万葉集 巻第十三 3232〜3233番
斧取りて 丹生の檜山の
斧で丹生の檜山の木を伐って筏に作り、楫を通して磯を漕ぎめぐり島伝いに見ても見飽きない、吉野の滝もとどろに落ちる白波、と詠む長歌と、その白波を家に残した妻に見せたいという反歌。
場面イラスト(準備中)
題詞(雑歌)
- 1斧斧をの取取とりりりててて丹生丹生にうののの檜檜ひ山山やまののの斧取而 丹生檜山長歌
- 2木木き折折こりりり來來きててて筏筏いかだににに作作つくりりり木折來而 檥爾作
- 3二二ま楫楫かじ貫貫ぬききき磯磯いそ榜榜こぎぎぎ回回たみみみつつつつつつ二梶貫 礒搒回乍
- 4島島しま傳傳ずたひひい見見みれれれどもどもども飽飽あかかかずずず島傳 雖見不飽
- 5みみみ吉野吉野よしぬののの瀧瀧たぎもももとどろとどろとどろににに落落おつるつるつる白白しら浪浪なみ三吉野乃 瀧動動 落白浪
- 6みみみ吉野吉野よしぬののの三芳野反歌
- 7瀧瀧たぎもももとどろとどろとどろににに瀧動動
- 8落落おつるつるつる白白しら浪浪なみ落白浪
- 9留留とまりりりにににししし留西
- 10妹妹いもににに見見みせせせまくまくまく妹見西卷
- 11欲欲ほしきしきしき白白しら浪浪なみ欲白浪
現代語訳
〔3232〕斧を取って丹生の檜山の木を伐って来て、筏に作り、左右の楫を通して、磯を漕ぎめぐりながら島伝いに見ても見飽きない。吉野の滝もとどろくばかりに落ちる白波は。
〔3233〕吉野の滝もとどろくばかりに落ちる白波よ。家に留まっている妻に見せたい白波よ。
意訳
丹生の檜山の木で作った筏に乗り、磯を漕ぎめぐり島伝いに吉野の滝の白波を眺める長歌と、その見事な白波を家に残してきた妻に見せたいと願う反歌である。
語釈・文法注
文法・本文
- 丹生
- 「にふ」。吉野の地名。
- 木折り
- 「きこり」。木を伐って。
- 二楫
- 「まかぢ」。左右の楫。
- 榜ぎ回み
- 「こぎたみ」。漕ぎめぐって。
- とどろに
- とどろくばかりに。白文は「動動」と書く。
- 留りにし
- 家に留まっている。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十三・雑歌・3232〜3233番
- 歌体
- 長歌(五七をくり返し、五七七で結ぶ)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 雑歌。作者未詳。
修辞
- 反復
- 反歌は長歌の結びの句を受けて繰り返す。
- 旋頭歌
- 反歌は五七七五七七の形。
解説
吉野の滝をたたえる歌は、人麻呂の吉野讃歌(36〜39番)以来の伝統を受けている。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、499頁(コマ42)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、575頁(コマ51)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日