万葉集 巻第十三 3230〜3231番
幣帛を 奈良より出でて
奈良を出て穂積、坂手を過ぎ、甘南備山に朝宮仕えをして吉野へと入って行かれるのを見ると、昔が思われると詠む行幸の長歌と反歌。
場面イラスト(準備中)
題詞(雑歌)
- 1幣帛幣帛みてぐらををを奈良奈良ならよりよりより出出いでででててて帛叫 楢從出而長歌
- 2水水みず蓼蓼たで穗積穗積ほずみににに至至いたりりり水蓼 穗積至
- 3鳥鳥と網網なみ張張はるるる坂手坂手さかてををを過過すぎぎぎ鳥網張 坂手乎過
- 4石石いわ走走ばしるるる甘南備甘南備かむなび山山やまににに石走 甘南備山丹
- 5朝朝あさ宮宮みやににに仕仕つかへへえ奉奉まつりりりててて朝宮 仕奉而
- 6吉野吉野よしぬへへへととと入入いりりり坐坐ますすす見見みれれればばば古古いにしえおもほゆおもほゆおもおゆ吉野部登 入座見者 古所念
- 7月月つき日日ひははは月日反歌
- 8行行ゆけけけどもどもども久久ひさににに攝友久
- 9流流ながらふるらふるらうる流經
- 10三諸三諸みもろののの山山やまののの三諸之山
- 11離離とつ宮宮みや地地どころ礪津宮地
現代語訳
〔3230〕(幣帛を)奈良から出て、(水蓼)穂積に至り、(鳥網張る)坂手を過ぎ、(石走る)甘南備山で朝宮にお仕え申し上げて、吉野へとお入りになるのを見ると、昔のことが思われる。
〔3231〕月日は過ぎて行くけれども、久しく続いて流れている三諸の山の離宮の地であることよ。
意訳
奈良から穂積、坂手を経て甘南備山で朝の宮に仕え、吉野へ向かう行幸を見て、昔の吉野行幸を偲ぶ長歌である。反歌では、月日が過ぎても変わらずに続く三諸の山の離宮の地をたたえる。
語釈・文法注
文法・本文
- 幣帛を
- 「みてぐらを」。「奈良」にかかる枕詞。
- 水蓼
- 「穂積」にかかる枕詞。
- 鳥網張る
- 「坂手」にかかる枕詞。
- 朝宮
- 朝の宮仕え。
- 離宮地
- 「とつみやどころ」。離宮のあった所。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十三・雑歌・3230〜3231番
- 歌体
- 長歌(五七をくり返し、五七七で結ぶ)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 雑歌。作者未詳。
修辞
- 枕詞
- 地名に「幣帛を」「水蓼」「鳥網張る」「石走る」を重ねる。
- 道行き
- 奈良から吉野への道のりを地名で連ねる。
解説
3230番は、地名を枕詞とともに連ねる道行きの形式で、行幸の旅を描いている。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、499頁(コマ42)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、575頁(コマ51)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日