古典ライブラリー

万葉集 巻第四 621〜622番

間無く 戀ふれにかあらむ

佐伯東人とその妻(さえきのあずまひと)

絶え間なく恋しく思うからか、旅にいるあなたが夢に見える。旅が長くなったので、私もおまえのことばかり思っている、恋しがるなよ。九州へ赴任した夫と妻との贈答。

夜、寝床で目を覚ました女性が、夢に見た旅の夫を思って涙ぐんでいる

題詞西海道節度使判官佐伯宿禰東人の妻、夫君に贈れる歌一首/佐伯宿禰東人の和ふる歌一首

  1. 1間あひだ間あひだあいだ無な無ななくくく無間621 妻
  2. 2戀こ戀ここふれふれうれにににかかかあらあらあらむむん戀爾可有牟
  3. 3草くさ草くさくさ枕まくら枕まくらまくら草枕
  4. 4旅たび旅たびたびなるなるなる君きみ君きみきみががが客有公之
  5. 5夢いめ夢いめいめにににししし見み見みみゆるゆるゆる夢爾之所見
  6. 6草くさ草くさくさ枕まくら枕まくらまくら草枕622 東人
  7. 7旅たび旅たびたびににに久ひさ久ひさひさしくしくしく客爾久
  8. 8なりなりなりぬれぬれぬればばば成宿者
  9. 9汝な汝ななをををこそこそこそ念おも念おもおもへへえ汝乎社念
  10. 10莫な莫なな戀こ戀ここひひいそそそ吾わぎ吾わぎわぎ妹も妹もも莫戀吾妹

引用の仕方

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現代語訳

〔621〕絶え間なく恋しく思っているからだろうか、(草枕)旅にいるあなたが夢に見える。

〔622〕(草枕)旅が長くなったので、私こそおまえを思っている。恋しがらないでおくれ、妻よ。

意訳

西海道節度使の判官として九州へ赴任した夫に、妻は、あなたが夢に見えるのは私が絶えず恋しく思うからだろうかと歌を贈る。夫は、旅が長くなって自分こそおまえを思っているのだから、恋しがるなと答えた。

語釈・文法注

文法・本文

戀ふれにかあらむ
恋しく思うからであろうか。
莫戀ひそ
恋しがるな。

和歌

作者
佐伯東人とその妻(生没年未詳)
佐伯東人は天平4年(732)に西海道節度使の判官となった。621番はその妻の歌。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・621〜622番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
天平4年(732)、西海道節度使の判官となった佐伯東人に妻が贈った歌と、東人の答えの歌。

修辞

枕詞
「草枕」が「旅」にかかる。

解説

夢に人が現れるのは、自分が思うからとも、相手が思うからとも考えられた。妻と夫とで、その考え方を踏まえたやりとりになっている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、165頁(コマ86)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、174頁(コマ93)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日