古典ライブラリー

紫式部日記 第6章

行幸の日

十月十六日、一条天皇が土御門殿に行幸する。龍頭鷁首の船楽が鳴り響くなか御輿が着き、内侍たちが剣璽を捧げて天女のように進み出る。作者は女房たちの装いをつぶさに描き、道長が若宮を抱いて帝に初めて対面させる場面を記す。

  1. 1そのそのその日ひ日ひひ新あたら新あたらあたらしくしくしく造つく造つくつくららられれれたるたるたる船ふね船ふねふねどもどもどもさしさしさし寄よ寄よよせせせさせさせさせててて御ご御ごご覽らん覽らんらんずずず。。。龍りよう龍りようりょう頭とう頭とうとう鷁げき鷁げきげきののの生い生いいけけけるるるかたちかたちかたち思おも思おもおもひひいやらやらやられれれてててあざやかあざやかあざやかにににうるはしうるはしうるわし。。。
  2. 2行ぎやう行ぎやうぎょう幸かう幸かうこうははは辰たつ辰たつたつののの時とき時ときときととと、、、まだまだまだ曉あかつき曉あかつきあかつきよりよりより人ひと人ひとひと々びと々びとびとけさうじけさうじけそうじ心こころ心こころこころづかひづかひずかいすすす。。。上達部かんだちめ上達部かんだちめかんだちめののの御おほん御おほんおおん座ざ座ざざははは西にし西にしにしののの對たい對たいたいなれなれなればばば、、、こなたこなたこなたははは例れい例れいれいのののやうやうようににに騷さわ騷さわさわがしうがしうがしゅうもももあらあらあらずずず。。。
  3. 3內ない內ないない侍し侍ししのののかんかんかんのののののの御おほん御おほんおおんかたかたかたににに、、、中なか中なかなか々なか々なかなか人ひと人ひとひと々びと々びとびとのののさうぞくさうぞくそうぞくなどなどなどもももいみじういみじういみじゅうとゝのへとゝのへととのえ給たま給たまたまふふうととときこゆきこゆきこゆ。。。
  4. 4曉あかつき曉あかつきあかつきににに少せう少せうしょう將しやう將しやうしょうののの君きみ君きみきみまゐりまゐりまいり給たま給たまたまへへえりりり。。。もろともにもろともにもろともに頭かしら頭かしらかしらけづりけづりけずりなどなどなどすすす。。。
  5. 5例れい例れいれいのののさささいふいふいうともともとも日ひ日ひひたけたけたけなななむむんととと、、、たゆきたゆきたゆき心こころ心こころこころどもどもどもはははたゆたひたゆたひたゆたいててて、、、扇あふぎ扇あふぎおうぎのののいといといとなほなほしきなほなほしきなおなおしきをををまだまだまだ人ひと人ひとひとにににいひいひいいたるたるたる、、、もてもてもてこここなななむむんととと待ま待ままちちち居ゐ居ゐいたるたるたるににに、、、つゞみつゞみつづみののの音おと音おとおとををを聞き聞きききききつけつけつけててて、、、急いそ急いそいそぎぎぎまゐるまゐるまいるさまさまさまあしきあしきあしき。。。
  6. 6御み御みみ輿こし輿こしこしむかへむかへむかえ奉たてまつ奉たてまつたてまつるるるふなふなふないといといとおもしろしおもしろしおもしろし。。。寄よ寄よよするするするををを見み見みみれれればばば、、、駕か駕かか輿よ輿よよ丁ちやう丁ちやうちょうのののさるさるさる身み身みみのののほどほどほどながらながらながら、、、はしはしはしよりよりよりのぼりのぼりのぼりててていといといと苦くる苦くるくるしげしげしげにににうつぶしうつぶしうつぶし臥ふ臥ふふせせせりりり。。。
  7. 7なになになにのののことことことことことことなるなるなる高たか高たかたかきききまじらひまじらひまじらいももも身み身みみのののほどほどほどかぎりかぎりかぎりあるあるあるににに、、、いといといと安やす安やすやすげげげなしなしなしかしかしかしととと見み見みみるるる。。。
  8. 8御み御みみ帳ちやう帳ちやうちょうののの西にし西にしにしおもておもておもてにににおましおましおましをををしつらひしつらひしつらいててて、、、南みなみ南みなみみなみののの廂ひさし廂ひさしひさしのののひんがしひんがしひんがしのののまままににに御み御みみいしいしいしをををたてたてたてたるたるたる、、、それそれそれよりよりより一ひと一ひとひとままま隔へだ隔へだへだてててゝゝて、、、ひんがしひんがしひんがしにににあれあれあれたるたるたるきはきはきわににに、、、北きた北きたきた南みなみ南みなみみなみのののつまつまつまにににみすみすみすをををかけかけかけへだてへだてへだてゝゝて、、、
