万葉集 巻第十一 2810〜2811番
音のみを 聞きてや戀ひむ
噂ばかり聞いて恋い続けるのか、じかに逢って恋うことが多いのに、と問う。その言葉を聞こうとしてか、照る月夜も闇のように見えた、と答える。問答の歌。
場面イラスト(準備中)
題詞(問答)
現代語訳
〔2810〕噂ばかりを聞いて恋い続けるのだろうか。(まそ鏡)じかに目で見て逢って、恋しく思うことも多いのに。
〔2811〕その言葉を聞こうとしてのことであろう。(まそ鏡)照っている月夜も、闇のようにしか見えなかった。
意訳
問答の歌である。噂に聞くだけで恋い続けるのかと問う男に、女は、あなたのその言葉を聞くためにか、明るい月夜も涙で闇のようにしか見えなかったと答える。
語釈・文法注
文法・本文
- 音のみ
- 噂だけ。
- まそ鏡
- 「目」「照る」にかかる枕詞。白文は2810番を「犬馬鏡」と書く。
- 聞かむとならし
- 聞こうとしてのことらしい。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十一・相聞・2810〜2811番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 問答。作者未詳。
修辞
- 枕詞
- 「まそ鏡」を両首に用いる。
- 対照
- 2811番は「照れる月夜」と「闇」を対比する。
解説
白文の「犬馬鏡」は、犬を呼ぶ声「ま」と馬を呼ぶ声「そ」で「まそ」と読ませる戯書である。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、458頁(コマ22)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、528頁(コマ28)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日