古典ライブラリー

万葉集 巻第十三 3301番

神風の 伊勢の海の

作者未詳

伊勢の海に朝凪夕凪に寄せる深海松や海松のように、深く心を寄せた私なのに、また行き来して妻と言わないつもりかと思っているのか、と男をなじる女の長歌。

伊勢の海辺に、深海松が波に寄せられている

題詞(相聞)

  1. 1神かむ神かむかむ風かぜ風かぜかぜののの伊勢いせ伊勢いせいせののの海うみ海うみうみののの神風之 伊勢乃海之
  2. 2朝あさ朝あさあさなぎなぎなぎににに來き來きき寄よ寄よよるるる深ふか深ふかふか海松みる海松みるみる朝奈伎爾 來依深海松
  3. 3夕ゆふ夕ゆふゆうなぎなぎなぎににに來き來きき寄よ寄よよるるるまたまたまた海松みる海松みるみる暮奈藝爾 來因俣海松
  4. 4深ふか深ふかふか海松みる海松みるみるののの深ふか深ふかふかめめめししし吾われ吾われわれををを深海松乃 深目師吾乎
  5. 5またまたまた海松みる海松みるみるののの復また復またまた往ゆ往ゆゆききき反かへ反かへかえりりり俣海松乃 復去反
  6. 6つまつまつまととと言い言いいははわじじじとととかもかもかも思おも思おもおもほせほせおせるるる君きみ君きみきみ都麻等不言登可 思保世流君

引用の仕方

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現代語訳

(神風の)伊勢の海の朝凪に寄せて来る深海松、夕凪に寄せて来るまた海松。その深海松のように深く心を寄せた私を、また海松のように、また行ったり戻ったりして、妻とは言うまいとでも思っておられるのですか、あなたは。

意訳

伊勢の海に寄せる海藻の深海松・また海松を序に、深く心を寄せた自分を、行ったり来たりするばかりで妻と呼ぶつもりはないのかと、煮え切らない男をなじる女の長歌である。

語釈・文法注

文法・本文

神風の
「伊勢」にかかる枕詞。
深海松
「ふかみる」。深い所に生える海松(海藻)。
また海松
枝分かれした海松。「また」を導く。
深めし
深く心を寄せた。
思ほせる
お思いになる。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十三・相聞・3301番
歌体
長歌(五七をくり返し、五七七で結ぶ)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
相聞。作者未詳。

修辞

対句
「朝なぎに來寄る深海松」と「夕なぎに來寄るまた海松」。
掛詞
「深海松」と「深め」、「また海松」と「復」。

解説

海藻の名を掛詞として恋の心を述べる技巧は、柿本人麻呂の石見相聞歌(135番)にも見える。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、515頁(コマ50)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、593頁(コマ60)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日