  9. 9女房にようばう女房にようばうにょうぼうののの居ゐ居ゐいたるたるたる南みなみ南みなみみなみののの柱はしら柱はしらはしらもともともとよりよりよりすだれすだれすだれををを少すこ少すこすこしししひきひきひきあげあげあげててて、、、內ない內ないない侍し侍しし二ふた二ふたふた人り人りりいづいづいず。。。そのそのその日ひ日ひひのののかみかみかみあげあげあげうるはしきうるはしきうるわしきすがたすがたすがた、、、からからから繪ゑ繪ゑえををををかしげをかしげおかしげににに書か書かかきききたるたるたるやうやうようなりなりなり。。。
  10. 10左さ左ささ衞ゑ衞ゑえ門もん門もんもんののの內ない內ないない侍し侍しし、、、みはかしみはかしみはかしとるとるとる。。。靑あを靑あをあお色いろ色いろいろののの無む無むむ紋もん紋もんもんのののからからからぎぬぎぬぎぬ、、、すそごすそごすそごののの裳も裳もも、、、領ひ領ひひ巾れ巾れれくんくんくん帶たい帶たいたいははは浮ふ浮ふふ線せん線せんせん綾れう綾れうりょうをををはじたんはじたんはじたんににに染そ染そそめめめたりたりたり。。。
  11. 11うはぎうはぎうわぎははは菊きく菊きくきくののの五いつ五いついつ重へ重へえ、、、かいねりかいねりかいねりははは紅くれなゐ紅くれなゐくれない、、、姿すがた姿すがたすがたつきつきつきもてなしもてなしもてなし、、、いさゝかいさゝかいささかはづれはづれはずれててて見み見みみゆるゆるゆるかたはらかたはらかたわらめめめ、、、はなやかはなやかはなやかにににきよげきよげきよげなりなりなり。。。
  12. 12辨べん辨べんべんののの內ない內ないない侍し侍ししはははしるししるししるしののの御み御みみ、、、紅くれなゐ紅くれなゐくれないにににえびぞめえびぞめえびぞめののの織おり織おりおり物もの物ものものののの袿うちき袿うちきうちき、、、裳も裳もも、、、からからからぎぬぎぬぎぬはははさきさきさきのののにににおなじおなじおなじごとごとごと。。。いといといとさゝやかさゝやかささやかにににをかしげをかしげおかしげなるなるなる人ひと人ひとひとののの、、、つゝましげつゝましげつつましげににに少すこ少すこすこしししつゝみつゝみつつみたるたるたるぞぞぞ心こころ心こころこころ苦ぐる苦ぐるぐるしうしうしゅう見み見みみえええけるけるける。。。
  13. 13扇あふぎ扇あふぎおうぎよりよりより始はじ始はじはじめめめててて好この好このこのみみみましましましたりたりたりととと見み見みみゆゆゆ。。。領ひ領ひひ巾れ巾れれはははあふちあふちおうちだんだんだん。。。
  14. 14夢ゆめ夢ゆめゆめのののやうやうようにににもももこよひこよひこよいのののたつたつたつ程ほど程ほどほどよそほひよそほひよそおい、、、むかしむかしむかし天あま天あまあま降くだ降くだくだりりりけむけむけんをとめをとめおとめ子ご子ごごのののすがたすがたすがたもももかくかくかくやややありありありけむけむけんとととまでまでまでおぼゆおぼゆおぼゆ。。。
  15. 15近この近このこの衞ゑ衞ゑえ司づかさ司づかさづかさいといといとつきづきしきつきづきしきつきづきしきすがたすがたすがたしししててて、、、御み御みみ輿こし輿こしこしのののことことことゞゞどもももおこなふおこなふおこなう。。。いといといときらきらしきらきらしきらきらし。。。頭とう頭とうとうののの中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょう御み御みみはかしはかしはかしなどなどなどとりとりとりててて內ない內ないない侍し侍ししにににつたふつたふつたう。。。
  16. 16みすみすみすののの中うち中うちうちををを見み見みみわたせわたせわたせばばば、、、色いろ色いろいろゆるさゆるさゆるされれれたるたるたる人ひと人ひとひと々びと々びとびとははは、、、例れい例れいれいののの靑あを靑あをあお色いろ色いろいろ、、、赤あか赤あかあか色いろ色いろいろのののからからからぎぬぎぬぎぬ地ぢ地ぢじ摺ずり摺ずりずりののの裳も裳もも、、、うはぎうはぎうわぎはははおしおしおしわたしわたしわたしててて蘇す蘇すす枋はう枋はうおうののの織おり織おりおり物もの物ものものなりなりなり。。。たゞたゞただ右う右うう馬ま馬ままののの中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうぞぞぞえびえびえび染ぞめ染ぞめぞめををを着き着ききててて侍はべ侍はべはべりりりししし。。。
