいなくかたはらかたはらかたわらいたきいたきいたきぞぞぞかたくなしきかたくなしきかたくなしきややや。。。
  11. 11たばたばたばののの守かみ守かみかみのののわらはわらはわらわののの靑あを靑あをあおいいいしらしらしらつるばみつるばみつるばみのののかざみかざみかざみ、、、をかしをかしおかしとととおもひおもひおもいたるたるたるににに、、、藤とう藤とうとう宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょうのののわらはわらはわらわははは赤あか赤あかあか色いろ色いろいろををを着き着ききせせせててて、、、下しも下しもしも仕づかへ仕づかへづかえのののからからからぎぬぎぬぎぬににに靑あを靑あをあお色いろ色いろいろをををおしおしおしかへしかへしかえしきたるきたるきたるねたげねたげねたげなりなりなり。。。
  12. 12わらはわらはわらわのののかたちかたちかたちももも、、、一ひと一ひとひと人り人りりはははいといといとまほまほまほにににははは見み見みみえええずずず。。。宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょう中ちゆう中ちゆうちゅう將じやう將じやうじょうはははわらはわらはわらわいといといとそびやかそびやかそびやかににに髪かみ髪かみかみどもどもどもをかしをかしおかし。。。みなみなみな濃こ濃ここきききあこめあこめあこめににに上うは上うはうわ着ぎ着ぎぎはははこゝろごころこゝろごころこころごころなりなりなり。。。
  13. 13汗かざ汗かざかざ衫み衫みみははは五いつ五いついつへへえなるなるなる中なか中なかなかににに、、、をはりをはりおわりはははたゞたゞただえびえびえび染ぞめ染ぞめぞめをををきせきせきせたりたりたり。。。なかなかなかなかなかなかゆゑゆゑしくゆゑゆゑしくゆえゆえしくこゝろこゝろこころあるあるあるさまさまさましししててて、、、ものものものゝゝのいろいろいろあひあひあいつやつやつやなどなどなど下しも下しもしも仕づかへ仕づかへづかえのののいといといとかほかほかおすぐれすぐれすぐれたるたるたる、、、
  14. 14扇あふぎ扇あふぎおうぎとるとるとるとてとてとて六ろく六ろくろく位ゐ位ゐいののの藏くら藏くらくら人うど人うどうどどもどもどもよるよるよるににに、、、心こころ心こころこころをををなげなげなげやるやるやるこそこそこそやさしきやさしきやさしきものものものからからから、、、女をんな女をんなおんなにににはははあらあらあらぬぬぬかかかととと見み見みみゆれゆれゆれ。。。
  15. 15我われ我われわれ等ら等ららををを彼かれ彼かれかれがががやうやうようにてにてにていていていてゐよゐよいよとととあらあらあらばばば、、、又また又またまたさてさてさてもももさまよひさまよひさまよいありくありくありくばかりばかりばかりにににぞぞぞかしかしかし。。。かうかうこうまでまでまで立た立たたちちち出い出いいでででむむんとととははは思おも思おもおもひひいかけかけかけきききやややははは。。。
  16. 16されどされどされど目め目めめににに見み見みみずずずあさましきあさましきあさましきものものものははは人ひと人ひとひとののの心こころ心こころこころなりなりなりけれけれければばば、、、今いま今いまいまよりよりより後のち後のちのちのののおもなさおもなさおもなさはははたゞたゞただなれなれなれににに馴な馴ななれれれ過す過すすぎぎぎ、、、ひたひたひたおもておもておもてにににならならならむむんももも事こと事ことこと安やす安やすやすしししかしかしかしととと、、、
  17. 17身み身みみのののありさまありさまありさまののの夢ゆめ夢ゆめゆめのののやうやうようににに思おも思おもおもひひいつゞけつゞけつづけられられられててて、、、あるあるあるまじきまじきまじきことことことにににさへさへさへ思おも思おもおもひひいかゝりかゝりかかりてててゆゝしくゆゝしくゆゆしくおぼゆれおぼゆれおぼゆればばば、、、めめめとまるとまるとまることことことももも例れい例れいれいのののなかりなかりなかりけりけりけり。。。
  18. 18侍じ侍じじ從じゆう從じゆうじゅう宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょうののの五ご五ごご節せち節せちせちののの局つぼね局つぼねつぼね、、、宮みや宮みやみやのののおおおまへまへまえのののたゞたゞただ見み見みみ渡わた渡わたわたすすすばかりばかりばかりなりなりなり。。。たてたてたて部じとみ部じとみじとみのののかみかみかみよりよりより音おと音おとおとににに聞き聞ききくくくすだれすだれすだれのののはしはしはしももも見み見みみゆゆゆ。。。人ひと人ひとひとののの物もの物ものものいふいふいう聲こゑ聲こゑこえもももほのほのほの聞きこ聞きこきこゆゆゆ。。。
