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紫式部日記 第10章

内裏への還啓と五節の始まり

十一月十七日夜、中宮は若宮とともに内裏へ還啓する。月明かりの下で車に乗る順にもめる女房たちを、作者は冷めた目で見る。局で小少将の君と身の憂さを語り、翌朝は道長から贈られた豪華な歌集の箱を拝見する。二十日には五節の舞姫が参入する。

  1. 1入い入いいらららせせせ給たま給たまたまふふうははは十七日じふしちにち十七日じふしちにちじゅうしちにちなりなりなり。。。戌いぬ戌いぬいぬののの時とき時ときときなどなどなどきゝきゝききつれつれつれどどど、、、やうやうやうやうようよう夜よ夜よよふけふけふけぬぬぬ。。。皆みな皆みなみな髪かみ髪かみかみあげあげあげつゝつゝつつ居ゐ居ゐいたるたるたる人ひと人ひとひと三さん三さんさん十じふ十じふじゅうよよよ人にん人にんにん、、、そのそのその外ほか外ほかほかにににももも見み見みみえええわかわかわかずずず。。。
  2. 2もやもやもやのののひんがしひんがしひんがしおもておもておもて東ひんがし東ひんがしひんがしののの廂ひさし廂ひさしひさしににに、、、うちうちうちののの女房にようばう女房にようばうにょうぼうももも十じふ十じふじゅうよよよ人にん人にんにん、、、南みなみ南みなみみなみののの廂ひさし廂ひさしひさしののの妻つま妻つまつま戶ど戶どど隔へだ隔へだへだてててゝゝて居ゐ居ゐいたりたりたり。。。
  3. 3御み御みみ輿こし輿こしこしにににははは宮みや宮みやみやののの宣せん宣せんせん旨じ旨じじ乘の乘ののるるる。。。絲いと絲いといと毛げ毛げげののの御み御みみ車くるま車くるまくるまににに殿との殿とのとののののうへうへうえ、、、少せう少せうしょう輔ふ輔ふふののの乳めの乳めのめの母と母とと、、、若わか若わかわか宮みや宮みやみやいだきいだきいだき奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりててて乘の乘ののるるる。。。
  4. 4大だい大だいだい納な納なな言ごん言ごんごん、、、宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょうののの君きみ君きみきみこがねこがねこがねづくりづくりづくりににに、、、次つぎ次つぎつぎののの車くるま車くるまくるまににに小こ小ここ少せう少せうしょう將しやう將しやうしょう、、、宮みや宮みやみやののの內ない內ないない侍し侍しし、、、
  5. 5次つぎ次つぎつぎにににうまうまうまののの中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうととと乘の乘ののりりりたるたるたるをををわろきわろきわろき人ひと人ひとひとととと乘の乘ののりりりたりたりたりととと思おも思おもおもひひいたりたりたりしししこそこそこそあなあなあなことごとしことごとしことごとしととと、、、いとゞいとゞいとどかゝるかゝるかかるありさまありさまありさまむつかしうむつかしうむつかしゅう思おも思おもおもひひい侍はべ侍はべはべりりりしかしかしか。。。
  6. 6とのもりとのもりとのもりののの侍じ侍じじ從じゆう從じゆうじゅうののの君きみ君きみきみ、、、辨べん辨べんべんののの內ない內ないない侍し侍しし、、、次つぎ次つぎつぎににに左さ左ささ衞ゑ衞ゑえ門もん門もんもんののの內ない內ないない侍し侍しし、、、殿との殿とのとのののの宣せん宣せんせん旨じ旨じじ、、、式しき式しきしき部ぶ部ぶぶとととまでまでまでははは次し次しし第だい第だいだいしりしりしりててて、、、つぎつぎつぎつぎつぎつぎははは例れい例れいれいののの心こころ心こころこころ々ごころ々ごころごころにににぞぞぞ乘の乘ののりりりけるけるける。。。
  7. 7月つき月つきつきののの隈くま隈くまくまなきなきなきにににいみじいみじいみじのののわざわざわざやややととと思おも思おもおもひひいつゝつゝつつ足あし足あしあしをををそらそらそらなりなりなり。。。うまうまうまののの中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうののの君きみ君きみきみををを先さき先さきさきにににたてたてたてたれたれたればばば、、、行ゆ行ゆゆくくくへへえももも知し知ししらららずずずたどたどしきたどたどしきたどたどしきさまさまさまこそこそこそ我わ我わわがががうしろうしろうしろををを見み見みみるるる人ひと人ひとひと耻はづ耻はづはずかしくかしくかしくももも思おも思おもおもひひいしらしらしらるれるれるれ。。。
