古典ライブラリー

万葉集 巻第八 1562〜1563番

誰聞きつ 此間ゆ鳴き渡る

巫部麻蘇娘子(かんなぎべのまそおとめ)

誰が聞いたでしょう、ここを鳴き渡る雁が妻を呼ぶ声のうらやましさを。聞いたかとあなたが問う雁の声は、本当に遠く雲に隠れてしまった。巫部麻蘇娘子の雁の歌と、大伴家持が答えた歌。

秋の夜空を雁の列が鳴きながら渡り、雲の中に消えていく

題詞巫部麻蘇娘子の雁の歌一首/大伴家持の和ふる歌一首

  1. 1誰たれ誰たれたれ聞き聞きききききつつつ誰聞都1562 麻蘇娘子
  2. 2此間ここ此間ここここゆゆゆ鳴な鳴ななききき渡わた渡わたわたるるる從此間鳴渡
  3. 3雁かり雁かりかりががが音ね音ねねののの鴈鳴乃
  4. 4嬬つま嬬つまつま呼よ呼よよぶぶぶ聲こゑ聲こゑこえののの嬬呼音乃
  5. 5ともしくともしくともしくもももありありありききき乏蜘在寸
  6. 6聞き聞きききききつつつやややととと聞津哉登1563 家持
  7. 7妹いも妹いもいもががが問と問ととはははせせせるるる妹之問勢流
  8. 8雁かり雁かりかりががが音ね音ねねははは鴈鳴者
  9. 9まことまことまことももも遠とほ遠とほとおくくく眞毛遠
  10. 10雲くも雲くもくも隱がく隱がくがくるるるなりなりなり雲隱奈利

引用の仕方

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現代語訳

〔1562〕誰が聞いたでしょうか。ここを鳴いて渡っていく雁が、妻を呼ぶ声の、うらやましかったことを。

〔1563〕聞いたかとあなたがお尋ねになる雁の声は、本当に遠く、雲に隠れてしまったようだ。

意訳

麻蘇娘子は、妻を呼んで鳴き渡る雁の声がうらやましかったが、あなたは聞きましたかと、家持の訪れのないことをほのめかす。家持は、その雁の声は遠く雲に隠れてしまったと、はぐらかすように答えている。

語釈・文法注

文法・本文

ともしくもありき
うらやましかった。

和歌

作者
巫部麻蘇娘子(生没年未詳)
大伴家持と歌を交わした女性。
出典
『万葉集』巻第八・雑歌・1562〜1563番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
巫部麻蘇娘子の雁の歌と、大伴家持が答えた歌。

解説

雁の声に託して、恋の思いを探り合う贈答である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、323頁(コマ165)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、363頁(コマ187)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日