古典ライブラリー

万葉集 巻第四 500番

神風の 伊勢の濱荻

碁檀越の妻(ごのだんおちのつま)

伊勢の浜の荻を折り伏せて、旅の宿りをしているのだろうか、あの荒い浜辺で。伊勢へ旅立った夫を思う妻の歌。

風の強い伊勢の浜辺で、旅の男が荻を折り敷いて野宿の支度をしている

題詞碁檀越の伊勢國に往ける時、留れる妻の作れる歌一首

  1. 1神かむ神かむかむ風かぜ風かぜかぜののの神風之
  2. 2伊勢いせ伊勢いせいせののの濱はま濱はまはま荻をぎ荻をぎおぎ伊勢乃濱荻
  3. 3折を折をおりりり伏ふ伏ふふせせせててて折伏
  4. 4旅たび旅たびたび宿ね宿ねねやややすらすらすらむむん客宿也將爲
  5. 5荒あら荒あらあらききき濱はま濱はまはま邊べ邊べべににに荒濱邊爾

引用の仕方

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現代語訳

(神風の)伊勢の浜の荻を折り伏せて、旅の宿りをしているのだろうか、あの荒い浜辺で。

意訳

夫の碁檀越が伊勢へ旅立った後、妻は、夫が今ごろ荒い浜辺で荻を折り敷いて野宿をしているのではないかと案じている。旅の夫の苦労を思いやる、妻の細やかな心が表れている。

語釈・文法注

文法・本文

神風の
「伊勢」にかかる枕詞。

和歌

作者
碁檀越の妻(生没年未詳)
碁檀越の妻。名は伝わらない。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・500番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
状況
碁檀越が伊勢国へ行ったとき、家に残った妻が詠んだ歌。

修辞

枕詞
「神風の」が「伊勢」にかかる。

解説

旅の夫を思う妻の歌の典型である。碁檀越の「檀越」は寺の施主の意で、碁氏の人とみられる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、149頁(コマ78)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、155頁(コマ83)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日