  8. 8細ほそ細ほそほそ殿どの殿どのどのののの三さん三さんさんののの口くち口くちくちににに入い入いいりりりててて臥ふ臥ふふしししたれたれたればばば、、、小こ小ここ少せう少せうしょう將しやう將しやうしょうののの君きみ君きみきみもももおはしおはしおわしててて、、、猶なほ猶なほなおかゝるかゝるかかる有樣ありさま有樣ありさまありさまのののうきうきうきことことことをををかたらひかたらひかたらいつゝつゝつつ、、、
  9. 9すくみすくみすくみたるたるたる衣きぬ衣きぬきぬどもどもどもおしおしおしやりやりやりあつあつあつこえこえこえたるたるたる着き着きき重かさ重かさかさねねねててて火ひ火ひひ取とり取とりとりににに火ひ火ひひをををかきかきかき入い入いいれれれててて、、、身み身みみもももひえひえひえにににけるけるけるものものものゝゝのはしたなさはしたなさはしたなさをををいふいふいうににに、、、
  10. 10侍じ侍じじ從じゆう從じゆうじゅうののの宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょう、、、左ひだり左ひだりひだりののの宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょうののの中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょう、、、公きん公きんきん信のぶ信のぶのぶののの中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうなどなどなど、、、つぎつぎつぎつぎつぎつぎににによりよりよりきききつゝつゝつつ、、、とぶらふとぶらふとぶらうもももいといといとなかなかなかなかなかなかなりなりなり。。。
  11. 11今宵こよひ今宵こよひこよいはははなきなきなきものものものととと思おも思おもおもははわれれれてててやみやみやみなななばやばやばやととと思おも思おもおもふふうををを、、、人ひと人ひとひとににに問と問ととひひい聞き聞ききききき給たま給たまたまへへえるるるなるなるなるべしべしべし。。。
  12. 12「「「いといといとあしたあしたあしたにににまゐりまゐりまいり侍はべ侍はべはべらららむむん、、、今宵こよひ今宵こよひこよいははは堪た堪たたへへえがたくがたくがたく身み身みみもももすくみすくみすくみててて侍はべ侍はべはべるるる」」」などなどなどことなくことなくことなくいひいひいいつゝつゝつつ、、、こなたこなたこなたののの陣ぢん陣ぢんじんのののかたかたかたよりよりより出い出いいづづず。。。
  13. 13おのがじゝおのがじゝおのがじし家いへ家いへいえ路ぢ路ぢじととと急いそ急いそいそぐぐぐももも、、、なになになにばかりばかりばかりののの里さと里さとさと人びと人びとびとぞぞぞはははととと思おも思おもおもひひいおくらおくらおくらるるる。。。我わ我わわががが身み身みみににによせよせよせてててははは侍はべ侍はべはべらららずずず。。。
  14. 14大おほ大おほおおかたかたかたののの世よ世よよのののありさまありさまありさま、、、小こ小ここ少せう少せうしょう將しやう將しやうしょうののの君きみ君きみきみのののいといといとあてあてあてにににをかしげをかしげおかしげにてにてにて世よ世よよをををうしうしうしととと思おも思おもおもひひいしみしみしみててて居ゐ居ゐい給たま給たまたまへへえるるるををを見み見みみ侍はべ侍はべはべるるるなりなりなり。。。
  15. 15父ちち父ちちちち君ぎみ君ぎみぎみよりよりより事こと事ことこと始はじ始はじはじまりまりまりててて、、、人ひと人ひとひとのののほどほどほどよりよりよりはははさいはひさいはひさいわいのののこよなくこよなくこよなく後おく後おくおくれれれ給たま給たまたまへへえるるるなななんんんめりめりめりかしかしかし。。。