  19. 19「「「かのかのかの女によう女にようにょう御ご御ごごののの御おほん御おほんおおんかたかたかたににに、、、左さ左ささ京きやう京きやうきょううまうまうまととといふいふいう人ひと人ひとひとなむなむなんいといといとなれなれなれてててまじりまじりまじりたるたるたる」」」ととと宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょうののの中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうむかしむかしむかし見み見みみしりしりしりててて語かた語かたかたりりり給たま給たまたまふふうををを、、、
  20. 20一ひと一ひとひと夜よ夜よよかのかのかのかいつくろひかいつくろひかいつくろいにてにてにてゐゐいたりたりたりしししひんがしひんがしひんがしなりなりなりしししなむなむなん、、、左さ左ささ京きやう京きやうきょうととと源げん源げんげん少せう少せうしょう將しやう將しやうしょうももも見み見みみしりしりしりたりたりたりしししををを、、、物もの物ものもののののよすがよすがよすがありありありててて傳つた傳つたつたへへえ聞き聞きききききたるたるたる人ひと人ひとひと々びと々びとびと、、、「「「をかしうをかしうおかしゅうもももありありありけるけるけるかなかなかな」」」ととといひいひいいつゝつゝつつ、、、いざいざいざ知し知ししらららずずず顏がほ顏がほがおにににはははあらあらあらじじじ。。。
  21. 21むかしむかしむかし心こころ心こころこころにくにくにくだちだちだちててて見み見みみならしならしならしけむけむけんうちうちうちわたりわたりわたりををを、、、かゝるかゝるかかるさまさまさまにてにてにてやややははは出い出いいででで立た立たたつつつべきべきべき。。。しのぶしのぶしのぶととと思おも思おもおもふふうらむらむらんをををあらはさあらはさあらわさむむんののの心こころ心こころこころにてにてにて、、、
  22. 22おおおまへまへまえににに扇あふぎ扇あふぎおうぎどもどもどもあまたあまたあまたさぶらふさぶらふさぶらう中なか中なかなかににに、、、蓬ほう蓬ほうほう萊らい萊らいらいつくりつくりつくりたるたるたるをををしもしもしもえりえりえりたるたるたる心こころ心こころこころばへばへばえあるあるあるべしべしべし。。。見み見みみ知し知ししりりりけむけむけんやややははは。。。
  23. 23箱はこ箱はこはこののの蓋ふた蓋ふたふたにににひろげひろげひろげててて日ひ日ひひをををまろめまろめまろめててて、、、そらいそらいそらいたるたるたる櫛くし櫛くしくしどもどもども、、、白しろ白しろしろきききものものもの、、、いみじくいみじくいみじくつまづまつまづまつまづまをををゆひゆひゆいそへそへそえたりたりたり。。。
  24. 24「「「少すこ少すこすこしししさださださだすぎすぎすぎ給たま給たまたまひひいにににたるたるたるわたりわたりわたりにてにてにて、、、くしくしくしのののそりそりそりざまざまざまなむなむなんなほなほしきなほなほしきなおなおしき」」」ととと君きん君きんきんたちたちたちのののたまへたまへたまえばばば、、、今いま今いまいまやうやうようのののさまさまさまあしきあしきあしきまでまでまで、、、つまつまつまもももあはせあはせあわせたるたるたるそらしそらしそらしざまざまざましししててて、、、
  25. 25くろはうくろはうくろぼうをををおしおしおしまろがしまろがしまろがしてててふつゝかふつゝかふつつかにににしりしりしりさきさきさき切き切ききりりりててて、、、白しろ白しろしろききき紙かみ紙かみかみ一ひと一ひとひとかさねかさねかさねにににたてたてたてぶみぶみぶみにににしししたりたりたり。。。大たい大たいたい輔ふ輔ふふのののおもとおもとおもとしししてててかきかきかきつけつけつけさすさすさす、、、
  26. 26「「「おほかりおほかりおおかりしししとよとよとよののの宮みや宮みやみや人びと人びとびとさしさしさしわきわきわきてててしるきしるきしるき日ひ日ひひかげかげかげをををあはれあはれあわれとととぞぞぞ見み見みみししし」」」。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

