枕草子 第297段 随想的章段
まことや、下野にくだると
下野に下るという人に、作者が「思ひだにかからぬ山のさせも草たれかいぶきの里は告げしぞ」と詠んだことを記す。
場面イラスト(準備中)
現代語訳
そうそう、下野に下るといった人に、
思いもかけなかった山のさしも草のように、伊吹の里へ行くとは、誰が告げたのでしょう。(あなたが遠くへ行くことなど思いもしなかったのに)
意訳
下野へ旅立つ人に贈った歌である。「させも草」「いぶき」は、藤原実方の名歌「かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを」をふまえた言葉で、思いもかけない別れの寂しさを詠んでいる。
語釈・文法注
文法
- 「させも草」
- さしも草。もぐさの原料となるヨモギ。伊吹山の名産とされた。
- 「いぶきの里」
- 伊吹山のふもと。下野国の伊吹山(栃木県)とする説もある。
和歌
思ひだにかからぬ山のさせも草たれかいぶきの里は告げしぞ
- 詠者
- 清少納言
- 状況
- 下野に下るという人に贈った歌。
修辞
- 掛詞
- 「いぶき」に地名「伊吹」と「言ふ」を響かせる。
- 縁語
- 「させも草」「いぶき」は縁語。
解説
作者自身の歌を書きとめた短い段である。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、359頁(コマ191)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日