  17. 17うちうちうちものものものどもどもどもははは濃こ濃ここききき薄うす薄うすうすききき紅もみ紅もみもみ葉ぢ葉ぢじをををこきこきこきまぜまぜまぜたるたるたるやうやうようにてにてにて、、、中なか中なかなかなるなるなるきぬきぬきぬどもどもども、、、例れい例れいれいのののくちなしくちなしくちなしののの濃こ濃ここききき薄うす薄うすうすききき、、、紫し紫しし苑をん苑をんおん色いろ色いろいろ、、、裏うら裏うらうらあをきあをきあおき菊きく菊きくきくををを、、、もしはもしはもしは三み三みみへへえなどなどなどこゝろごゝろこゝろごゝろこころごころなりなりなり。。。
  18. 18綾あや綾あやあやゆるさゆるさゆるされれれぬぬぬははは、、、例れい例れいれいのののおとなおとなしきおとなおとなしきおとなおとなしきははは無む無むむ紋もん紋もんもんののの靑あを靑あをあお色いろ色いろいろ、、、もしはもしはもしは蘇す蘇すす枋はう枋はうおうなどなどなど皆みな皆みなみな五いつ五いついつへへえにてにてにて、、、かさねかさねかさねどもどもどもははは皆みな皆みなみな綾あや綾あやあやなりなりなり。。。
  19. 19大おほ大おほおお海うみ海うみうみののの摺すり摺すりすり裳も裳ももののの水みづ水みづみずののの色いろ色いろいろはなやかはなやかはなやかににに淺あさ淺あさあさ々あさ々あさあさとととしししててて、、、腰こし腰こしこしどもどもどもはははかたもんかたもんかたもんをををぞぞぞおほくおほくおおくはははしししたるたるたる。。。袿うちき袿うちきうちきははは菊きく菊きくきくののの三み三みみへへえ五いつ五いついつへへえにてにてにて、、、おりものおりものおりものはははせせせずずず。。。
  20. 20わかきわかきわかき人ひと人ひとひとははは、、、菊きく菊きくきくののの五いつ五いついつへへえのののからからからぎぬぎぬぎぬををを心こころ心こころこころ々ごころ々ごころごころにににしししたりたりたり。。。うへうへうえははは白しろ白しろしろくくく、、、靑あを靑あをあおきききがががうへうへうえをををばばば蘇す蘇すす枋はう枋はうおう、、、一ひと一ひとひとへへえははは靑あを靑あをあおきききもももありありあり。。。うへうへうえ薄うす薄うすうす蘇す蘇すす枋はう枋はうおう、、、つぎつぎつぎつぎつぎつぎ濃こ濃ここききき蘇す蘇すす枋はう枋はうおう、、、中なか中なかなかににに白しろ白しろしろきききまぜまぜまぜたるたるたるももも、、、すべてすべてすべてしししざまざまざまをかしきをかしきおかしきのみのみのみぞぞぞかどかどしくかどかどしくかどかどしく見み見みみゆるゆるゆる。。。
  21. 21いひいひいいしらしらしらずずずめづらしくめづらしくめずらしく、、、おどろおどろしきおどろおどろしきおどろおどろしき扇あふぎ扇あふぎおうぎどもどもども見み見みみゆゆゆ。。。うちとけうちとけうちとけたるたるたる折をり折をりおりこそこそこそまほまほまほならならならぬぬぬかたちかたちかたちもももうちうちうち交まじ交まじまじりりりててて見み見みみえええわかわかわかれれれけれけれけれ。。。
  22. 22心こころ心こころこころををを盡つく盡つくつくしししてててつくろひつくろひつくろいけさうじけさうじけそうじ、、、劣おと劣おとおとらららじじじとととしししたてたてたてたるたるたる、、、女をんな女をんなおんな繪ゑ繪ゑえのののをかしきをかしきおかしきにににいといといとようようよう似に似ににててて、、、年とし年としとしののの程ほど程ほどほどのののおとなびおとなびおとなび、、、いといといとわかきわかきわかきけちめけちめけちめ、、、髪かみ髪かみかみののの少すこ少すこすこしししおとろへおとろへおとろえたるたるたるけしきけしきけしき、、、またまたまた盛さかり盛さかりさかりのののこちたきこちたきこちたきががが、、、我わ我わわががが前まへ前まへまえばかりばかりばかり見み見みみわたさわたさわたさるるる。。。
  23. 23さてさてさてははは扇あふぎ扇あふぎおうぎよりよりよりかみかみかみののの額ひたひ額ひたひひたいつきつきつきぞぞぞあやしくあやしくあやしく、、、人ひと人ひとひとのののかたちかたちかたちををを品しな品しなしな々じな々じなじなしくしくしくもももくだりくだりくだりてててもてなすもてなすもてなす所ところ所ところところなななんんんめるめるめる。。。かゝるかゝるかかる中なか中なかなかににに、、、すぐれすぐれすぐれたるたるたるととと見み見みみゆるゆるゆるこそこそこそかぎりかぎりかぎりなきなきなきならならならめめめ。。。
