枕草子 第287段 随想的章段
うちとくまじきもの
油断できないものとして、悪いと言われる人を挙げ、船旅を詳しく描く。穏やかな海を若い女房たちと歌いながら行くのは楽しいが、急に風が吹いて荒れると恐ろしい。わずかな板一枚の上に乗る船旅の危うさ、海女が命綱一本で潜る恐ろしさを語る。
- 1うちとくうちとくうちとくまじきまじきまじきものものもの題
- 2あしあしあしととと人人ひとにににいはるゝいはるゝいわるる人人ひと。。。さるはさるはさるはよしよしよしととと知知しららられれれたるたるたるよりよりよりはははうらうらうらなくなくなくぞぞぞ見見みゆるゆるゆる。。。
- 3舟舟ふねののの路路みち。。。日日ひのののうらゝかうらゝかうららかなるなるなるににに、、、海海うみのののおもておもておもてのののいみじういみじういみじゅうのどかのどかのどかににに淺綠淺綠あさみどりのののうちうちうちたるたるたるををを引引ひきききわたしわたしわたしたるたるたるやうやうようににに見見みえええててて、、、聊聊いささか恐恐おそろしししききき氣色氣色けしきもももなきなきなき若若わかききき女女おんなののの袙袙あこめばかりばかりばかり着着きたるたるたる。。。侍侍さぶらいののの者者ものののの若若わかやかやかやかなるなるなる諸共諸共もろともににに、、、船船ふねととといふいふいうものものもの押押おしししててて、、、歌歌うたをををいみじういみじういみじゅううたひうたひうたいたるたるたるいといといとをかしうをかしうおかしゅう、、、やんごとなきやんごとなきやんごとなき人人ひとにににももも見見みせせせ奉奉たてまつらららまほしうまほしうまほしゅうおもひおもひおもいいくいくいくににに、、、風風かぜいたういたういとう吹吹ふききき海海うみのののおもておもておもてのののたゞたゞただ荒荒あれれれにににあしうあしうあしゅうなるなるなるににに、、、物物ものもももおぼえおぼえおぼえずずず泊泊とまるるるべきべきべき所所ところににに漕漕こぎぎぎつくるつくるつくるほどほどほど、、、舟舟ふねににに浪浪なみのののかけかけかけたるたるたるさまさまさまなどなどなどはははさばかりさばかりさばかりなごかりなごかりなごかりつるつるつる海海うみともともとも見見みえええずずずかしかしかし。。。思思おもへへえばばば舟舟ふねににに乘乘のりりりてててありくありくありく人人ひとばかりばかりばかりゆゝしきゆゝしきゆゆしきものものものこそこそこそなけれなけれなけれ。。。よろしきよろしきよろしき深深ふかさささにてにてにてだにだにだにさまさまさまはかなきはかなきはかなき物物ものににに乘乘のりりりててて漕漕こぎぎぎ往往ゆくくくべきべきべき物物ものにににぞぞぞあらあらあらぬぬぬややや。。。ましてましてましてそこひそこひそこいももも知知しらららずずずちひろちひろちいろなどなどなどもももあらあらあらむむんににに、、、物物ものいといといと積積つみみみ入入いれれれたれたれたればばば、、、水水みずぎはぎはぎわははは唯唯ただ一尺一尺いっしゃくばかりばかりばかりだにだにだになきなきなきにににげすげすげすどもどもどもののの聊聊いささか恐恐おそろしししとととももも思思おもひひいたらたらたらずずず走走はしりりりありきありきありき、、、つゆつゆつゆあらくあらくあらくもももせせせばばば沈沈しずみみみやややせせせむむんととと思思おもふふうににに、、、大大おおきなるなるなる松松まつののの木木きなどなどなどののの二三尺二三尺にさんじゃくばかりばかりばかりにてにてにてまろまろまろなるなるなるををを、、、五五いつつつつ六六むつつつぼうぼうぼうぼうぼうぼうととと投投なげげげ入入いれれれなどなどなどするするするこそこそこそいみじけれいみじけれいみじけれ。。。やかたやかたやかたととといふいふいう物物ものにににぞぞぞおはすおはすおわす。。。されどされどされど奧奧おくなるなるなるはははいさゝかいさゝかいささかたのもしたのもしたのもし。。。端端はしににに立立たてるてるてる者者ものどもどもどもこそこそこそ目目めくるゝくるゝくるる心心ここちちちすれすれすれ。。。