古典ライブラリー

万葉集 巻第二十 4479〜4480番

朝夕に 哭のみし泣けば

作者未詳

天武天皇の夫人であった藤原夫人の歌と、作者のわからない歌。朝夕に声を上げて泣いてばかりいるので、焼いた太刀のような鋭い心も持てなくなったという藤原夫人の歌、恐れ多い天皇の朝廷を心にかけると、朝夕に声を上げて泣けてくるという歌。

宮殿の一室で涙にくれる夫人

題詞藤原夫人の歌一首

  1. 1朝あさ朝あさあさ夕よひ夕よひよいににに安佐欲比爾4479 藤原夫人
  2. 2哭ね哭ねねのののみみみししし泣な泣ななけけけばばば禰能未之奈氣婆
  3. 3燒刀やきたち燒刀やきたちやきたちののの夜伎多知能
  4. 4利と利とと心ごころ心ごころごころももも吾あれ吾あれあれははは刀其己呂毛安禮波
  5. 5思おも思おもおもひひいかねかねかねつつつももも於母比加禰都毛
  6. 6かしこきかしこきかしこきややや可之故伎也4480 作者未詳
  7. 7天あめ天あめあめののの朝廷みかど朝廷みかどみかどををを安米乃美加度乎
  8. 8かけかけかけつれつれつればばば可氣都禮婆
  9. 9哭ね哭ねねのののみみみししし泣な泣ななかかかゆゆゆ禰能未之奈加由
  10. 10朝あさ朝あさあさ夕よひ夕よひよいにににしししててて安佐欲比爾之弖

引用の仕方

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現代語訳

〔4479〕朝夕に声を上げて泣いてばかりいるので、焼いて鍛えた太刀のような、しっかりした心も、私は持てなくなってしまった。

〔4480〕恐れ多い天皇の朝廷を心にかけると、声を上げて泣けてくる。朝にも夕にも。

意訳

天皇を失った悲しみを詠んだ挽歌と見られる。泣き暮らして気丈な心も失ったという夫人の嘆きと、朝廷を思って泣く歌である。

語釈・文法注

文法・本文

藤原夫人
藤原鎌足の娘、五百重娘。天武天皇の夫人。
哭のみし泣けば
声を上げて泣いてばかりいるので。
燒刀の
「利心」にかかる枕詞。
利心
「とごころ」。しっかりした心。
思ひかねつも
思うことができなくなった。
かけつれば
心にかけると。
泣かゆ
自然に泣けてくる。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第二十・部立なし・4479〜4480番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
状況
天武天皇の夫人であった藤原夫人の歌と、作者未詳の歌。大原今城が伝え読んだ。

修辞

枕詞
「燒刀の」が「利心」にかかる。

解説

藤原夫人(五百重娘)は巻二にも天武天皇と贈答した歌がある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、747頁(コマ166)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、883頁(コマ205)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日