万葉集 巻第四 549〜551番
天地の 神も助けよ
天地の神も助けてください、旅行くあなたが家に着くまで。頼りにしていたあなたが去ったら、直接逢うまで恋しく思うだろう。都へ転任する石川足人を、蘆城の駅で送った歌三首。
場面イラスト(準備中)
題詞五年戊辰、太宰少貳石川足人朝臣の遷任するに、筑前國蘆城驛家に餞する歌三首
- 1天天あめ地地つちののの天地之549
- 2神神かみももも助助たすけけけよよよ神毛助與
- 3草草くさ枕枕まくら草枕
- 4旅旅たび行行ゆくくく君君きみががが羈行君之
- 5家家いえににに至至いたるるるまでまでまで至家左右
- 6大大おお船船ぶねののの大船之550
- 7おもひおもひおもい憑憑たのみみみししし念憑師
- 8君君きみががが去去いなななばばば君之去者
- 9吾吾われははは戀戀こひひいむむんななな吾者將戀名
- 10直直ただににに逢逢あふふうまでまでまでににに直相左右二
- 11大和大和やまと路路じののの山跡道之551
- 12島島しまののの浦浦うら廻廻みににに島乃浦廻爾
- 13寄寄よするするする浪浪なみ緣浪
- 14間間あいだももも無無なけむけむけむ間無牟
- 15吾吾わががが戀戀こひひいまくまくまくははは吾戀卷者
現代語訳
〔549〕天地の神々も助けてください。(草枕)旅行くあなたが家に着くまで。
〔550〕(大船の)頼みにしていたあなたが去ってしまったら、私は恋しく思うだろう。じかに逢うまで。
〔551〕大和へ向かう道の島の浦に寄せる波のように、絶え間もないだろう。私の恋しく思う気持ちは。
意訳
神亀5年(728)、大宰少弐の石川足人が都へ転任することになり、大宰府の人々が筑前の蘆城の駅で送別の宴を開いた。旅の無事を神に祈り、頼りにしていた人が去ったら恋しくなるだろうと、別れを惜しんでいる。
語釈・文法注
文法・本文
- 戀ひむな
- 「な」は詠嘆。恋しく思うだろうなあ。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第四・相聞・549〜551番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
- 状況
- 神亀5年(728)、大宰少弐の石川足人が転任するとき、筑前国蘆城の駅家で送別の宴をしたときの歌三首。作者は伝わらない。
修辞
- 序詞
- 551番の「大和路の島の浦廻に寄する浪」が「間も無けむ」を導く。
解説
大宰府の官人たちの送別の宴の歌で、巻第四には大宰府関係の歌が多く収められている。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、156頁(コマ82)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、164頁(コマ88)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日