早緒早緒はやおつけつけつけてててのどかのどかのどかにににすげすげすげたるたるたる物物ものののの弱弱よわげげげさささよよよ。。。絕絕たえええなななばばば何何なににににかかかはははならならならむむん、、、ふとふとふと落落おちちち入入いりりりなななむむんををを。。。それそれそれだにだにだにいみじういみじういみじゅうふとくふとくふとくなどなどなどもももあらあらあらずずず。。。我我わががが乘乘のりりりたるたるたるはははきよげきよげきよげににに帽額帽額もこうのすのすのすきかげきかげきかげ、、、妻戶妻戶つまど格子格子こうしあげあげあげなどなどなどしししててて、、、されどされどされどひとしうひとしうひとしゅう重重おもげげげににになどなどなどもももあらあらあらねねねばばば、、、唯唯ただ家家いえののの小小ちいさきききにてにてにてありありあり。。。ことことことふねふねふね見見みやるやるやるこそこそこそいみじけれいみじけれいみじけれ。。。遠遠とおきききはははまことにまことにまことに笹笹ささののの葉葉はををを作作つくりりりてててうちうちうち散散ちらしししたるたるたるやうやうようにににぞぞぞいといといとよくよくよく似似にたるたるたる。。。泊泊とまりりりたるたるたる所所ところにてにてにて舟舟ふねごとごとごとににに火火ひともしともしともしたるたるたるをかしうをかしうおかしゅう見見みゆゆゆ。。。はしはしはしぶねぶねぶねとととつけつけつけててていみじういみじういみじゅうちひさきちひさきちいさきににに乘乘のりりりててて漕漕こぎぎぎありくありくありく、、、つとめてつとめてつとめてなどなどなどいといといとあはれあはれあわれなりなりなり。。。あとあとあとのののしらしらしら浪浪なみははは誠誠まことにににこそこそこそ消消きえええもてもてもてゆけゆけゆけ。。。よろしきよろしきよろしき人人ひとははは乘乘のりりりてててありくありくありくまじきまじきまじき事事こととととこそこそこそ猶猶なおおぼゆれおぼゆれおぼゆれ。。。かちぢかちぢかちぢももも又又またいといといとおそろしおそろしおそろし。。。されどされどされどそれそれそれはははいかにもいかにもいかにもいかにもいかにもいかにもつちつちつちにににつきつきつきたれたれたればばばいといといとたのもしたのもしたのもしととと思思おもふふうににに。。。海士海士あまのののかづきかづきかずきしししたるたるたるははは憂憂うきききわざわざわざなりなりなり。。。腰腰こしにににつきつきつきたるたるたる物物もの絕絕たえええなななばばばいかゞいかゞいかがせせせむむんとととなむなむなん。。。をのこをのこおのこだにだにだにせせせばばばさてさてさてもももありありありぬぬぬべきべきべきををを、、、女女おんなはははおぼろけおぼろけおぼろけののの心心こころならならならじじじ。。。男男おとこははは乘乘のりりりててて歌歌うたなどなどなどうちうちうちうたひうたひうたいてててこのこのこの栲繩栲繩たくなわををを海海うみにににうけうけうけありくありくありく。。。いといといと危危あやうくくくうしろべたくうしろべたくうしろべたくはははあらあらあらぬぬぬにににややや、、、海士海士あまももものぼらのぼらのぼらむむんとてとてとてはははそのそのそのなはなはなわをををなむなむなん引引ひくくく。。。取取とりりり惑惑まどひひい繰繰くりりり入入いるゝるゝるるさまさまさまぞぞぞことわりことわりことわりなるなるなるややや。。。舟舟ふねのののはたはたはたををを抑抑おさへへえててて放放はなちちちたるたるたる息息いきなどなどなどこそこそこそまことにまことにまことに唯唯ただ見見みるるる人人ひとだにだにだにしほたるゝしほたるゝしおたるるににに、、、落落おとししし入入いれれれててて漂漂ただよひひいありくありくありくをのこをのこおのこははは目目めもももあやあやあやにににあさましあさましあさまし。。。更更さらににに人人ひとののの思思おもひひいかくかくかくべきべきべきわざわざわざにににもももあらあらあらぬぬぬことことことにににこそこそこそあああめれめれめれ。。。
現代語訳
油断できないもの。
