古典ライブラリー

万葉集 巻第四 709番

夕闇は

大宅女(おおやけめ)

夕闇の道はおぼつかない。月の出を待ってからお行きなさい、あなた。その間だけでもお顔を見ていたい。豊前の娘子大宅女の歌。

夕闇の迫る家の戸口で、女性が帰ろうとする男の袖を引いて、東の空を指さしている

題詞豐前國の娘子大宅女の歌一首

  1. 1夕ゆふ夕ゆふゆう闇やみ闇やみやみははは夕闇者
  2. 2路みち路みちみちたづたづしたづたづしたずたずし路多豆多頭四
  3. 3月つき月つきつき待ま待ままちちちててて待月而
  4. 4行ゆ行ゆゆかせかせかせ吾わが吾わがわが背せ背せせ子こ子ここ行吾背子
  5. 5そのそのその間ま間ままにににももも見み見みみむむむ其間爾母將見

引用の仕方

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現代語訳

夕闇の道はおぼつかない。月の出を待ってからお行きなさい、あなた。その間だけでもお顔を見ていよう。

意訳

日が暮れて月がまだ出ない夕闇は、道が暗くて危ない。だから月が出るまで待ってから帰りなさいと、恋人を気づかう。けれどもその本心は、月を待つ間だけでも恋人の顔を見ていたいという願いにある。

語釈・文法注

文法・本文

たづたづし
おぼつかない、頼りない。

和歌

作者
大宅女(生没年未詳)
豊前国(福岡県東部・大分県北部)の娘子。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・709番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
豊前国の娘子大宅女の歌。

解説

相手を気づかう言葉の中に、少しでも長く一緒にいたいという本音をひそませた、愛らしい歌として名高い。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、176頁(コマ92)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、186頁(コマ99)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日