  16. 16よべよべよべののの御おほん御おほんおおん贈おくり贈おくりおくり物もの物ものもの今朝けさ今朝けさけさぞぞぞこまかこまかこまかににに御ご御ごご覽らん覽らんらんずるずるずる。。。御み御みみぐしぐしぐしのののはこはこはこのののうちうちうちののの具ぐ具ぐぐどもどもどもいひいひいいつくしつくしつくし見み見みみやらやらやらむむん方かた方かたかたもももなしなしなし。。。
  17. 17手て手てて箱ばこ箱ばこばこひとひとひとよろひよろひよろい片かた片かたかたつかたつかたつかたにににははは白しろ白しろしろききき色しき色しきしき紙し紙しし、、、作つく作つくつくりりりたるたるたる御おほん御おほんおおん草さう草さうそう紙し紙ししどもどもども、、、古こ古ここ今きん今きんきん、、、後ご後ごご撰せん撰せんせん集しふ集しふしゅう、、、拾しふ拾しふしゅう遺ゐ遺ゐい抄せう抄せうしょう、、、
  18. 18そのそのその部ぶ部ぶぶどもどもどもははは五ご五ごご帖でふ帖でふじょうにににつくりつくりつくりつゝつゝつつ、、、侍じ侍じじ從じゆう從じゆうじゅうののの中ちゆう中ちゆうちゅう納な納なな言ごん言ごんごんととと延えん延えんえん幹かん幹かんかんととと、、、おのおのおのおのおのおの草さう草さうそう紙し紙しし一ひと一ひとひとつつつににに四し四しし卷くわん卷くわんかんをををあてあてあてつゝつゝつつ、、、かゝかゝかかせせせ給たま給たまたまへへえりりり。。。
  19. 19表へう表へうひょう紙し紙ししははは、、、ららら、、、紐ひも紐ひもひもおなじおなじおなじからからからのののくみくみくみ、、、かけこかけこかけごのののうへうへうえににに入い入いいれれれたりたりたり。。。
  20. 20したしたしたにににははは能よし能よしよし宣のぶ宣のぶのぶ、、、元もと元もともと輔すけ輔すけすけやうやうようのののいにしへいにしへいにしえいまいまいまののの歌うた歌うたうたよみよみよみどもどもどもののの家いへ家いへいえ々いへ々いへいえののの集しふ集しふしゅう書か書かかきききたりたりたり。。。
  21. 21延えん延えんえん幹かん幹かんかんととと近ちか近ちかちか澄ずみ澄ずみずみののの君きみ君きみきみとととかきかきかきたるたるたるははは、、、さるさるさるものものものにてにてにて、、、これこれこれはははたゞたゞただけぢかうけぢかうけぢこうもてもてもてつかはつかはつかわせせせ給たま給たまたまふふうべきべきべき、、、見み見みみ知し知ししらららぬぬぬものものものともともともにににしなさしなさしなさせせせ給たま給たまたまへへえるるる。。。今いま今いまいまめかしうめかしうめかしゅうさまさまさまことことことなりなりなり。。。
  22. 22五ご五ごごははは廿日はつか廿日はつかはつかにににまゐるまゐるまいる。。。侍じ侍じじ從じゆう從じゆうじゅうののの宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょうににに舞まひ舞まひまい姫びめ姫びめびめのののさうさうそう束ぞく束ぞくぞくなどなどなどつかはすつかはすつかわす。。。
  23. 23右みぎ右みぎみぎののの宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょうののの中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうののの五ご五ごご節せち節せちせちにににかづらかづらかずら申まう申まうもうささされれれたるたるたるつかはすつかはすつかわすついでついでついでににに、、、箱はこ箱はこはこ一ひと一ひとひとよろひよろひよろいにににたきたきたきものものもの入い入いいれれれててて心こころ心こころこころ葉ば葉ばば、、、梅むめ梅むめうめののの枝えだ枝えだえだをををしししててていどみいどみいどみ聞きこ聞きこきこえええたりたりたり。。。
  24. 24俄にはか俄にはかにわかににに營いとな營いとないとなむむむ常つね常つねつねののの年とし年としとしよりよりよりもももいといといと見み見みみましましましたるたるたるきこえきこえきこえあれあれあればばば、、、ひんがしひんがしひんがしのののおおおまへまへまえのののむかひむかひむかいなるなるなるたてたてたて部じとみ部じとみじとみにににひまひまひまもももなくなくなくうちうちうちわたしわたしわたしつゝつゝつつ、、、ともしともしともしたるたるたる火ひ火ひひののの光ひかり光ひかりひかり晝ひる晝ひるひるよりよりよりもももはしたなげはしたなげはしたなげなるなるなるににに、、、
