枕草子 第306段 類聚的章段
病は
病として、胸の病、物の怪、脚気を挙げる。十八、九歳の美しい女房が歯痛に苦しむ姿や、八月ごろ胸を病む女房を同僚や恋人が見舞う様子を描き、評判を聞いた帝が声のよい僧を遣わすと、見舞客が多いのに読経しながらきょろきょろ見回す僧は罰が当たるだろうという。
- 1やまひやまひやまいははは題
- 2胸胸むね、、、ものゝけものゝけもののけ、、、あしあしあしのののけけけ。。。唯唯ただそこはかとなくそこはかとなくそこわかとなくものものものくはくはくわぬぬぬ。。。十八九十八九じゅうはちくばかりばかりばかりののの人人ひとののの髪髪かみいといといと麗麗うるわしくしくしくてててたけたけたけばかりばかりばかりすそすそすそふさやかふさやかふさやかなるなるなるがががいといといとよくよくよく肥肥こえええててて、、、いみじういみじういみじゅう色色いろしろうしろうしろう、、、顏顏かおあいぎやうあいぎやうあいぎょうづきづきずきよしよしよしととと見見みゆるゆるゆるががが、、、齒齒はをををいみじくいみじくいみじくやみやみやみまどひまどひまどいててて、、、額髪額髪ひたいがみもももしとゞしとゞしとどににに泣泣なきききぬらしぬらしぬらし、、、髪髪かみののの亂亂みだれれれかゝるかゝるかかるももも知知しらららずずず、、、面面おもて赤赤あかくくくててて抑抑おさへへえ居居いたるたるたるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。八月八月はちがつばかりばかりばかり白白しろきききひとへひとへひとえ、、、なよらかなよらかなよらかなるなるなる袴袴はかまよきよきよきほどほどほどにてにてにて、、、紫苑紫苑しおんののの衣衣きぬのののいといといとあざやかあざやかあざやかなるなるなるををを引引ひききき懸懸かけけけててて胸胸むねいみじういみじういみじゅう病病やめめめばばば、、、友達友達ともだちののの女房女房にょうぼう達達たちなどなどなどかはるがはるかはるがはるかわるがわる來來きつゝつゝつつ「「「いといといといといといとほしきほしきほしきわざわざわざかなかなかな。。。例例れいもももかくかくかくややや惱惱なやみみみ給給たまふふう」」」などなどなど事事ことなしびなしびなしびににに問問とふふう人人ひともももありありあり。。。心心こころがけがけがけたるたるたる人人ひとははは誠誠まことにににいみじいみじいみじととと思思おもひひい歎歎なげききき、、、人人ひと知知しれれれぬぬぬ中中なかなどなどなどはははましてましてまして人目人目ひとめ思思おもひひいててて寄寄よるるるにににももも、、、近近ちかくくくもももえええ寄寄よらららずずず思思おもひひい歎歎なげきききたるたるたるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。いといといと麗麗うるわしくしくしく長長ながききき髪髪かみををを引引ひきききゆひゆひゆいててて、、、物物ものつくつくつくとてとてとて起起おきききあがりあがりあがりたるたるたる氣色氣色けしきももも、、、いといといと心心こころ苦苦ぐるしくしくしくらうたげらうたげろうたげなりなりなり。。。うへうへうえにににももも聞聞きこしめししめししめしててて御讀經御讀經みどきょうののの僧僧そうののの聲聲こえよきよきよき給給たまははわせせせたれたれたればばば、、、とぶらひとぶらひとぶらい人人びとどもどもどもゝゝもあまたあまたあまた見見み來來きててて經經きょう聞聞ききききなどなどなどするするするもももかくれかくれかくれなきなきなきににに、、、目目めをををくばりくばりくばりつゝつゝつつ讀讀よみみみ居居いたるたるたるこそこそこそ罪罪つみややや得得えらむらむらむとととおぼゆれおぼゆれおぼゆれ。。。
現代語訳
病気は。
胸の病。物の怪。脚気。ただ何となく物が食べられない病。十八、九歳ほどの人で、髪がたいそう美しくて、背丈ほどあり、裾がふさふさとしているのが、たいそうよく太って、とても色白で、顔も愛嬌があって美しく見える人が、歯をひどく病んで苦しみ、額髪もびっしょりと泣き濡らし、髪の乱れかかるのも気づかず、顔を赤くして押さえて座っているのこそ趣がある。八月ごろ、白い単衣に、柔らかな袴をほどよく着て、紫苑の衣のたいそう鮮やかなのをはおって、胸をひどく病んでいると、友達の女房たちなどが代わる代わる来て、「本当にお気の毒なこと。いつもこんなふうにお悩みになるの」などと、さりげなく尋ねる人もいる。思いを寄せている人は、本当にひどいことと思い嘆き、人に知られていない仲などは、まして人目を気にして、寄るにも近くには寄れずに思い嘆いているのこそ趣がある。たいそう美しく長い髪を結んで、物を吐こうとして起き上がった様子も、たいそういじらしく、かわいらしい。帝もお聞きになって、御読経の僧で声のよい者を遣わしてくださったので、見舞いの人々も大勢見に来て、経を聞いたりするのもはばかりがないのに、僧が目をきょろきょろさせながら読んでいるのこそ、罰が当たるだろうと思われる。
意訳
病を挙げながら、病む女性の姿の美しさを描いた段である。歯痛に泣きぬれる若い女房、胸を病んで紫苑の衣をはおる女房。見舞いに来る友人、人目を忍ぶ恋人の嘆き。苦しむ姿にさえ美を見いだす作者のまなざしは独特である。最後は、見舞客の女房たちに気を取られながら読経する僧への皮肉で結ばれる。
語釈・文法注
文法
- 「あしのけ」
- 脚の気。脚気。
- 「物つく」
- 物を吐く。嘔吐する。
- 「事なしびに」
- さりげなく、何でもないふうに。
解説
病む女性の姿を美的にとらえる視点は、平安時代の美意識の一面を示している。最後の僧への皮肉は、作者のいつもの辛辣さである。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、361頁(コマ192)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日