枕草子 第314段 随想的章段
女房のまゐりまかでするには
女房が宮中に参上したり退出したりするときに車を借りることがあるが、貸主が快く貸してくれても、牛飼童がいつもより乱暴に牛を走らせたり、供の男たちが早く帰りたそうにしているのは、主人の本心が推し量られて、もう頼む気になれない。業遠の朝臣の車だけは、夜中でも明け方でも嫌な顔をしない。よく教え込んであるのだと述べる。
場面イラスト(準備中)
- 1女房女房にょうぼうのののまゐりまゐりまいりまかでまかでまかでするするするにににははは、、、車車くるまををを借借かるるる折折おりもももあるあるあるににに、、、こゝろこゝろこころよそひよそひよそいしししたるたるたる顏顏かおにににうちうちうち言言いひひいててて貸貸かしししたるたるたるににに、、、牛飼牛飼うしかい童童わらわののの例例れいののの牛牛うしよりよりよりもももしもしもしもざまざまざまにににうちうちうち言言いひひいててて、、、いたういたういとう走走はしりりり打打うつつつももも、、、あなあなあなうたてうたてうたてととと覺覺おぼゆゆゆかしかしかし。。。をのこをのこおのこどもどもどもなどなどなどののの物物ものむつかしげむつかしげむつかしげなるなるなる氣色氣色けしきにてにてにて「「「いかでいかでいかで夜夜よ更更ふけけけぬぬぬさきさきさきににに追追おひひいででで歸歸かえりりりなななむむん」」」ととといふいふいうははは、、、猶猶なお主主しゅうののの心心こころおしおしおしはからはからはかられれれてててとみとみとみののの事事ことなりなりなりととと、、、又又また言言いひひい觸觸ふれれれむむんともともとも覺覺おぼえええずずず、、、業遠業遠なりとおののの朝臣朝臣あそんののの車車くるまのみのみのみややや、、、夜中夜中よなかあかつきあかつきあかつきわかわかわかずずず人人ひとののの乘乘のるるるににに、、、聊聊いささかさるさるさる事事ことなかりなかりなかりけむけむけん、、、よくよくよくぞぞぞ敎敎おしへへへ習習ならははわせせせたりたりたりしかしかしか。。。道道みちににに逢逢あひひいたりたりたりけるけるける女女おんな車車ぐるまののの深深ふかききき所所ところにににおとしおとしおとし入入いれれれててて、、、得得え引引ひききき上上あげげげででで牛飼牛飼うしかいのののはらだちはらだちはらだちけれけれければばば、、、我我わががが從者從者ずさしししてててうたうたうたせせせさへさへさへしししけれけれければばば、、、ましてましてまして心心こころのののまゝまゝままににに誡誡いましめめめ置置おきききたるたるたるににに見見みえええたりたりたり。。。
現代語訳
女房が宮中に参上したり退出したりするときには、車を借りる折もあるが、貸主が快い顔で言って貸してくれたのに、牛飼童が、いつもの牛よりも乱暴に声をかけて、ひどく走らせて打つのも、ああいやだと思われる。供の男たちなどが不機嫌な様子で、「何とかして夜が更けないうちに追い立てて帰りたい」と言うのは、やはり主人の本心が推し量られて、急ぎの用事であっても、もう一度頼もうとも思われない。業遠の朝臣の車だけは、夜中でも明け方でも区別なく人が乗るのに、少しもそういうことがなかったのだろうか、よく教え込んでおいたものだ。道で出会った女車が深みにはまって引き上げられずにいたので、牛飼が腹を立てたところ、業遠は自分の従者に命じて牛飼を打たせさえしたので、まして普段から思いどおりに戒めておいたのだと見えた。
意訳
車を借りたときの使用人の態度から、貸主の本心が透けて見えるという観察である。表向きは快く貸してくれても、牛飼童が乱暴に牛を走らせたり、供の者が早く帰りたがったりすれば、もう二度と頼む気になれない。その中で、業遠の朝臣の車だけは使用人がよくしつけられていて、困っている女車を助けなかった牛飼を打たせたほどだったという。使用人の態度に主人の人柄が表れるという考えである。
語釈・文法注
文法
- 「業遠の朝臣」
- 高階業遠。藤原道長の家司を務めた。
- 「しもざまに」
- 下ざまに。下品に、乱暴に。
- 「主」
- 主人。車の持ち主。
解説
宮仕えの女房の外出事情がうかがえる段である。高階業遠への賛辞が印象的である。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、364頁(コマ194)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日