万葉集 巻第八 1553〜1554番
時雨の雨 間無くし零れば
時雨の雨が絶え間なく降るので、三笠山の梢はすっかり色づいた。天皇の三笠の山の黄葉は、今日の時雨で散ってしまうだろうか。大伴稲公の歌と、甥の家持が和した歌。
場面イラスト(準備中)
題詞衞門大尉大伴宿禰稻公の歌一首/大伴家持の和ふる歌一首
現代語訳
〔1553〕時雨の雨が絶え間なく降るので、三笠山の梢は、すっかり色づいたことだ。
〔1554〕(皇の)三笠の山の黄葉は、今日の時雨に、散ってしまうだろうか。
意訳
叔父の稲公が、時雨のおかげで三笠山がすっかり色づいたと歌うと、家持は、その美しい黄葉も今日の時雨で散ってしまうのではないかと応じている。時雨が黄葉を染めもし、散らしもするという両面をとらえた贈答である。
語釈・文法注
文法・本文
- あまねく
- すっかり、残らず。
- 皇の
- 大君の御笠の意で「三笠」にかかる。
和歌
- 作者
- 大伴稲公(生没年未詳)
大伴安麻呂の子で、旅人の弟。衛門大尉などを務めた。 - 出典
- 『万葉集』巻第八・雑歌・1553〜1554番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 衛門大尉大伴稲公の歌と、大伴家持が和した歌。
修辞
- 枕詞
- 1554番の「皇の」が「三笠」にかかる。
解説
大伴氏の一族の間で交わされた、季節の歌の贈答である。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、321頁(コマ164)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、362頁(コマ187)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日