古典ライブラリー

万葉集 巻第四 557〜558番

大船を 榜ぎの進みに

土師水通(はにしのみみち)

大船を漕ぎ進めて岩にぶつかり転覆するなら転覆しても構わない、妻のためなら。神の社に掛けた幣を返してもらおう、妻に逢えないのだから。筑紫から都へ帰る船旅の歌。

荒波の中を大船が進み、船上の男が都の方角をじっと見つめている

題詞土師宿禰水通、筑紫より京に上る海路にて作れる歌二首

  1. 1大おほ大おほおお船ぶね船ぶねぶねををを大船乎557
  2. 2榜こ榜ここぎぎぎののの進すす進すすすすみみみににに榜乃進爾
  3. 3磐いは磐いはいわににに觸ふ觸ふふりりり磐爾觸
  4. 4覆かへ覆かへかえらららばばば覆かへ覆かへかえれれれ覆者覆
  5. 5妹いも妹いもいもににに依よ依よよりりりてててははは妹爾因而者
  6. 6ちはやぶるちはやぶるちはやぶる千磐破558
  7. 7神かみ神かみかみののの社やしろ社やしろやしろににに神之社爾
  8. 8我わ我わわががが掛か掛かかけけけししし我掛師
  9. 9幣ぬさ幣ぬさぬさははは賜たば賜たばたばらららむむん幣者將賜
  10. 10妹いも妹いもいもににに逢あ逢ああははわなくなくなくににに妹爾不相國

引用の仕方

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現代語訳

〔557〕大船を漕ぎ進めて、岩にぶつかって、ひっくり返るならひっくり返ってもかまわない。妻のためなら。

〔558〕(ちはやぶる)神の社に私が掛けた幣は、返していただこう。妻に逢えないのだから。

意訳

筑紫から都へ帰る船旅で、早く妻に逢いたい水通は、船が岩にぶつかって転覆しても構わないから急いでくれと言う。558番では、旅の無事と妻との再会を願って神に幣を捧げたのに、まだ逢えないのだから返してもらおうと、神に冗談を言っている。

語釈・文法注

文法・本文

覆らば覆れ
転覆するなら転覆してしまえ。
賜らむ
「たばる」はいただく。

和歌

作者
土師水通(生没年未詳)
大宰府の官人。巻第十六に戯れの歌がある。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・557〜558番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
土師水通が、筑紫から都へ上る船旅の途中で詠んだ歌二首。

解説

妻への思いを誇張とユーモアで表した歌で、大宰府の官人たちの戯れの歌の雰囲気がある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、157頁(コマ82)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、165頁(コマ88)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日