枕草子 第319段 類聚的章段
見苦しきもの
見苦しいものとして、背縫いを片寄せて着た人、襟を後ろに抜いて着た人、汚れた下簾の上達部の車、子を連れて人前に出ること、足駄をはいた袴着の童、壺装束で急いで歩く者、紙冠をつけて祓えをする法師陰陽師、色黒でやせた女のかつら、髭の濃いやせた男と昼寝すること、色黒の人が生絹の単衣を着ることを挙げる。
- 1見見みぐるしきぐるしきぐるしきものものもの題
- 2きぬきぬきぬのののせせせぬひぬひぬいかたかたかたよせよせよせててて着着きたるたるたる人人ひと、、、又又またのけのけのけくびくびくびしししたるたるたる人人ひと、、、下簾下簾したすだれ穢穢きたなげげげなるなるなる上達部上達部かんだちめののの御御み車車くるま。。。例例れいならならならぬぬぬ人人ひとののの前前まえににに子子こをををゐゐいててていきいきいきたるたるたる。。。袴袴はかま着着きたるたるたる童童わらわののの足駄足駄あしだはきはきはきたるたるたる、、、それそれそれははは今今いまやうやうようのののものものものなりなりなり。。。つぼつぼつぼさうさうそう束束ぞくしししたるたるたる者者ものののの急急いそぎぎぎててて歩歩あゆみみみたるたるたる。。。法師法師ほうし陰陽師陰陽師おんようじののの紙紙かみかうぶりかうぶりこうぶりしししててて祓祓はらへへえしししたるたるたる。。。又又また色色いろ黑黑くろううう瘦瘦やせせせ憎憎にくげげげなるなるなる女女おんなのののかつらかつらかつらしししたるたるたる。。。髯髯ひげがちがちがちにににやせやせやせやせやせやせなるなるなる男男おとこととと晝晝ひるねねねしししたるたるたる、、、何何なにののの見見みるるるかひかひかいににに臥臥ふしししたるたるたるにににかかかあらあらあらむむん、、、よるよるよるなどなどなどはははかたちかたちかたちももも見見みえええずずず、、、又又またおしおしおしなべなべなべてててさるさるさる事事こととととなりなりなりにににたれたれたればばば、、、我我われにくげにくげにくげなりなりなりとてとてとて起起おきききゐるゐるいるべきべきべきにににもももあらあらあらずずずかしかしかし。。。つとめてつとめてつとめて疾疾とくくく起起おきききいぬるいぬるいぬるめやすしめやすしめやすし。。。夏夏なつ晝晝ひるねねねしししててて起起おきききたるたるたる、、、いといといとよきよきよき人人ひとこそこそこそ今今いま少少すこしししをかしけれをかしけれおかしけれ。。。えせえせえせがたちがたちがたちはははつやつやつやめきめきめきねねねはれはれはれててて、、、ようせようせようせずずずはははほそほそほそゆがみゆがみゆがみもももしししつつつべしべしべし。。。かたみかたみかたみににに見見みかはしかはしかわしたらたらたらむむん程程ほどのののいけるいけるいけるかひかひかいなさなさなさよよよ。。。色色いろ黑黑くろききき人人ひとのののすゞしすゞしすずし單衣單衣ひとえ着着きたるたるたるいといといと見見みぐるしぐるしぐるしかしかしかし。。。のしのしのしひとへひとへひとえももも同同おなじくじくじくすきすきすきたれたれたれどどどそれそれそれはははかたはかたはかたわにににももも見見みえええずずず、、、ほそほそほそののの通通とおりりりたれたれたればばばにににやややあらあらあらむむん。。。
現代語訳
見苦しいもの。
衣の背縫いを片方に寄せて着ている人。また、襟を後ろに抜いて着ている人。下簾の汚らしい上達部のお車。いつもと違う客人の前に子どもを連れて出て行ったの。袴を着た童が足駄をはいているの。もっともそれは今風のものである。壺装束をした者が急いで歩いているの。法師陰陽師が紙冠をつけて祓えをしているの。また、色黒でやせて醜い女がかつらをつけているの。髭が濃くやせこけた男と昼寝しているのは、何の見がいがあって寝ているのだろうか。夜などは顔かたちも見えず、また誰でもそうするものとなっているので、自分は醜いからといって起きているべきものでもない。翌朝早く起きて帰っていくのは見苦しくない。夏に昼寝をして起きたのは、たいそう身分の高い人こそ少しは趣があるけれど、見苦しい顔立ちの者は、顔がてかてかと光り、寝腫れして、悪くすると顔がゆがんでしまいそうだ。互いに見交わしたときの生きがいのなさよ。色の黒い人が生絹の単衣を着ているのは、たいそう見苦しい。熨斗をかけた単衣も同じように透けているけれど、それは見苦しくは見えない。へそまで透けて通らないからだろうか。
意訳
見苦しいものを率直に並べた段である。衣の着方の乱れから、昼寝の後のむくんだ顔まで、作者の目は容赦がない。とりわけ、髭の濃いやせた男と昼寝をすることについて、夜なら顔も見えずまだよいが、昼の明るさの中で起きて顔を見交わすときの情けなさを描く部分は、作者の辛辣な筆が光る。
語釈・文法注
文法
- 「のけくび」
- 衣の襟を後ろに引いて、首筋を出して着ること。
- 「紙かうぶり」
- 紙冠。法師陰陽師が祓えをするときに額につける三角形の紙。
- 「すゞし」
- 生絹。薄く透ける絹。
解説
作者の美意識と辛辣さがよく表れた、『枕草子』らしい類聚的章段である。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、366–367頁(コマ195)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日