古典ライブラリー

万葉集 巻第九 1665〜1666番

妹がため 吾玉拾ふ

作者未詳

妻のために私が玉を拾う。沖の玉を寄せて持って来い、沖の白波よ。朝霧に濡れた衣も乾かさずに、ひとりであなたは山道を越えていくのか。舒明天皇の紀伊行幸のときの歌二首。

紀伊の浜辺で男が玉を拾い、朝霧の山道をひとりの旅人が越えていく

題詞岡本宮御宇天皇の紀伊國に幸せる時の歌二首

  1. 1妹いも妹いもいもがががためためため爲妹1665
  2. 2吾われ吾われわれ玉たま玉たまたま拾ひり拾ひりひりふふう吾玉拾
  3. 3沖おき沖おきおき邊へ邊へへなるなるなる奧邊有
  4. 4玉たま玉たまたま寄よ寄よよせせせ持も持ももちちち來こ來ここ玉緣持來
  5. 5沖おき沖おきおきつつつ白しら白しらしら浪なみ浪なみなみ奧津白浪
  6. 6朝あさ朝あさあさ霧ぎり霧ぎりぎりににに朝霧爾1666
  7. 7沾ぬ沾ぬぬれれれにににししし衣ころも衣ころもころも沾爾之衣
  8. 8干ほ干ほほさささずずずしてしてして不干而
  9. 9ひとりひとりひとりややや君きみ君きみきみががが一哉君之
  10. 10山やま山やまやま路ぢ路ぢじ越こ越ここゆゆゆらむらむらん山道將越

引用の仕方

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現代語訳

〔1665〕妻のために私は玉を拾う。沖の方にある玉を寄せて持って来い、沖の白波よ。

〔1666〕朝霧に濡れた衣を干しもしないで、ひとりであなたは山道を越えているのだろうか。

意訳

1665番は、旅先の浜で妻へのみやげの玉を拾う男が、沖の白波に玉を運んで来いと呼びかける歌、1666番は、家に残る妻が、朝霧に濡れた衣のまま山道を越えていく夫の旅を案じる歌である。

語釈・文法注

文法・本文

寄せ持ち來
寄せて持って来い。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第九・雑歌・1665〜1666番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第1期(629〜672年(舒明天皇の即位〜壬申の乱))
状況
舒明天皇が紀伊国に行幸したときの歌二首。作者はわからない。

修辞

呼びかけ
1665番で白波に呼びかける。

解説

旅人と家に残る者の両方の立場の歌が組になっている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、345頁(コマ176)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、391頁(コマ201)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日