古典ライブラリー

万葉集 巻第四 519〜520番

雨障 常爲る君は

大伴女郎(おおとものいらつめ)

雨が降ると外出をやめてしまうのが常のあなたは、昨夜の雨にこりてしまったのでしょうか。雨を口実に来ない恋人をからかう大伴女郎の歌と、後の人がそれに唱和した歌。

雨上がりの朝、女性が濡れた庭を見ながら、苦笑いを浮かべている

題詞大伴女郎の歌一首/後の人の追ひて同ふる歌一首

  1. 1雨あま雨あまあま障つつみ障つつみつつみ雨障519 大伴女郎
  2. 2常つね常つねつね爲す爲すするるる君きみ君きみきみははは常爲公者
  3. 3ひさかたひさかたひさかたののの久堅乃
  4. 4昨きそ昨きそきそ夜の夜ののよよよののの雨あめ雨あめあめににに昨夜雨爾
  5. 5懲こ懲ここりりりにににけむけむけんかもかもかも將懲鴨
  6. 6ひさかたひさかたひさかたののの久堅乃520 後の人の追同
  7. 7雨あめ雨あめあめももも降ふ降ふふらららぬぬぬかかか雨毛落粳
  8. 8雨あま雨あまあま障つつみ障つつみつつみ雨乍見
  9. 9君きみ君きみきみににに副たぐ副たぐたぐひひいててて於君副而
  10. 10このこのこの日ひ日ひひ暮く暮くくらさらさらさむむん此日令晩

引用の仕方

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現代語訳

〔519〕雨を口実に家にこもってばかりいるあなたは、(ひさかたの)昨夜の雨にこりてしまったのでしょうか。

〔520〕(ひさかたの)雨でも降ってくれないものか。雨ごもりして、あなたに寄り添ってこの日を過ごそう。

意訳

519番は、雨が降ると出歩かないのが常の恋人が、昨夜の雨にこりて、もう来ないつもりなのかとからかう歌である。520番は、後の人がこれに唱和したもので、いっそ雨が降ってくれれば、雨ごもりを口実にあなたのそばで一日を過ごせるのにと、雨を逆に喜ぶ立場で歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

雨障
「あまつつみ」は雨のために外出を控えること。
降らぬか
「ぬか」は願望。降らないかなあ。

和歌

作者
大伴女郎(?–728)
大伴旅人の妻とされる。大宰府で亡くなった。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・519〜520番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大伴女郎の歌と、それに後の人が唱和した歌。

解説

同じ「雨障」を、来ない恋人への皮肉と、恋人と過ごす口実との両方から歌っていて、対照が面白い。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、151頁(コマ79)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、158頁(コマ85)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日