古典ライブラリー

万葉集 巻第七 1090〜1091番

吾妹子が 赤裳の裾の

作者未詳

妻の赤い裳の裾を濡らして染めるような今日の小雨に、私も一緒に濡れよう。妻の形見の衣を下に着ているので、透るほど雨よ降るな。雨を詠んだ歌二首。

細かい雨の降る野道を、赤い裳の裾を濡らして歩く女性と、寄り添う男の姿

題詞雨を詠める

  1. 1吾わぎ吾わぎわぎ妹も妹もも子こ子ここががが吾妹子之1090
  2. 2赤あか赤あかあか裳も裳ももののの裾すそ裾すそすそののの赤裳裙之
  3. 3染し染ししめめめ濕ひ濕ひひぢぢじむむん將染埿
  4. 4今け今けけ日ふ日ふふののの霡霂ひさめ霡霂ひさめひさめににに今日之霡霂爾
  5. 5吾われ吾われわれさへさへさへ沾ぬ沾ぬぬれれれななな吾共所沾名
  6. 6徹とほ徹とほとおるるるべくべくべく可融1091
  7. 7雨あめ雨あめあめはははななな零ふ零ふふりりりそそそ雨者莫零
  8. 8吾わぎ吾わぎわぎ妹も妹もも子こ子ここががが吾妹子之
  9. 9形かた形かたかた見み見みみのののころもころもころも形見之服
  10. 10われわれわれ下した下したしたににに著き著ききたりたりたり吾下爾著有

引用の仕方

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現代語訳

〔1090〕妻の赤い裳の裾が濡れて染まるであろう今日の小雨に、私も一緒に濡れよう。

〔1091〕透りとおるほどに雨よ降るな。妻の形見の衣を、私は下に着ているのだから。

意訳

1090番は、恋人の赤い裳の裾を濡らしている細かい雨に、自分も一緒に濡れようと、恋人と同じ雨に濡れる喜びを歌う。1091番は、旅に出る前に恋人と取り交わした形見の衣を下に着ているので、それが濡れるほど雨よ降らないでくれと願っている。

語釈・文法注

文法・本文

染め濕ぢむ
濡れて染まるであろう。
霡霂
「ひさめ」。こさめ、または大雨とも。
形見のころも
別れるときに取り交わした衣。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第七・雑歌・1090〜1091番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
巻第七の雑歌のうち、「雨を詠める」歌二首。作者はわからない。

解説

恋人の衣と雨とを結びつけた、恋歌の心をもつ雑歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、261頁(コマ134)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、285頁(コマ148)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日