  24. 24かねてかねてかねてよりよりよりうへうへうえののの女房にようばう女房にようばうにょうぼう宮みや宮みやみやにににかけかけかけててて侍さぶら侍さぶらさぶらふふう五ご五ごご人にん人にんにんははは、、、參まゐ參まゐまいりりりつどひつどひつどいてててさぶらふさぶらふさぶらう。。。內ない內ないない侍し侍しし二ふた二ふたふた人り人りり、、、命みやう命みやうみょう婦ぶ婦ぶぶ二ふた二ふたふた人り人りり、、、御おほん御おほんおおんまかなひまかなひまかないののの人ひと人ひとひと一ひと一ひとひと人り人りり。。。
  25. 25おものおものおものまゐるまゐるまいるとてとてとて、、、筑ちく筑ちくちく前ぜん前ぜんぜん左さ左ささ京きやう京きやうきょうのののおもとおもとおもとののの髪かみ髪かみかみあげあげあげててて內ない內ないない侍し侍ししのののいでいでいでいるいるいるすみすみすみののの柱はしら柱はしらはしらもともともとよりよりよりいづいづいず。。。これこれこれはははよろしきよろしきよろしき天てん天てんてん女によ女によにょなりなりなり。。。
  26. 26左さ左ささ京きやう京きやうきょうははは靑あを靑あをあお色いろ色いろいろににに柳やなぎ柳やなぎやなぎののの無む無むむ紋もん紋もんもんののの唐から唐からから衣ぎぬ衣ぎぬぎぬ、、、筑ちく筑ちくちく前ぜん前ぜんぜんははは菊きく菊きくきくののの五いつ五いついつ重へ重へえののの唐から唐からから衣ぎぬ衣ぎぬぎぬ、、、裳も裳ももははは例れい例れいれいののの摺すり摺すりすり裳も裳ももなりなりなり。。。
  27. 27御おほん御おほんおおんまかなひまかなひまかない橘たちばな橘たちばなたちばな三さん三さんさん位み位みみ靑あを靑あをあお色いろ色いろいろのののからからからぎぬぎぬぎぬからからからあやあやあやののの黄き黄ききなるなるなる菊きく菊きくきくののの袿うちき袿うちきうちきぞぞぞ上うは上うはうわ着ぎ着ぎぎなななんんんめるめるめる。。。一ひと一ひとひともともともとあげあげあげたりたりたり。。。柱はしら柱はしらはしらがくれがくれがくれにてにてにてまほまほまほにににももも見み見みみえええずずず。。。
  28. 28殿との殿とのとの、、、若わか若わかわか宮みや宮みやみやいだきいだきいだき奉たてまつ奉たてまつたてまつりりり給たま給たまたまひひいててて、、、おおおまへまへまえにににいでいでいで奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりたまふたまふたまう。。。うへうへうえ抱いだ抱いだいだきききうつしうつしうつし奉たてまつ奉たてまつたてまつらららせせせ給たま給たまたまふふう程ほど程ほどほど、、、いさゝかいさゝかいささかなかなかなかせせせ給たま給たまたまふふう御おほん御おほんおおん聲こゑ聲こゑこえいといといとわかしわかしわかし。。。
  29. 29辨べん辨べんべんののの宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょうののの君きみ君きみきみ御み御みみはかしはかしはかしりとてりとてりとて參まゐ參まゐまいりりり給たま給たまたまへへえりりり。。。母も母もも屋や屋ややののの中なか中なかなかとととよりよりより西にし西にしにしににに、、、殿との殿とのとののののうへうへうえおはするおはするおわするかたかたかたにににぞぞぞ若わか若わかわか宮みや宮みやみやはははおはしまさおはしまさおわしまさせせせ給たま給たまたまふふう。。。
  30. 30うへうへうえ、、、とととにににいでいでいでさせさせさせ給たま給たまたまひひいてててぞぞぞ、、、宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょうののの君きみ君きみきみはははこなたこなたこなたににに歸かへ歸かへかえりりりててて、、、いといといとけそうけそうけそうににに、、、はしたなきはしたなきはしたなき心ここ心ここここちちちしししつるつるつるととと、、、けにけにけに面おもて面おもておもてうちうちうち赤あか赤あかあかみみみててて居ゐ居ゐいたまへたまへたまえるるる顏かほ顏かほかおこまかこまかこまかにににをかしげをかしげおかしげなりなりなり。。。衣きぬ衣きぬきぬののの色いろ色いろいろももも、、、人ひと人ひとひとよりよりよりけにけにけにきはやしきはやしきわやしたまへたまへたまえりりり。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

