古典ライブラリー

万葉集 巻第四 531番

梓弓 爪引く夜音の

海上女王(うなかみのおおきみ)

夜、梓弓の弦を爪で鳴らす音が遠くから聞こえるように、遠くからでも、あなたのお言葉を聞くのはうれしいことです。聖武天皇の歌に答えた海上女王の歌。

夜の宮殿で、遠くから弓の弦を鳴らす音が響き、女性が耳をすましている

題詞海上女王の和へ奉れる歌一首

  1. 1梓あづさ梓あづさあずさ弓ゆみ弓ゆみゆみ梓弓
  2. 2爪つま爪つまつま引び引びびくくく夜よ夜よよ音と音ととののの爪引夜音之
  3. 3遠とほ遠とほとお音と音ととにににももも遠音爾毛
  4. 4君きみ君きみきみががが御み御みみ言こと言ことことををを君之御幸乎
  5. 5聞き聞ききかくかくかくしししよしよしよしももも聞之好毛

引用の仕方

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現代語訳

梓弓の弦を爪弾く夜の音のように、遠くからの便りであっても、あなたのお言葉を聞くのはうれしいことです。

意訳

宮中では夜、魔よけのために弓の弦を鳴らした。その音が遠くから響いてくるように、遠くからでもあなたのお言葉をいただけるのはうれしいと、天皇の歌に感謝をこめて答えている。

語釈・文法注

文法・本文

爪引く
弓の弦を爪で引いて鳴らす。
聞かくしよしも
「聞かく」は「聞く」のク語法。聞くことはうれしい。

和歌

作者
海上女王(生没年未詳)
志貴皇子の娘とされる。聖武天皇に仕えた。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・531番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
530番の聖武天皇の歌に、海上女王がお答えした歌。

修辞

序詞
「梓弓爪引く夜音の」が「遠音」を導く。

解説

夜の弦打ちの音という宮廷の風物を用いた、気品のある答歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、154頁(コマ81)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、160頁(コマ86)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日