悪い人だと人に言われる人。もっとも、よい人だと知られている人よりは、裏表がないように見える。
船の旅。日がうららかなときに、海面がたいそうのどかで、浅緑色の打ち絹を引き延ばしたように見えて、少しも恐ろしい様子もないところで、若い女が袙だけを着て、侍の若い者と一緒に、船というものを漕いで、歌をたいそう歌っているのはたいそうおもしろく、高貴な方にもお見せしたいと思って進んで行くうちに、風がひどく吹き、海面がただもう荒れに荒れて悪くなるので、無我夢中で、泊まるはずの所に漕ぎ着けるまでの間、舟に波がかかる様子などは、あれほど穏やかだった海とも見えない。思えば、舟に乗って行き来する人ほど恐ろしいものはない。普通の深さでさえ、あんなに頼りない物に乗って漕いで行くべきものではないのに。まして、底も知れず、千尋もあるような所で、荷物をたくさん積み込んでいるので、水際はわずか一尺ほどもないのに、下々の者たちが少しも恐ろしいとも思わず走り回り、少しでも乱暴にしたら沈みはしないかと思うのに、大きな松の木などの二、三尺ほどの丸太を、五、六本もどしんどしんと投げ入れたりするのは、ひどいものだ。屋形という所にいらっしゃる。けれども奥の方は少し安心だ。端に立っている者たちこそ、目がくらむ気持ちがする。早緒をつけて、のんびりと据え付けてある物の弱々しさよ。切れたらどうなるだろう、すぐに落ちてしまうだろうに。それさえ、たいして太くもない。私の乗っている舟は、こぎれいに帽額の透き影が見え、妻戸や格子を上げたりして、けれど同じように重そうでもないので、ただ小さな家のようである。ほかの舟を見やるのこそ、すばらしい。遠くのは、本当に笹の葉を作ってまき散らしたように、たいそうよく似ている。泊まった所で、舟ごとに火をともしているのは趣深く見える。はし舟と名づけて、たいそう小さい舟に乗って漕ぎ回る、早朝などはたいそうしみじみとした趣がある。後に残る白波は、本当に消えていく。身分のある人は、やはり舟に乗って行き来するべきではないと思われる。陸路もまたたいそう恐ろしい。けれどもそれは、何といっても土の上を行くのだから、たいそう安心だと思うのに。海女が水に潜っているのは、つらい仕事である。腰につけた綱が切れたらどうしようと思う。男でさえ、潜ればそれなりの覚悟がいるだろうに、女はなみなみの心ではあるまい。男は舟に乗って歌などを歌って、この栲縄を海に浮かべて漕ぎ回っている。たいそう危なく、心配ではないのだろうか。海女も上がろうとするときは、その縄を引く。慌てて手繰り寄せる様子はもっともなことだ。舟の端に手をかけて吐く息などは、本当にただ見ている人でさえ涙ぐむのに、海女を海に落とし入れて漂い回っている男は、目もくらむほどあきれたものだ。まったく人の思いつくべき仕事ではないようだ。
意訳
「油断できないもの」として、悪いと評判の人を挙げたあと、船旅の怖さを詳しく語る段である。穏やかな海を歌いながら進む楽しさが、急な風で一変し、板一枚の下は底知れぬ海という恐怖に変わる。荷物を満載して水面すれすれの船で平然と走り回る船頭たち、遠くに笹の葉のように散らばる舟、夜の泊まりの灯火。そして命綱一本で潜る海女と、それを舟の上から歌いながら見ている男への、作者の驚きと憤り。作者の旅の実体験が生々しく伝わってくる。
語釈・文法注
文法
- 「早緒」
- 櫓を舟に結びつける綱。
- 「はしぶね」
- 端舟。本船に付属する小舟。
- 「栲繩」
- 楮の繊維で作った縄。海女の命綱。
- 「しほたるゝ」
- 涙で袖が濡れる。
解説
作者が実際に船旅をした体験に基づくと考えられる段である。父清原元輔の任国周防への下向に同行した若い日の記憶かともいわれる。
海女の過酷な仕事への同情は、宮廷の外の人々の暮らしにも向けられた作者のまなざしを示している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、354–356頁(コマ189–190)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日