その日(行幸の当日)、新しく造らせた船を岸に寄せさせてご覧になる。龍頭鷁首が生きている姿が思いやられるほど、鮮やかで見事である。

行幸は辰の刻(午前八時ごろ)だというので、まだ明け方から女房たちは化粧をして心づもりをする。上達部の御座所は西の対なので、こちら(東の対)はいつものように騒がしくもない。

内侍の督(尚侍妍子)の御方では、かえって女房たちの装束なども、たいそう念入りに整えていらっしゃると聞く。

明け方に小少将の君が参上なさった。いっしょに髪をくしけずったりする。

いつものように、そうはいっても(行幸は)日が高くなってからだろうと、ゆっくりした気持ちでぐずぐずして、扇のたいそう平凡なのをまだ人に頼んであったのを、持って来るだろうと待っているうちに、鼓の音を聞きつけて、あわてて参上するのはみっともない。

御輿をお迎え申し上げる船楽はたいそう趣深い。御輿を寄せるのを見ると、駕輿丁が、あのような身分ながら、階段から昇って、たいそう苦しそうにうつぶしている。

(わたしも)何の違いがあろう、高貴な方々との交わりも、身分には限りがあるのだから、まったく心安らかではないことだと見る。

御帳台の西面に(帝の)御座所をしつらえて、南の廂の東の間に御倚子を立ててあり、そこから一間へだてて、東の端の空いている所に、北と南の端に御簾を掛けて仕切り、

女房の座っている南の柱のもとから簾を少し引き上げて、内侍が二人出てくる。その日の髪上げをした端正な姿は、唐絵を美しく描いたようである。

左衛門の内侍が御剣を捧げ持つ。青色の無紋の唐衣に、裾濃の裳、領巾と裙帯は浮線綾を櫨緂に染めてある。

表着は菊の五重、掻練は紅で、姿かたちや身のこなし、少し(扇から)はずれて見える横顔は、華やかで美しい。

弁の内侍は神璽の御箱を持つ。紅に葡萄染の織物の袿、裳と唐衣は先の人と同じである。たいそう小柄でかわいらしい人が、気恥ずかしそうに少し緊張しているのが、気の毒に見えた。

