古典ライブラリー

万葉集 巻第四 536番

飫宇の海の 潮干の潟の

門部王(かどべのおおきみ)

飫宇の海の潮の引いた潟のように、片思いに思いながら行くのだろうか、長い道のりを。出雲で娶った女性との仲が途絶えた後に、門部王が詠んだ歌。

潮の引いた干潟の向こうへ延びる長い道を、貴人がひとりで歩いていく

題詞門部王の戀の歌一首

  1. 1飫宇おう飫宇おうおうののの海うみ海うみうみののの飫宇能海之
  2. 2潮しほ潮しほしお干ひ干ひひののの潟かた潟かたかたののの鹽干乃潟之
  3. 3片かた片かたかた念もひ念もひもいににに片念爾
  4. 4思おも思おもおもひひいややや行ゆ行ゆゆかかかむむん思哉將去
  5. 5道みち道みちみちののの長なが長ながなが道て道ててををを道之永手呼

引用の仕方

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現代語訳

飫宇の海の潮の引いた潟の「かた」のように、片思いのまま思いながら行くのだろうか、長い道のりを。

意訳

門部王は出雲守のとき、国内の娘子を妻にしたが、すぐに通わなくなってしまった。数か月後、ふたたび恋しくなって、この歌を贈った。潟の「かた」から「片思い」を導き、長い道のりを片思いのまま行くのかと嘆いている。

語釈・文法注

文法・本文

長道
「ながて」は長い道のり。

和歌

作者
門部王(?–745)
奈良時代の皇族で、のちに大原真人の姓を賜った。出雲守などを務めた。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・536番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
出雲守の門部王が、国内で娶った娘子に贈った歌。

修辞

序詞
「飫宇の海の潮干の潟の」が同音の「片念」を導く。

解説

371番でも門部王は飫宇の海を詠んでいる。一度は通わなくなった女性に、改めて思いを寄せる身勝手さも、率直に左注に記されている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、155頁(コマ81)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、161頁(コマ86)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日