万葉集 巻第四 572〜573番
眞十鏡 見飽かぬ君に
いくら見ても見飽きないあなたに取り残されて、朝も夕もさびしく過ごしている。黒髪が白髪に変わっても、つらい恋にはめぐりあうものだ。都へ帰った大伴旅人を慕う沙弥満誓の歌。
場面イラスト(準備中)
題詞太宰帥大伴卿の京に上りし後、沙彌滿誓の卿に贈れる歌二首
現代語訳
〔572〕(眞十鏡)いくら見ても見飽きないあなたに取り残されて、朝も夕も、さびしく過ごすことになるのだろうか。
〔573〕(ぬばたまの)黒髪が変わって白髪になっても、つらい恋にめぐりあう時があるものだ。
意訳
大伴旅人が都へ帰った後、大宰府に残った沙弥満誓は、見飽きることのない友に取り残されて、朝も夕もさびしいと歌う。573番は、白髪の年になってもこんなにつらい恋(友を慕う思い)にめぐりあうものだと、旅人への思いを恋にたとえている。
語釈・文法注
文法・本文
- 眞十鏡
- 鏡は見るものなので、「見」にかかる枕詞。
- さびつつ
- さびしく思いながら。
和歌
- 作者
- 沙弥満誓(生没年未詳)
俗名は笠麻呂。出家して造筑紫観世音寺別当として大宰府に下り、大伴旅人らと交わった。 - 出典
- 『万葉集』巻第四・相聞・572〜573番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
- 状況
- 大宰帥の大伴旅人が都へ上った後、沙弥満誓が旅人に贈った歌二首。
修辞
- 枕詞
- 「眞十鏡」「ぬばたまの」。
解説
僧の満誓が旅人への友情を恋の言葉で表している。次の574・575番で旅人が答えている。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、160頁(コマ84)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、168頁(コマ90)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日