  25. 25歩あゆ歩あゆあゆみみみ入い入いいるるるさまさまさまどもどもどもあさましうあさましうあさましゅうつれなつれなつれなのののわざわざわざやややとととのみのみのみ思おも思おもおもへへえどどど、、、人ひと人ひとひとのののうへうへうえとととのみのみのみおぼえおぼえおぼえずずず。。。たゞたゞただかうかうこう殿てん殿てんてん上じやう上じやうじょう人びと人びとびとのののひたひたひたおもておもておもてにににさしさしさしむかひむかひむかい、、、しそくしそくしそくさゝさゝささぬぬぬばかりばかりばかりぞぞぞかしかしかし。。。
  26. 26へいまんへいまんへいまんひきひきひきおひおひおいやるやるやるとととすれすれすれどどど、、、大おほ大おほおおかたかたかたのののけしきけしきけしきははは同おな同おなおなじじじことことことぞぞぞ見み見みみるるるらむらむらんととと思おも思おもおもひひいいづるいづるいずるももも、、、まづまづまず胸むね胸むねむねふたがるふたがるふたがる。。。
  27. 27業なり業なりなり遠とほ遠とほとおののの朝あ朝ああ臣そん臣そんそんのののかしづきかしづきかしずき錦にしき錦にしきにしきののの唐から唐からから衣ぎぬ衣ぎぬぎぬ、、、暗やみ暗やみやみののの夜よ夜よよにににもももものものものににに紛まぎ紛まぎまぎれれれずずずめづらしうめづらしうめずらしゅう見み見みみゆゆゆ。。。きぬきぬきぬかちかちかちにににみじろきみじろきみじろきもももせせせでででたをやかたをやかたおやかならならならずずずぞぞぞ見み見みみゆるゆるゆる。。。殿てん殿てんてん上じやう上じやうじょう人びと人びとびとこゝろこゝろこころことことことにににもてもてもてかしづくかしづくかしずく。。。
  28. 28こなたこなたこなたにににうへうへうえももも渡わた渡わたわたらららせせせ給たま給たまたまひひいててて御ご御ごご覽らん覽らんらんずずず。。。殿との殿とのとのももも忍しの忍しのしのびびびててて遣やり遣やりやり戶ど戶どどよりよりよりとととにににおはしませおはしませおわしませばばば、、、心こころ心こころこころにににまかせまかせまかせたらたらたらずずずうるさしうるさしうるさし。。。
  29. 29ながきよながきよながきよのののははは、、、たけたけたけどもどもどもひとしくひとしくひとしく整ととの整ととのととのひひい、、、いといといとみやびかみやびかみやびかににに心こころ心こころこころにくきにくきにくきけはひけはひけわい、、、人ひと人ひとひとににに劣おと劣おとおとらららずずずととと定さだ定さださだめめめらるらるらる。。。右みぎ右みぎみぎののの宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょうののの中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうのののあるあるあるべきべきべきかぎりかぎりかぎりははは見み見みみなしなしなしたりたりたり。。。
  30. 30ひすましひすましひすましのののふとりふとりふとりとゝのひとゝのひととのいたるたるたるさまさまさまぞぞぞさとびさとびさとびたりたりたりととと人ひと人ひとひとほゝゑむほゝゑむほほえむなりなりなりししし。。。はてはてはてににに藤とう藤とうとう宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょうののの思おも思おもおもひひいなしなしなしににに、、、いまめかしくいまめかしくいまめかしく心こころ心こころこころことことことなりなりなり。。。かしづきかしづきかしずき十じふ十じふじゅう人にん人にんにんありありあり。。。
  31. 31またまたまた廂ひさし廂ひさしひさしのののみすみすみすおろしおろしおろしててて、、、こぼれこぼれこぼれ出い出いいでででたるたるたるきぬきぬきぬのののつまつまつまどもどもどもしたりしたりしたりがほがほがおににに思おも思おもおもへへえるるるさまさまさまどもどもどもよりよりよりははは、、、見み見みみ所どころ所どころどころまさりまさりまさりてててほかげほかげほかげににに見み見みみえええわたさわたさわたさるるる。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

