古典ライブラリー

万葉集 巻第十三 3300番

押照る 難波の埼に

作者未詳

難波の崎に引き上げる赤い船に綱をかけて引っ張るように、人の噂に引っ張られて拒み続けたが、拒みきれずに噂されてしまった我が身よ、と詠む長歌。

難波の浜で、人々が赤く塗った船を綱で引き上げている

題詞(相聞)

  1. 1押おし押おしおし照て照ててるるる難波なには難波なにはなにわののの埼さき埼さきさきににに忍照 難波乃埼爾
  2. 2引ひ引ひひきききのぼるのぼるのぼる赤あけ赤あけあけのののそほそほそお舟ぶね舟ぶねぶね引登 赤曾朋舟
  3. 3そほそほそお舟ぶね舟ぶねぶねににに綱つな綱つなつな取と取ととりりり繫か繫かかけけけ曾朋舟爾 綱取繫
  4. 4引ひ引ひひきききづらひづらひずらいありありありなみなみなみすれすれすれどどど引豆良比 有雙雖爲
  5. 5言い言いいひひいづらひづらひずらいありありありなみなみなみすれすれすれどどど曰豆良賓 有雙雖爲
  6. 6ありありありなみなみなみ得え得ええずずずぞぞぞ言い言いいははわれれれにににししし我わ我わわががが身み身みみ有雙不得叙 所言西我身

引用の仕方

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現代語訳

(押照る)難波の崎に引き上げる赤いそほ舟、そのそほ舟に綱をかけて引っ張るように、人に引っ張られても拒み続けたけれど、言い寄られても拒み続けたけれど、拒み通すことができずに、噂を立てられてしまった我が身よ。

意訳

難波の浜で赤く塗った船を綱で引き上げるさまを序に、人にしつこく言い寄られて拒み続けたが、ついに拒みきれずに噂の種になってしまった女の嘆きを詠む長歌である。

語釈・文法注

文法・本文

押照る
「難波」にかかる枕詞。
そほ舟
赤土(そほ)を塗った舟。
引きづらひ
引っ張り続けて。
ありなみ
拒み続けること。
言ひづらひ
言い寄り続けて。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十三・相聞・3300番
歌体
長歌(五七をくり返し、五七七で結ぶ)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
相聞。作者未詳。

修辞

序詞
冒頭六句が「引きづらひ」を導く。
反復
「ありなみすれど」をくり返す。

解説

船の綱引きの情景から、人に言い寄られる女の心へと転じる、民謡的な長歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、515頁(コマ50)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、593頁(コマ60)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日