古典ライブラリー

万葉集 巻第七 1194〜1195番

紀の國の 雜賀の浦に

藤原卿(ふじわらのまえつきみ)

紀の国の雑賀の浦に出て見ると、海人の漁火が波の間から見える。妹背の山に麻を蒔く人を思う歌。藤原卿の紀伊の旅の歌二首。

夜の雑賀の浦の沖に、海人の漁火が波の間に点々と揺れている

題詞覊旅にて作れる(10)

  1. 1紀き紀ききののの國くに國くにくにののの木國之1194
  2. 2雜賀さひか雜賀さひかさいかののの浦うら浦うらうらににに狹日鹿乃浦爾
  3. 3出い出いいででで見み見みみれれればばば出見者
  4. 4海人あま海人あまあまののの燈とも燈ともとも火しび火しびしび海人之燈火
  5. 5浪なみ浪なみなみののの間ま間ままゆゆゆ見み見みみゆゆゆ浪間從所見
  6. 6麻あさ麻あさあさ衣ごろも衣ごろもごろも麻衣1195
  7. 7著け著けけれれればばばなつかしなつかしなつかし著者夏樫
  8. 8紀き紀ききののの國くに國くにくにののの木國之
  9. 9妹いも妹いもいも背せ背せせののの山やま山やまやまににに妹背之山二
  10. 10麻あさ麻あさあさ蒔ま蒔ままくくく吾わぎ吾わぎわぎ妹も妹もも麻蒔吾妹

引用の仕方

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現代語訳

〔1194〕紀の国の雑賀の浦に出て見ると、海人の漁火が、波の間から見える。

〔1195〕麻の衣を着ると懐かしく思われる。紀の国の妹背の山で麻を蒔いていたあの娘よ。

意訳

藤原卿の紀伊の旅の歌の残りの二首である。1194番は、雑賀の浦の夜の海に波の間から見え隠れする漁火の景、1195番は、麻の衣を着るたびに、妹背の山で麻を蒔いていた土地の娘が思い出されるという歌である。

語釈・文法注

文法・本文

燈火
「ともしび」。漁火。
著ればなつかし
着ると心ひかれる。

和歌

作者
藤原卿(生没年未詳)
藤原氏の高官。藤原房前・麻呂などとする説がある。
出典
『万葉集』巻第七・雑歌・1194〜1195番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
巻第七の雑歌のうち、「覊旅にて作れる」歌の続き。藤原卿の紀伊の旅の歌。

解説

雑賀の浦は和歌山市の海岸。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、270頁(コマ139)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、297頁(コマ154)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日