古典ライブラリー

万葉集 巻第四 516番

吾が持たる

阿倍女郎(あべのいらつめ)

私の持っている三本撚りの丈夫な糸で、付けてさしあげればよかった。今になって悔しい。515番の中臣東人の歌に答えた安倍女郎の歌。

女性が、三本の糸をより合わせた丈夫な糸を手にして、残念そうに見つめている

題詞阿倍女郎の答ふる歌一首

  1. 1吾わ吾わわががが持も持ももたたたるるる吾以在
  2. 2三みつ三みつみつ相あひ相あひあいににに搓よ搓よよれれれるるる三相二搓流
  3. 3絲いと絲いといともちもちもちててて絲用而
  4. 4附つ附つつけけけてててましましましものものもの附手益物
  5. 5今いま今いまいまぞぞぞ悔くや悔くやくやしきしきしき今曾悔寸

引用の仕方

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現代語訳

私の持っている、三本撚りにした丈夫な糸で、紐を付けてさしあげればよかったのに。今になって悔しいことだ。

意訳

紐が切れて泣いているという東人に、安倍女郎は、私の持っている丈夫な三本撚りの糸で付けてあげればよかった、今になって悔しいと答える。相手の嘆きを、ユーモアをまじえてやさしく受けとめている。

語釈・文法注

文法・本文

三相に搓れる
三本の糸をより合わせた、丈夫な。
附けてましもの
「まし」は反実仮想。付ければよかったのに。

和歌

作者
阿倍女郎(生没年未詳)
奈良時代の女性歌人。巻第三の269番の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・516番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
515番の中臣東人の歌に、阿倍女郎が答えた歌。

解説

「三相の糸」は切れにくい丈夫な糸の象徴で、二人の仲を固く結びたいという気持ちがこめられている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、151頁(コマ79)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、158頁(コマ85)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日