古典ライブラリー

万葉集 巻第十六 3872〜3873番

吾が門の 榎の實もり喫む

作者未詳

わが家の門の榎の実をついばむ百千鳥、千鳥は来るけれどあなたは来ないという歌と、わが家の門に千鳥がしきりに鳴く、起きよ起きよ、私の一夜妻を人に知られるなという歌。

家の門の榎の木に、多くの小鳥が群がっている

題詞(右の歌二首)

  1. 1吾わ吾わわががが門かど門かどかどののの吾門之3872
  2. 2榎え榎ええののの實み實みみもりもりもり喫は喫ははむむむ榎實毛利喫
  3. 3百もも百もももも千ち千ちち鳥どり鳥どりどり百千鳥
  4. 4千ち千ちち鳥どり鳥どりどりははは來く來くくれれれどどど千鳥者雖來
  5. 5君きみ君きみきみぞぞぞ來き來ききまさまさまさぬぬぬ君曾不來座
  6. 6吾わ吾わわががが門かど門かどかどににに吾門爾3873
  7. 7千ち千ちち鳥どり鳥どりどり數しば數しばしば鳴な鳴ななくくく千鳥數鳴
  8. 8起お起おおきききよよよ起お起おおきききよよよ起余起余
  9. 9我わ我わわががが一ひと一ひとひと夜よ夜よよ妻づま妻づまづま我一夜妻
  10. 10人ひと人ひとひとににに知し知ししらららゆゆゆななな人爾所知名

引用の仕方

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現代語訳

〔3872〕わが家の門の榎の実をついばむ百千鳥よ。千鳥は来るけれど、あなたはおいでにならない。

〔3873〕わが家の門で千鳥がしきりに鳴く。起きよ、起きよ。私の一夜妻であることを、人に知られるな。

意訳

門の榎の実をついばみに多くの鳥は来るのに恋人は来ないと嘆く女の歌と、夜明けに千鳥が鳴くので、一夜の妻に人に知られぬよう早く起きよと促す男の歌である。

語釈・文法注

文法・本文

もり喫む
「もりはむ」。ついばんで食べる。
百千鳥
「ももちどり」。多くの鳥。
數鳴く
「しばなく」。しきりに鳴く。
一夜妻
「ひとよづま」。一夜だけの妻。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十六・雑歌・3872〜3873番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
作者未詳の歌。

修辞

反復
「千鳥」「起きよ」をくり返す。

解説

民謡風の素朴な歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、599頁(コマ92)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、701頁(コマ114)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日