古典ライブラリー

万葉集 巻第七 1125〜1126番

淸き瀨に 千鳥妻喚び

作者未詳

清らかな瀬に千鳥が妻を呼び、山あいに霞が立っているだろう神奈備の里よ。年月もまだたたないのに、明日香川の瀬々を渡った飛び石もなくなってしまった。旧都明日香をしのぶ歌二首。

霞のかかる明日香の里を明日香川が流れ、川の飛び石の上を千鳥が渡っている

題詞故鄕を思ぶ

  1. 1淸きよ淸きよきよききき瀨せ瀨せせににに清湍爾1125
  2. 2千ち千ちち鳥どり鳥どりどり妻つま妻つまつま喚よ喚よよびびび千鳥妻喚
  3. 3山やま山やまやまののの際ま際ままににに山際爾
  4. 4霞かすみ霞かすみかすみ立た立たたつつつらむらむらん霞立良武
  5. 5甘南備かむなび甘南備かむなびかむなびののの里さと里さとさと甘南備乃里
  6. 6年とし年としとし月つき月つきつきももも年月毛1126
  7. 7いまだいまだいまだ經へ經へへなくなくなくににに未經爾
  8. 8明日香あすか明日香あすかあすか河がは河がはがわ明日香河
  9. 9瀨せ瀨せせ瀨ぜ瀨ぜぜゆゆゆ渡わた渡わたわたしししししし湍瀨由渡之
  10. 10石いし石いしいし走ばし走ばしばしなしなしなし石走無

引用の仕方

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現代語訳

〔1125〕清らかな瀬に千鳥が妻を呼び、山あいに霞が立っているだろう、神奈備の里では。

〔1126〕年月もまだたっていないのに、明日香川の瀬々に渡してあった飛び石は、なくなってしまった。

意訳

都が奈良に移ったのちに、旧都明日香をしのんだ歌である。1125番は、今ごろ神奈備の里では、川瀬に千鳥が鳴き、山に霞が立っているだろうと思いやり、1126番は、まだそれほど年月もたたないのに、明日香川の飛び石もなくなってしまったと、旧都の変わりようを嘆いている。

語釈・文法注

文法・本文

甘南備の里
神のいます森のある里。ここは明日香の神奈備。
石走
「いしばし」。川に並べた飛び石。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第七・雑歌・1125〜1126番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
巻第七の雑歌のうち、「故郷を思ぶ」歌二首。作者はわからない。

解説

「故郷」は旧都の明日香をさす。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、264頁(コマ136)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、289頁(コマ150)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日