古典ライブラリー

万葉集 巻第十三 3323番

階立つ 筑摩狹額田

作者未詳

筑摩の息長の遠智の小菅を、編みもしないのに刈って持って来て、敷きもしないのに刈って持って来て、置いたまま私に恋しく思わせる、と、言い寄りながら放っておく男を小菅にたとえた譬喩歌。

近江の水辺に小菅が茂り、刈り取られた菅の束が置かれている

題詞譬喩歌

  1. 1階しな階しなしな立た立たたつつつ筑摩つくま筑摩つくまつくま狹さ狹ささ額田ぬかた額田ぬかたぬかた師名立 都久麻左野方
  2. 2息長おきなが息長おきながおきながののの遠智をち遠智をちおちののの小こ小ここ菅すげ菅すげすげ息長之 遠智能小菅
  3. 3編あ編ああまままなくなくなくにににいいい苅か苅かかりりり持も持ももちちち來き來きき不連爾 伊苅持來
  4. 4敷し敷ししかかかなくなくなくにににいいい苅か苅かかりりり持も持ももちちち來き來ききててて不數爾 伊苅持來而
  5. 5置お置おおきききててて吾われ吾われわれををを偲しぬ偲しぬしぬばばばすすす置而 吾乎令偲
  6. 6息長おきなが息長おきながおきながののの遠智をち遠智をちおちののの小こ小ここ菅すげ菅すげすげ息長之 遠智能子菅

引用の仕方

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現代語訳

(階立つ)筑摩の狭額田の、息長の遠智の小菅よ。編みもしないのに刈って持って来て、敷きもしないのに刈って持って来て、そのまま置いておいて、私に恋しく思わせることだ。息長の遠智の小菅は。

意訳

刈り取られたまま編まれも敷かれもせずに放っておかれる小菅に、言い寄って自分のものにしながら、妻として扱わずに放っておく男のもとで待つ女の身をたとえた譬喩歌である。

語釈・文法注

文法・本文

階立つ
「しなたつ」。「筑摩」にかかる枕詞か。
筑摩
近江国坂田郡の地名。今の滋賀県米原市朝妻筑摩。
息長
「おきなが」。近江国坂田郡の地名。
遠智
「をち」。地名。
い苅り
「い」は接頭語。
偲ばす
「しぬばす」。恋しく思わせる。白文は「令偲」と書く。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十三・譬喩歌・3323番
歌体
長歌(五七をくり返し、五七七で結ぶ)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
譬喩歌。作者未詳。

修辞

譬喩
刈ったまま放っておかれる小菅に、捨て置かれた女をたとえる。
反復
「息長の遠智の小菅」を初めと終わりにくり返す。

解説

3323番は巻第十三でただ一首の譬喩歌である。息長は近江の豪族息長氏の本拠地で、菅の産地でもあった。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、519頁(コマ52)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、598頁(コマ63)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日