古典ライブラリー

万葉集 巻第十三 3297〜3298番

玉だすき かけぬ時無く

作者未詳

心にかけない時もなく思う妻に逢えないので、昼は一日中、夜は夜通し、眠りもせずに恋い慕い、生きている心地もしない、と詠む長歌と、ええままよ死んでしまおう、生きていてもこうして恋い続けるばかりだという反歌。

昼も夜も、男が眠れずに恋人を思い続けている

題詞(相聞)

  1. 1玉たま玉たまたまだすきだすきだすきかけかけかけぬぬぬ時とき時ときとき無な無ななくくく玉田次 不懸時無長歌
  2. 2吾わ吾わわががが念おも念おもおもふふう妹いも妹いもいもにににししし逢あ逢ああははわねねねばばば吾念 妹西不會波
  3. 3あかねさすあかねさすあかねさす晝ひる晝ひるひるはははしみらにしみらにしみらに赤根刺 日者之彌良爾
  4. 4ぬばたまぬばたまぬばたまののの夜よる夜よるよるはははすがらすがらすがらににに烏玉之 夜者酢辛二
  5. 5眠い眠いいももも睡ね睡ねねずずずににに妹いも妹いもいもににに戀こ戀ここふるふるうるににに生い生いいけけけるるるすべすべすべなしなしなし眠不睡爾 妹戀丹 生流爲便無
  6. 6よしゑやしよしゑやしよしえやし縱惠八師反歌
  7. 7死し死ししなななむむんよよよ吾わぎ吾わぎわぎ妹も妹もも二二火四吾妹
  8. 8生い生いいけけけりりりともともとも生友
  9. 9斯か斯かかくくくのみのみのみこそこそこそ吾わ吾わわががが各鑿社吾
  10. 10戀こ戀ここひひい渡わた渡わたわたりりりなめなめなめ戀度七目

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔3297〕(玉だすき)心にかけない時もなく私が思ういとしい人に逢えないので、(あかねさす)昼は一日中、(ぬばたまの)夜は夜通し、眠りもせずに、いとしい人を恋い慕っていて、生きている心地もしない。

〔3298〕ええままよ、死んでしまおうよ、いとしい人よ。生きていても、こうしてばかり私は恋い続けることになるだろうから。

意訳

いつも心にかけている恋人に逢えず、昼も夜も眠らずに恋い慕って生きた心地もしないという長歌と、生きていても恋い続けるばかりならいっそ死んでしまおうという反歌である。

語釈・文法注

文法・本文

玉だすき
「かけ」にかかる枕詞。
しみらに
一日中。
すがらに
夜通し。
よしゑやし
ええままよ。
死なむよ
白文は「二二火四」と書く戯書。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十三・相聞・3297〜3298番
歌体
長歌(五七をくり返し、五七七で結ぶ)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
相聞。作者未詳。

修辞

対句
「あかねさす晝はしみらに」と「ぬばたまの夜はすがらに」。
戯書
3298番の「二二火四」「各鑿」「七目」など。

解説

3298番の白文は数字や漢字の音訓を組み合わせた戯書が多く、書記者の遊び心がうかがえる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、514頁(コマ50)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、592頁(コマ60)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日