扇をはじめとして、(左衛門の内侍より)趣向がまさっていると見える。領巾は楝緂である。

夢のように見える今宵の(二人の)立ち姿や装いは、昔天から降りてきたという天女の姿もこのようであったのかと思われるほどである。

近衛府の役人たちがたいそうふさわしい姿で、御輿のことを取り行う。たいそうきらびやかである。頭の中将が御剣などを受け取って内侍に伝える。

御簾の中を見わたすと、禁色を許された女房たちは、例の青色や赤色の唐衣に地摺の裳、表着はおしなべて蘇芳の織物である。ただ馬の中将だけが葡萄染を着ていました。

打衣は濃いのや薄い紅葉をとりまぜたようで、中に着ている衣は、いつものくちなしの濃い薄い、紫苑色、裏の青い菊の襲を、あるいは三重などそれぞれ思い思いである。

綾を許されていない女房は、例の年配の人は無紋の青色、あるいは蘇芳などで、みな五重で、襲はみな綾である。

大海の摺裳の水の色は華やかに浅く、裳の腰は固紋にした人が多い。袿は菊の三重・五重で、織物は用いていない。

若い女房は菊の五重の唐衣を思い思いに仕立てている。表は白く、青の上を蘇芳にして、一重は青のものもある。表は薄蘇芳、次々に濃い蘇芳にして、中に白を混ぜたのも、すべて仕立て方の趣深いものばかりが、気がきいて見える。

言いようもなくめずらしく、おおげさな扇が見える。くつろいでいるときにこそ、整わない容貌の人も混じっているのが見分けられるのだが(今日はそうではない)。

心を尽くして身づくろいし化粧をして、負けまいと装いたてた姿は、女絵の美しいものによく似ていて、年かさの人、たいそう若い人の違いや、髪の少し衰えたようす、また盛りの豊かな髪などが、自分の前の人ばかり見わたされる。

それにしても、扇から上の額のあたりは不思議なもので、人の容貌を上品にも下品にも見せるところのようだ。こうした中で、すぐれていると見える人こそ、この上なく美しいのだろう。

かねてから帝付きの女房で中宮さまにも兼ねてお仕えしている五人は、参り集まって控えている。内侍が二人、命婦が二人、お給仕の人が一人である。

(帝の)御膳を差し上げるというので、筑前と左京のおもとが髪を上げて、内侍が出入りする隅の柱のもとから出てくる。これはまあまあの天女である。

左京は青色に柳の無紋の唐衣、筑前は菊の五重の唐衣で、裳は例の摺裳である。

お給仕役の橘の三位は青色の唐衣に、唐綾の黄色の菊の袿が表着のようだ。髪は一本に結い上げていた。柱に隠れてはっきりとも見えない。

殿が若宮を抱き申し上げなさって、帝の御前にお連れになる。帝が若宮をお抱き取りになるとき、少しお泣きになるお声がたいそうかわいらしい。

弁の宰相の君が御剣を持って参上なさった。母屋の中戸から西の、殿の北の方がいらっしゃる方へ、若宮はお移りになる。

帝が外にお出ましになってから、宰相の君はこちらに戻ってきて、「たいそうはれがましくて、きまりの悪い気持ちがしたわ」と、ひときわ顔を赤らめて座っていらっしゃる顔が、こまやかに美しい。衣の色も、ほかの人よりひときわ引き立っていらっしゃった。

意訳

行幸当日の朝。龍頭鷁首の船が池に浮かべられる。生きているような彫刻の見事さに目を見張る。

作者たちは早朝から身支度に追われる。

道長の次女で尚侍の妍子の方では、女房の装束にいっそう力を入れていると噂に聞く。

作者は親しい小少将の君と髪を整え合う。

行幸は遅れるだろうと油断していたら、鼓の音が聞こえて大あわてで参上する。作者は自分たちの失敗も隠さずに書く。

船楽の中、御輿が到着する。重い御輿をかついできた駕輿丁は、階段を上ってぐったりとうつぶしている。

作者は駕輿丁の姿に自分を重ねる。高貴な人々の中にまじって暮らす自分も、身分の差を越えられず心安まらない、と思う。華やかな場面の中で、ふと自分の境遇を見つめなおす名高い一節である。

