枕草子 第299段 随想的章段
便なき所にて
人目のある不都合な所で人と話をしていたとき、「胸がひどくどきどきするのはなぜだろう」と言われて、作者が「逢坂は胸のみつねに走り井の見つくる人やあらむと思へば」と答えた。
場面イラスト(準備中)
現代語訳
都合の悪い所で人と話をしていたとき、「胸がひどくどきどきしたのは、どうしてこうなのだろう」と言ったのへの返事に、
逢坂では胸ばかりがいつも走り井のように騒ぎます。見つける人がいるのではないかと思うので。
意訳
人目を忍んで会っている最中に、相手が「胸がどきどきする」と言うと、作者は逢坂の関の名所「走り井」を詠み込んで、「人に見つかりはしないかと思うから」と返した。逢う瀬の不安とときめきを、地名を巧みに使って表している。
語釈・文法注
文法
- 「はしり井」
- 走り井。逢坂の関にある湧き水。「走る」に胸の動悸を掛ける。
- 「みつくる」
- 「見つくる(見つける)」に「水」を響かせる。
和歌
逢坂は胸のみつねに走り井の見つくる人やあらむと思へば
- 詠者
- 清少納言
- 状況
- 人目のある所で人と会っていて、胸がどきどきすると言われたときに詠んだ歌。
修辞
- 掛詞
- 「逢坂」に「逢ふ」、「はしり井」に「走り(胸の動悸)」、「みつくる」に「水」と「見つくる」を掛ける。
解説
恋の場面での機知に富んだ歌を伝える段である。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、360頁(コマ192)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日