万葉集 巻第十三 3248〜3249番
敷島の 日本の國に
大和の国には人は大勢いるけれど、藤の蔓のようにまつわり若草のように心を寄せた君に恋い焦がれて、長いこの夜を明かすのか、と詠む長歌と、大和の国にあなたのような人が二人いると思えば何を嘆こうかという反歌。巻第十三の相聞の始まり。
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題詞相聞
- 1敷敷しき島島しまののの日本日本やまとののの國國くにににに式島之 山跡之土丹長歌
- 2人人ひと多多さわににに滿滿みちちちてててあれあれあれどもどもども人多 滿而雖有
- 3藤藤ふじ浪浪なみののの思思おもひひい纏纏まつはりはりわり藤浪乃 思纏
- 4若若わか草草くさののの思思おもひひいつきつきつきにににししし若草乃 思就西
- 5君君きみががが目目めににに戀戀こひひいややや明明あかかかさささむむん長長ながきききこここののの夜夜よををを君目二 戀八將明 長此夜乎
- 6敷敷しき島島しまののの式島乃反歌
- 7日本日本やまとののの國國くにににに山跡乃土丹
- 8人人ひと二二ふた人人り人二
- 9ありありありとととししし念念おもははわばばば有年念者
- 10何何なにかかか嗟嗟なげかかかむむん難可將嗟
現代語訳
〔3248〕(敷島の)大和の国には人は大勢満ちあふれているけれど、(藤浪の)心がまつわりつき、(若草の)心を寄せてしまったあなたに逢いたくて、恋い焦がれながら明かすのだろうか。長いこの夜を。
〔3249〕(敷島の)大和の国に、あなたのような人がもう一人いると思うのならば、何を嘆くことがあろうか。
意訳
巻第十三の相聞の始まりである。大和の国に人は多いのに、心を寄せたただ一人の人に恋い焦がれて長い夜を明かすという長歌と、恋人のような人がもう一人いるのなら何も嘆かないのにという反歌で、かけがえのない人への思いを詠む。
語釈・文法注
文法・本文
- 敷島の
- 「日本」(やまと)にかかる枕詞。
- 多に
- 「さはに」。大勢。
- 藤浪の
- 藤の蔓がまつわる意で「思ひ纏はり」にかかる。
- 若草の
- 「思ひつき」にかかる。
- 君が目に
- あなたに逢いたくて。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十三・相聞・3248〜3249番
- 歌体
- 長歌(五七をくり返し、五七七で結ぶ)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 相聞。作者未詳。
修辞
- 枕詞
- 「敷島の」「藤浪の」「若草の」。
- 対照
- 多くの人と、ただ一人の恋人を対比する。
解説
3249番の「人二人ありとし念はば」は、恋人がかけがえのない唯一の人であることを、逆説的に表した名歌である。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、503頁(コマ44)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、580頁(コマ54)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日