古典ライブラリー

万葉集 巻第十三 3221番

冬ごもり 春さり來れば

作者未詳

春が来ると、朝には白露が置き、夕方には霞がたなびき、風の吹く梢の下で鶯が鳴くという、春の山の情景を詠んだ長歌。巻第十三の巻頭歌。

春の山で、霞のたなびく梢の下に鶯が鳴いている

題詞雑歌

  1. 1冬ふゆ冬ふゆふゆごもりごもりごもり春はる春はるはるさりさりさり來く來くくれれればばば冬木成 春去來者
  2. 2朝あした朝あしたあしたにににははは白しら白しらしら露つゆ露つゆつゆ置お置おおききき朝爾波 白露置
  3. 3夕ゆふべ夕ゆふべゆうべにににははは霞かすみ霞かすみかすみたなびくたなびくたなびく夕爾波 霞多奈妣久
  4. 4風かぜ風かぜかぜののの吹ふ吹ふふくくく木末こぬれ木末こぬれこぬれががが下した下したしたににに鶯うぐひす鶯うぐひすうぐいす鳴な鳴ななくくくももも汗湍能振 樹奴禮我之多爾 鶯鳴母

引用の仕方

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現代語訳

(冬ごもり)春がやって来ると、朝には白露が置き、夕方には霞がたなびく。風の吹く梢の下で、鶯が鳴いていることよ。

意訳

巻第十三は長歌を中心とする作者未詳の巻で、雑歌・相聞・問答・譬喩歌・挽歌の部立を持つ。巻頭は、朝の白露、夕べの霞、梢の下に鳴く鶯と、春の一日の山の情景を簡潔に描いた短い長歌である。

語釈・文法注

文法・本文

冬ごもり
「春」にかかる枕詞。白文は「冬木成」と書く。
春さり來れば
春がやって来ると。
木末
「こぬれ」。梢。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十三・雑歌・3221番
歌体
長歌(五七をくり返し、五七七で結ぶ)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
雑歌。作者未詳。

修辞

対句
「朝には白露置き」と「夕には霞たなびく」。
枕詞
「冬ごもり」。

解説

白文の「汗湍能振」(かぜのふく)は難訓で、諸説がある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、497頁(コマ41)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、573頁(コマ50)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日