枕草子 第315段 随想的章段
好き好きしくて一人住みする人の
恋多き男が一人住まいで、夜はどこにいたのか、明け方に帰ってきてすぐ起き、眠そうながら硯を引き寄せて墨を丁寧にすり、心をこめて後朝の文を書く。使いの童を呼んでささやいて送り出した後も、経を口ずさみ、粥を食べ、文を読み、使いが戻ると読みかけて返事に心を奪われる様子をおもしろく描く。
- 1すきずきしくすきずきしくすきずきしくててて獨住獨住ひとりずみするするする人人ひとのののよるよるよるはははいづらいづらいずらにににありありありつつつらむらむらん、、、曉曉あかつきににに歸歸かえりりりてててやがてやがてやがて起起おきききたるたるたる、、、まだまだまだねぶたげねぶたげねぶたげなるなるなる氣色氣色けしきなれなれなれどどど硯硯すずりとりとりとり寄寄よせせせ墨墨すみこまやかこまやかこまやかににに押押おししし磨磨すりりりててて事事ことなしびなしびなしびににに任任まかせせせてててなどなどなどはははあらあらあらずずず、、、心心こころとゞめとゞめとどめててて書書かくくくまひろげまひろげまいろげ姿姿すがたをかしうをかしうおかしゅう見見みゆゆゆ。。。白白しろききききぬきぬきぬどもどもどもののの上上うえににに山吹山吹やまぶき紅紅くれないなどなどなどをををぞぞぞ着着きたるたるたる。。。白白しろきききひとへひとへひとえのののいたくいたくいたくしぼみしぼみしぼみたるたるたるををを、、、うちうちうちまもりまもりまもりつゝつゝつつ書書かききき立立たてゝてゝててまへまへまえなるなるなる人人ひとにににももも取取とらららせせせずずず、、、わざとわざとわざとだちだちだちてててこどねりこどねりこどねりわらはわらはわらわのののつきづきしきつきづきしきつきずきしきををを身身み近近じかくくく呼呼よびびび寄寄よせせせててて、、、うちうちうちさゝめきさゝめきささめきててていぬるいぬるいぬる後後のちももも久久ひさしくしくしく詠詠ながめめめててて、、、經經きょうのののさるべきさるべきさるべき所々所々ところどころなどなどなど忍忍しのびびびやかやかやかににに口口くちずさびずさびずさびにににししし居居いたりたりたり。。。奧奧おくのののかたかたかたににに御御おん手水手水ちょうず粥粥かゆなどなどなどしししてててそゝのかせそゝのかせそそのかせばばば步步あゆみみみ入入いりりりててて文机文机ふづくえににに押押おししし懸懸かかりりりててて文文ふみをををぞぞぞ見見みるるる。。。おもしろかりおもしろかりおもしろかりけるけるける所々所々ところどころはははうちうちうちずんじずんじずんじたるたるたるもももいといといとをかしをかしおかし。。。手手て洗洗あらひひいててて直衣直衣のうしばかりばかりばかりうちうちうち着着きててて錄錄ろくをををぞぞぞそらそらそらににに讀讀よむむむ。。。まことにまことにまことにいといといとたふときたふときたうとき程程ほどににに近近ちかききき所所ところなるなるなるべしべしべし。。。ありありありつるつるつる使使つかいうちうちうちけしきばめけしきばめけしきばめばばば、、、ふとふとふと讀讀よみみみさしさしさしててて返返かえりりり事事ごとににに心心こころ入入いるゝるゝるるこそこそこそいといといとほしけれほしけれほしけれ。。。
現代語訳
恋多くて一人住まいをしている人が、夜はどこにいたのだろうか、明け方に帰ってきて、そのまま起きているのが、まだ眠そうな様子だけれど、硯を引き寄せ、墨を丁寧にすって、いいかげんに筆にまかせて書くのではなく、心をこめて書いている、くつろいだ姿がおもしろく見える。白い衣を何枚も重ねた上に、山吹や紅などを着ている。白い単衣のひどくしわになっているのを見つめながら書き上げて、前にいる人にも渡さず、わざわざ小舎人童でふさわしい者を身近に呼び寄せて、ささやいて送り出した後も、長い間物思いにふけって、経のしかるべき箇所などをひそやかに口ずさんでいる。奥の方で手水や粥などを用意してうながすので、歩いて入って、文机に寄りかかって書物を見る。おもしろい所々は声に出して吟じているのもたいそう趣がある。手を洗って直衣だけを着て、経の目録をそらで読む。本当にたいそう尊く聞こえるころ、近い所なのだろう、さっきの使いが戻ってきて合図をすると、ふと読みさして返事に心を奪われるのは、仏に対して気の毒なことだ。
意訳
後朝の文を書く男の朝の様子を、細やかに描いた段である。一晩女のもとで過ごして帰ってくると、眠いのも構わず丁寧に墨をすり、心をこめて手紙を書く。使いを送り出した後は、経を口ずさんだり書物を読んだりして過ごすが、返事が届いたとたん、経などそっちのけで夢中になる。男の心の動きを、外からの観察だけで巧みに描き出している。
語釈・文法注
文法
- 「まひろげ姿」
- くつろいで、衣の前を広げたままの姿。
- 「こどねりわらは」
- 小舎人童。貴人に仕える少年。
- 「錄」
- 経の目録、あるいは経の一節とされる。
解説
恋の後朝の情景を男性の側から描いた珍しい段である。作者の観察眼の鋭さが光る。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、364–365頁(コマ194)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日