古典ライブラリー

万葉集 巻第四 672番

倭文手纏

安倍虫麻呂(あべのむしまろ)

倭文の手纏のように、ものの数でもないこの命なのに、どうしてこんなにも私は恋い続けるのか。安倍虫麻呂の歌。

粗末な布の腕輪を手に、男が自嘲するように笑っている

題詞安倍朝臣蟲麻呂の歌一首

  1. 1倭し倭しし文づ文づず手た手たた纏まき纏まきまき倭文手纏
  2. 2數かず數かずかずにににもももあらあらあらぬぬぬ數二毛不有
  3. 3壽いのち壽いのちいのちもちもちもち壽持
  4. 4如何いか如何いかいかににに幾許ここだく幾許ここだくここだく奈何幾許
  5. 5吾わ吾わわががが戀こ戀ここひひいわたるわたるわたる吾戀渡

引用の仕方

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現代語訳

(倭文手纏)ものの数にも入らないような命なのに、どうしてこんなにも、私は恋い続けているのだろう。

意訳

倭文(日本古来の素朴な織物)で作った腕輪は、玉の腕輪に比べて数のうちにも入らない。そんなとるに足りない身の命で、どうしてこんなにも恋い続けるのかと、自分をあざけりながら恋の深さを歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

倭文手纏
倭文で作った腕輪。玉の腕輪より劣るので、「數にもあらぬ」にかかる。

和歌

作者
安倍虫麻呂(?–752)
奈良時代の官人。母の安曇外命婦は坂上郎女の母と姉妹で、郎女とは従兄妹にあたる。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・672番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
安倍虫麻呂の歌。

修辞

枕詞
「倭文手纏」が「數にもあらぬ」にかかる。

解説

身分の低い自分を卑下しつつ、恋の思いの強さを強調する歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、171頁(コマ89)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、181頁(コマ96)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日