古典ライブラリー

万葉集 巻第四 694〜695番

戀草を 力車に七車

広河女王(ひろかわのおおきみ)

恋の草を荷車に七台も積むほどに恋しいのは、私の心からのこと。恋はもうするまいと思っていたのに、どこの恋がつかみかかってきたのか。広河女王の歌二首。

荷車に山のように草が積まれ、その後ろで女性が困ったように笑っている

題詞廣河女王の歌二首

  1. 1戀こひ戀こひこい草ぐさ草ぐさぐさををを戀草呼694
  2. 2力ちから力ちからちから車ぐるま車ぐるまぐるまににに力車二
  3. 3七なな七なななな車くるま車くるまくるま七車
  4. 4つみつみつみててて戀こ戀ここふらくふらくうらく積而戀良苦
  5. 5吾わ吾わわががが心こころ心こころこころからからから吾心柄
  6. 6戀こひ戀こひこいははは今いま今いまいまははは戀者今葉695
  7. 7あらあらあらじじじととと吾われ吾われわれははは不有常吾羽
  8. 8思おも思おもおもへへえるるるををを念乎
  9. 9何處いづく何處いづくいずくののの戀こひ戀こひこいぞぞぞ何處戀其
  10. 10つかみつかみつかみかかれかかれかかれるるる附見繫有

引用の仕方

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現代語訳

〔694〕恋の草を力車に七台も積むほどに恋しく思うのは、私の心からのことです。

〔695〕恋はもう今はするまいと私は思っていたのに、どこの恋がつかみかかってきたのか。

意訳

694番は、恋しさを荷車七台分の草にたとえ、そんなにも恋しいのは自分の心のせいだと歌う。695番は、もう恋はしないと決めていたのに、どこからか恋がつかみかかってきたと、恋を擬人化して歌う。どちらもユーモアのある誇張が楽しい。

語釈・文法注

文法・本文

力車
人が引く荷車。
戀ふらく
恋しく思うこと。

和歌

作者
広河女王(生没年未詳)
穂積皇子の孫。上道王の娘。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・694〜695番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
広河女王の歌二首。

修辞

誇張
694番で、恋の多さを荷車七台分の草にたとえる。
擬人法
695番で、恋が「つかみかかる」とする。

解説

祖父の穂積皇子にも「家にある櫃に鍵さし蔵めてし恋の奴のつかみかかりて」(巻第十六の3816番)という歌があり、695番はそれをふまえている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、175頁(コマ91)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、184頁(コマ98)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日