中宮さまが内裏にお入りになるのは十七日である。戌の刻(午後八時ごろ)などと聞いていたが、しだいに夜も更けてしまった。みな髪を上げて控えている女房は三十人余り、そのほかの人は(暗くて)見分けもつかない。

母屋の東面と東の廂には、帝付きの女房も十人余り、南の廂の妻戸を隔てて控えている。

御輿には宮の宣旨が乗る。糸毛の御車には殿の北の方と少輔の乳母が、若宮をお抱き申し上げて乗る。

大納言の君と宰相の君は黄金作りの車に、次の車に小少将の君と宮の内侍、

次に(わたしが)馬の中将と乗ったのを、(馬の中将が)劣った人と乗ったと思っていたのは、なんと大げさなと思われて、いっそうこうした宮仕えのありさまがわずらわしく思われました。

主殿の侍従の君と弁の内侍、次に左衛門の内侍と殿の宣旨の式部まではきちんと順序が決まっていて、そのあとの人々はいつものように思い思いに乗った。

月が隈なく照らすので、ひどいことだと思いながら、足も地につかないありさまである。馬の中将の君を先に立てたので、(彼女が)行く先もわからずおぼつかないようすであるのを見るにつけ、わたしの後ろ姿を見る人がいると思うと、恥ずかしくも思い知られる。

細殿の三の口の局に入って横になっていると、小少将の君もいらっしゃって、やはりこうした宮仕えのつらさを語り合いながら、

こわばった衣を押しやって厚い綿入れを重ね着し、火取に火をかき入れて、体まで冷えてしまったみっともなさを話していると、

侍従の宰相(実成)、左の宰相の中将(経房)、公信の中将などが次々に立ち寄って、見舞ってくださるのも、かえってわずらわしい。

今夜はいないものと思われて済ませたいと思っていたのに、人に尋ねてお聞きになったのだろう。

「明朝早く参上しましょう。今夜は寒さに堪えがたく、体もこわばっております」などと無難に言いながら、こちらの陣の方から出てゆく。

めいめい家路を急ぐのも、どれほどの妻が里で待っているというのかと思って見送られる。わが身に引きつけて言うのではありません。

世間一般のありさまや、小少将の君がたいそう上品で美しいのに、世の中をつらいものと思いこんでいらっしゃるのを見てのことです。

父君(源時通の出家)から始まって、人柄のわりには幸せにひどく恵まれない方のようです。

昨夜の(道長からの)御贈り物を、今朝(中宮さまが)くわしくご覧になる。御櫛箱の中の道具類は、言葉では言いつくせず、見ても見きれないほど見事である。

手箱一対の片方には、白い色紙で作った御冊子が入っていて、『古今集』『後撰集』『拾遺抄』で、

それぞれの部立を五帖に仕立てて、侍従の中納言(行成)と延幹とに、それぞれ冊子一つに四巻ずつ割り当てて書かせていらっしゃる。

表紙は羅で、紐も同じ唐の組紐で、掛子の上に入れてある。

下の段には、能宣・元輔のような昔や今の歌人たちの家集が書いてある。

延幹と近澄の君が書いたものはもちろん立派だが、これはただ身近にお使いになるためのもので、見知らぬ人たち(の筆)に書かせなさったものである。当世風で格別のものである。

五節の舞姫は二十日に参入する。(中宮さまは)侍従の宰相(実成)に舞姫の装束などをお贈りになる。

右の宰相の中将(兼隆)が五節のために鬘飾りをご所望になったので、それを贈るついでに、箱一対に薫物を入れ、心葉には梅の枝をつけて、(ほかの舞姫と)張り合うように差し上げた。

急に準備したのに例年よりたいそう見事だという評判なので、東の御前の向かいの立蔀にすきまもなく灯をともし渡して、その光が昼よりもきまり悪いほど明るいところに、

(舞姫たちが)歩み入るようすは、なんと平然としていることかと思うばかりだが、人ごととばかりは思われない。ただ、このように殿上人と真正面に向かい合って、紙燭をかざされないというだけのことなのだ。

屏幔を引きめぐらして(人目を)避けようとはしても、だいたいのようすは(舞姫と)同じように見られているだろうと思い出すにつけても、まず胸がふさがる。

業遠の朝臣の介添えの女房は、錦の唐衣が暗い夜でも目立ってめずらしく見える。衣を重ね着して身動きもせず、しなやかではないように見える。殿上人たちは格別に大事に世話をしている。

こちらに帝もお渡りになってご覧になる。殿も忍んで遣戸からおいでになっているので、気ままにふるまえず窮屈である。

中清の舞姫の介添えたちは、背丈がみなそろっていて、たいそう優雅で奥ゆかしい雰囲気で、ほかに劣らないと評判である。右の宰相の中将(兼隆)の舞姫は、できるかぎりのことをしていた。