寅の日の朝、殿上人が参上する。いつものことだが、この数か月里住まいのようになっていたからだろうか、若い女房たちはめずらしいと思っている様子である。とはいえ、まだ(臨時の祭の)摺り衣は見えない。

その夜、(中宮さまは)春宮の亮を召して薫物をお与えになる。大きな箱一つに高く盛って入れさせなさった。尾張守(の舞姫)へは殿の北の方がお贈りになった。

その夜は御前の試だとか。帝が(清涼殿に)お渡りになってご覧になる。若宮もいらっしゃるので、散米をまいて大声で騒ぐ。いつもと違う心地がする。

気が進まないので少し休んで、ようすを見てから参上しようと思って控えていると、小兵衛や小兵部なども炭櫃のそばにいて、「たいそう狭いので、ろくに見えません」などと言っているうちに、

殿がいらっしゃって、「どうしてこうして過ごしているのか。さあいっしょに」とせきたてなさるので、気の進まないまま参上した。

舞姫たちがどんなにつらいだろうと見ていると、尾張守の舞姫が気分が悪くなって退出していくのが、夢のように見えることよ。行事が終わって、帝はお下りになった。

このごろの公達は、ただ五節所の趣深いことばかり話題にする。「簾の端までが、それぞれ趣向が違っていて、そこに座っている女房の頭つきや身のこなしや雰囲気までも、まったく似ていなくてさまざまだ」と、聞き苦しく話す。

こうした(特別な)年でなくても、童女御覧の日の童女たちの気持ちはひととおりのものではないのに、まして(今年は)どんなだろうと気になって見たいと思っていると、歩み並んで出てきたのを見ると、わけもなく胸がつぶれる思いがして、気の毒でならない。

とはいえ、特に深く心を寄せるべき(舞姫の)家もないのだが。われもわれもとあれほど人々が思って差し出したことだからだろうか、目移りして、優劣もはっきりとは見分けられない。当世風の人の目なら、ちょっとした違いも見てとれるのだろう。

ただこのように曇りもない昼の明るさの中で、扇もろくに持たせず、大勢の公達が立ちまじっているところに、それなりの身分や心づかいの者とはいえ、人に負けまいと競う気持ちも、どんなに気後れしていることだろうと、むやみに気の毒に思うのは、かたくななことだ。

丹波守の童女の青い白橡の汗衫を趣深いと思っていたところ、藤宰相の童女には赤色を着せて、下仕えの唐衣に青色を裏返して着せているのは、ねたましいほどである。

童女の容貌も、一人はあまり整っては見えない。宰相中将(兼隆)の童女はすらりとしていて、髪もみな美しい。みな濃い紅の衵に、表着は思い思いである。

汗衫はみな五重の中に、尾張守のはただ葡萄染を着せていた。かえって由緒ありげで心得のあるようすで、色の取り合わせや光沢など(も見事で)、下仕えのたいそう顔立ちのすぐれた者が、

扇を取ろうとして六位の蔵人たちが近寄ると、自分から扇を投げ出したのは、優美ではあるものの、女らしくないのではないかと見えた。

わたしたちを、あの童女たちのようにして(人前に)出ていよと言われたら、またそのようにうろうろとさまよい歩くばかりだろう。こんなにまで人前に出ようとは、思いもかけなかったことだ。

けれども、目に見えずあきれるものは人の心なので、これから先の厚かましさは、ただ慣れに慣れすぎて、平気で顔を人前にさらすようになるのもたやすいことだろうと、

わが身のありさまが夢のように思い続けられて、あってはならないことにまで思いが及んで縁起でもなく思われるので、目にとまることもいつものようになかった。

侍従の宰相(実成)の五節の局は、中宮さまの御前からちょうど見渡せるところにある。立蔀の上から、評判の簾の端も見える。人の話し声もかすかに聞こえる。

「あの弘徽殿の女御の御方に、左京の馬という人が、たいそうもの慣れたようすでまじっている」と、宰相の中将(兼隆)が昔の顔見知りで話しなさるのを、

「先夜、あの介添え役で座っていた、東の方の人がそうだった」と、左京とは源少将(雅通)も顔見知りだったのを、何かのつてで伝え聞いた女房たちは、「おもしろいこともあったものね」と言いながら、さあ、知らない顔はしていられまい(と言い出した)。