帝の御座所のしつらいを、方角と間取りに沿って記録する。

剣と璽を捧げる内侍二人が進み出る。その姿は唐絵のようだという。

左衛門の内侍の装束。色や染め方まで細かく書く。

左衛門の内侍の横顔は華やかで美しい。

弁の内侍は小柄で、緊張している様子が気の毒に見える。作者は、晴れ舞台に立つ人の心の内にも目を向けている。

弁の内侍の扇などは趣向にすぐれていた。

二人の姿は、天から降りてきた天女のようだという。

近衛府の役人が御輿を扱い、頭中将が剣を内侍に渡す。

御簾の中の女房たちの装束を、身分による色の違いに沿って描く。

打衣や中に着る衣の色の取り合わせ。

禁色を許されていない年配の女房たちの装い。

裳の摺り模様や袿の重ね方。

若い女房たちの唐衣の配色の工夫。

ふだんは容貌の劣る人も見分けられるが、今日は皆が着飾っていて区別がつかない。

着飾った女房たちは女絵のようで、作者には年齢の違いや髪の衰えまで見えてしまう。

額の形が人の印象を左右するという観察。物語作者らしい人を見る目が感じられる。

帝付きで中宮にも仕える五人の女房がそろう。

帝の御膳を運ぶ二人の女房を「まあまあの天女」と評する。先の内侍たちと比べた、少し意地悪なユーモアがある。

二人の唐衣の色。

給仕役の橘の三位は柱に隠れて、よく見えなかった。

道長が若宮を帝の御前に連れて行き、帝は初めて若宮を抱く。若宮の泣き声がかわいらしい。

宰相の君が若宮の守り刀を持って従う。

大役を終えた宰相の君は、晴れがましくて恥ずかしかったと頬を赤らめる。作者は親しい同僚の姿を、ここでも愛情をこめて描いている。

語釈・文法注

龍頭鷁首
船首に龍の頭と鷁(想像上の水鳥)の首を彫った一対の船。貴人の遊宴で楽人を乗せて奏楽した。
內侍のかんの殿
尚侍(ないしのかみ)。ここでは道長の次女、藤原妍子(994〜1027)。のち三条天皇の中宮となる。
ふながく
船楽。龍頭鷁首の船に楽人を乗せて奏する音楽。
しるしの御箱
神璽を納めた箱。天皇の行幸には剣と璽が随行し、内侍が捧げ持った。

文法

「急ぎまゐるさまあしき」
「さまあしき」は連体形止め。あわてて参上するのはみっともないことよ、と詠嘆をこめる。
「なにのことことなる」
「こと」を重ねた形。何の違いがあろうか、の意と解した。
「はじたん」「あふちだん」
「はじたん」は櫨緂(はじだん)、「あふちだん」は楝緂(おうちだん)。いずれも色を段々にぼかして染めたもの。
「近衞司」
近衛府の役人。「このゑづかさ」と読む。
「御はかしりとて」
底本のまま。「御佩刀とりて」の誤植と思われる。
「けに面うち赤みて」
「けに」は「異に」で、ひときわ、いっそうの意。あとの「人よりけに」も同じ。

解説

寛弘五年十月十六日、一条天皇は土御門殿に行幸し、生後一か月あまりの敦成親王と初めて対面した。この章は、その当日の朝から帝と若宮の対面までを描く。龍頭鷁首の船楽、剣璽を捧げる内侍、着飾った女房たちと、晴れの儀式の華やかさが細やかに記録される。

その中で、御輿をかついで苦しげにうつぶす駕輿丁の姿に、作者が自分を重ねる一節はよく知られている。高貴な人々に囲まれて暮らしながら、身分の限界を感じて心安らがない作者の思いが、短い言葉に凝縮されている。

女房たちの装束は、禁色の許しの有無や年齢によって色や織りが異なる。作者はそれを一人ずつ描き分けるとともに、晴れの役をつとめる内侍の緊張や、大役を終えて頬を赤らめる宰相の君の姿をとらえている。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(紫式部日記) 板倉屋書房、明治36年(1903)、383–386頁(コマ203–205)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日