樋洗し(の童女)の太って整ったようすが田舎びていると、人々が笑っていた。最後に藤宰相(実成)の舞姫は、思いなしか当世風で格別である。介添えは十人いる。

また廂の御簾を下ろして、そこからこぼれ出た衣の褄を得意げに思っている人々のようすよりは、(こちらのほうが)見ごたえがまさって、灯影に見わたされる。

意訳

十一月十七日夜、中宮は内裏に還啓する。予定の時刻を過ぎて夜も更けた。

帝付きの女房たちも迎えに来ている。

中宮は御輿に、若宮は倫子に抱かれて糸毛の車に乗る。

女房たちの乗る車の順。

作者と同乗した馬の中将は、作者と乗ったのを不満に思っていた。作者は大げさなと感じ、宮仕えのわずらわしさを思う。女房どうしの序列争いが垣間見える。

身分の高い女房までは順序が決まっていたが、あとは思い思いに乗った。

月の明るい中、人目にさらされて歩くのはつらい。前を行く馬の中将のおぼつかない姿を見て、自分の後ろ姿も人に見られているのだと恥ずかしく思う。

内裏の局で、小少将の君と宮仕えのつらさを語り合う。

冷えきった体を厚着と火で温めながら、ため息をつく。

公卿たちが見舞いに来るが、今の作者にはかえってわずらわしい。

今夜は誰とも会いたくなかったのに。

作者は寒さを理由に体よく断り、公卿たちは帰ってゆく。

家路を急ぐ公卿たちを見て、どれほどの人が待っているのかと思う。作者は自分のことではないとことわる。

むしろ、美しく上品な小少将の君が世をつらいと思っているのを見て、そう思うのだという。

小少将の君は父の出家に始まり、幸せに恵まれない人だった。作者の同情がこもる。

翌朝、道長から中宮への贈り物を拝見する。

贈り物の中には、勅撰和歌集を書写した冊子があった。

能書の藤原行成と延幹に書かせた豪華な歌集である。

表紙や紐の素材まで記録する。

下の段には歌人たちの家集が入っていた。

身近に使う用の冊子は、あまり名の知られていない人に書かせていたという。

五節の舞姫が参入する。中宮は舞姫を出す実成に装束を贈る。

兼隆の舞姫にも薫物を贈る。

五節の舞姫は、明々と灯をともした中を歩み入る。

作者は、人前にさらされる舞姫を人ごととは思えない。女房である自分も、殿上人に顔を見られる点では同じだと気づく。

幕で隠れたつもりでも、人からは同じように見られているのだと思うと胸がふさがる。舞姫に、宮仕えをする自分の姿を重ねている。

各舞姫の介添えの女房たちの装いを品評する。

帝や道長もそっと見物に来ていて、作者たちは気ままにふるまえない。

中清の舞姫の介添えは優雅だと評判だった。

樋洗し童女の太り具合が田舎びていると笑われる。実成の舞姫は当世風だった。

御簾から衣の褄を出して得意げな人々より、こちらのほうが見ごたえがあったと結ぶ。

語釈・文法注

五節
十一月の新嘗祭・大嘗祭に行われる五節の舞。公卿・受領から選ばれた舞姫が、丑の日の帳台の試、寅の日の御前の試、卯の日の童女御覧、辰の日の豊明節会と、四日間にわたって舞を披露した。

文法

「わろき人と乘りたりと思ひたりしこそ」
同乗した馬の中将が、作者を劣った人と見て不満に思った、と解した。
「あつこえたる」
底本のまま。「厚肥えたる」で、綿の厚く入った衣と解した。
「なにばかりの里人ぞは」
家路を急ぐ公卿たちに、どれほどの妻が里で待っているのか、と皮肉をまじえて思う。
「表紙は、ら」
「ら」は羅(うすもの)。底本は「、」で区切る。
「へいまん」
屏幔(へいまん)。幕を張りめぐらして人目を隠すもの。
「ながきよのは」
底本のまま。舞姫を出した尾張守藤原中清の名と解した。

解説

寛弘五年十一月十七日、中宮彰子は敦成親王とともに内裏に還啓した。華やかな行列の陰で、作者は同乗者に見下され、月明かりの中で人目にさらされるつらさを味わう。局で小少将の君と身の憂さを語り合う場面には、晴れの行事のあとの虚しさがにじむ。

道長が中宮に贈った歌集の箱は、藤原行成ら当代の能書に書かせた豪華なもので、道長家の文化的な権威を示している。作者はその仕様を細かく書き残している。

五節の舞姫を見て、人前にさらされる舞姫を他人ごととは思えないと書く一節は、宮仕えの女房として人目にさらされる作者自身の痛みを伝える。この思いは、次の章でさらに深められる。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(紫式部日記) 板倉屋書房、明治36年(1903)、393–395頁(コマ208–209)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日