昔は奥ゆかしくすまして見慣れていた宮中に、こんな(介添えの)姿で出てくるものだろうか。隠しおおせていると思っているのを暴いてやろうという気持ちで、

御前に扇がたくさんある中から、蓬莱山を描いたものをわざわざ選んだのには、意味があるのだろう。(左京は)それに気づいたかしら。

箱の蓋に(扇を)広げて、日陰の鬘を丸めて載せ、反らせた櫛や白粉などを、端々に結びつけてある。

「少し年を取った方なので、櫛の反り方がふつうではいけない」と公達がおっしゃるので、当世風の見苦しいほどに、両端が合うほど反らせて、

黒方の薫物を押し丸めて無骨に両端を切り、白い紙一重ねに立て文にして添えた。大輔のおもとに頼んで(歌を)書きつけさせる、

「大勢いた豊明の節会の宮人の中でも、とりわけ目立っていた日陰の鬘のあなたを、しみじみと拝見しました」。

意訳

五節の寅の日。殿上人たちが参上し、久しぶりの宮中の行事に若い女房たちが目を輝かせる。

中宮は舞姫を出す人々に薫物を贈る。

夜は清涼殿で御前の試があり、帝が舞姫をご覧になる。

作者は気が進まず、局でぐずぐずしている。

道長に見つかり、無理やり連れて行かれる。作者がしばしば道長に引っぱり出されていたことがわかる。

尾張守の舞姫は気分が悪くなって退出した。作者はその姿を夢のようだと見る。

公達は五節所の女房たちの品定めに夢中である。作者はそれを聞き苦しいと感じる。

卯の日の童女御覧。白昼に人前に出る童女たちの心中を思って、作者は胸がつぶれる思いがする。

どの家の童女にも特別の縁故はないが、みな着飾っていて、優劣は見分けがたい。

扇で顔を隠すこともできず、公達の前にさらされる童女たち。作者は自分の同情を「かたくなしき(偏屈な)」と自嘲する。

童女たちの装束の品定め。

童女の容姿や髪。

尾張守の童女の装束は、控えめながら心得がある。

扇を取りに来た蔵人に自分から扇を投げ出した下仕えは、優美だが女らしくないと見る。

自分も同じように人前に出ろと言われたら、うろうろするだけだろう。宮仕えに出てここまで人前に立つとは思わなかった。

しかし人の心は変わるものだから、これからは慣れきって、人前に顔をさらすのも平気になってしまうだろう。

作者はそんな自分の行く末を思って、恐ろしくなる。宮仕えに慣れてゆくことへの不安と嫌悪が、率直に語られる一節である。

話は変わって、実成の五節の局が中宮の御前から見える。

かつて弘徽殿の女御に仕えていた左京の君が、今は五節の介添えとして来ていると、兼隆が話す。

左京の君の素性を知った女房たちは、黙ってはいられないと言いだす。

昔は奥ゆかしく宮中にいた人が、介添え役で出てくるとは、と女房たちは面白がる。

蓬莱山の扇をわざわざ選んだのは、長寿の象徴で年配であることをからかう意図だろう。

日陰の鬘、櫛、白粉などを贈り物に仕立てる。

年配の人だから櫛は大げさに反らせよ、と公達も悪ふざけに加わる。

薫物も無骨に切り、立て文に仕立てる。

添えた歌は、大勢の宮人の中でも目立っていたあなたを見た、と言う。「しるき(目立つ)」で、昔を知っているぞとほのめかしている。

語釈・文法注

おまへのこゝろみ
御前の試。五節の寅の日に、天皇が清涼殿で舞姫の舞をご覧になる儀。
御覽の日
童女御覧(わらわごらん)。五節の卯の日に、舞姫に付き添う童女を天皇がご覧になる儀。
日かげ
日陰の鬘(ひかげのかずら)。神事の際、冠に掛けて垂らす飾り。五節の舞姫や介添えも用いた。

文法

「すびつ」
炭櫃(すびつ)。いろりのように据えつけた火鉢。
「なとてかうてすぐしては居たる」
「なとて」は「などて」に同じ。どうしてこうして過ごしているのか。
「たばの守」
丹波守。底本は「たばの守」と書く。
「我等を彼がやうにていてゐよとあらば」
底本のまま。わたしたちをあの童女のようにして人前に出ていよと言われたら、の意。
「思ひかけきやは」
「やは」は反語。思いもかけただろうか、いや思いもしなかった。
「くろはう」
黒方(くろぼう)。薫物の一種。

和歌

おほかりしとよの宮人さしわきてしるき日かげをあはれとぞ見し

詠者
中宮方の女房たち(紫式部が詠んだとされる)
状況
五節の介添え役で出てきたかつての宮仕えの女房、左京の君に、日陰の鬘などとともに贈った歌。

修辞

掛詞
「日かげ」に「日陰の鬘」と「日の光」を掛ける。
皮肉
「しるき(目立つ)」と言って、昔の宮仕えを知っていることをほのめかす。

解説

五節の寅の日の御前の試から、卯の日の童女御覧までを描く。白昼に人前にさらされる童女たちに、作者は宮仕えで人目にさらされる自分の姿を重ねる。そして、人の心は慣れてゆくもので、いずれ自分も平気で顔をさらすようになるだろうと恐れる。この自己省察は、日記の中でも特に印象深い部分である。

後半の左京の君への贈り物は、女房たちのいたずらである。かつて宮中に仕えた女房が、介添え役として再び宮中に出てきたことをからかったもので、宮廷の女房社会の一面を伝える。作者はこのいたずらに加わりながらも、どこか距離をおいて書いている。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(紫式部日記) 板倉屋書房、明治36年(1903)、395–398頁(コマ209–211)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日