古典ライブラリー

万葉集 巻第四 696番

家人に 戀ひ過ぎめやも

石川広成(いしかわのひろなり)

家の妻への恋しさが消え去ることがあろうか。かじかの鳴く泉の里に、年を過ごしてしまったので。久邇京で家を思う石川広成の歌。

泉川のほとりで、かじか蛙が鳴き、官人がひとり故郷の方角を見ている

題詞石川朝臣廣成の歌一首

  1. 1家いへ家いへいえ人びと人びとびとににに家人爾
  2. 2戀こ戀ここひひい過す過すすぎぎぎめめめやもやもやも戀過目八方
  3. 3かはづかはづかわず鳴な鳴ななくくく川津鳴
  4. 4泉いづみ泉いづみいずみののの里さと里さとさとににに泉之里爾
  5. 5年とし年としとしののの歷へ歷へへぬれぬれぬればばば年之歷去者

引用の仕方

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現代語訳

家の妻への恋しさが過ぎ去ることがあろうか。かじかの鳴く泉の里で、年を過ごしてしまったので。

意訳

泉の里(久邇京のあった京都府木津川市)で年を越すことになった作者は、奈良の家に残した妻への恋しさが消えることはないと歌う。

語釈・文法注

文法・本文

戀ひ過ぎめやも
反語。恋しさが消えようか。

和歌

作者
石川広成(生没年未詳)
奈良時代の官人。のちに高円朝臣の姓を賜った。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・696番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
石川広成の歌。久邇京にいたときの作とみられる。

解説

聖武天皇は天平12年(740)から数年間、都を久邇京に移した。官人たちは家族と離れて暮らすことが多かった。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、175頁(コマ91)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、184頁(コマ98)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日