枕草子 第281段 日記的章段
その頃、また同じ物忌しに
同じころ、物忌で里に出ていた二日目の昼、退屈でたまらないときに中宮からお手紙が届く。宰相の君が中宮のお気持ちを「いかにして過ぎにしかたを過ぐしけむ暮らしわづらふ昨日今日かな」と書き、作者は「雲の上に暮らしかねける春の日を所からともながめつるかな」と返す。暁に参上すると、中宮は「暮らしかねける」という返事を憎らしいとおっしゃった。
- 1そのそのそのころころころ又又また同同おなじじじ物忌物忌ものいみしししににに、、、さやうさやうさようののの所所ところににに出出いでででたるたるたるににに二日二日ふつかととといふいふいう晝晝ひるつかたつかたつかた、、、いとゞいとゞいとどつれづれつれづれつれずれまさりまさりまさりててて、、、唯今唯今ただいまももも參參まいりりりぬぬぬべきべきべき心心ここちちちするするする程程ほどにににしもしもしも仰仰おおせせせ事事ごとあれあれあればばば、、、いといといとうれしくうれしくうれしくててて見見みるるる。。。淺綠淺綠あさみどりののの紙紙かみににに、、、宰相宰相さいしょうののの君君きみいといといとをかしくをかしくおかしく書書かききき給給たまへへえりりり、、、
- 2「「「いかにいかにいかにしししてててすぎすぎすぎにににしししかたかたかたををを過過すぐしぐしぐしけむけむけんくらしくらしくらしわづらふわづらふわずらう昨日昨日きのうけふけふきょうかなかなかな
- 3とととなむなむなん」」」、、、わたくしわたくしわたくしにににははは「「「今日今日きょうしもしもしも千年千年ちとせののの心心ここちちちするするするををを曉曉あかつきだにだにだに疾疾とくくく」」」とととありありあり。。。このこのこの君君きみののの給給たまははわむむんだにだにだにをかしかるをかしかるおかしかるべきべきべきををを、、、ましてましてまして仰事仰事おおせごとのののさまさまさまにににははは愚愚おろかならならならぬぬぬ心心ここちちちすれすれすれどどど啓啓けいせせせむむん事事こととととははは覺覺おぼえええぬぬぬこそこそこそ。。。「「「雲雲くものののうへうへうえにににくらしくらしくらしかねかねかねけるけるけるはるはるはるののの日日ひををを所所ところからからからともともともながめながめながめつるつるつるかなかなかな」」」、、、
- 4わたくしわたくしわたくしにににははは「「「今宵今宵こよいのののほどほどほどももも少將少將しょうしょうにににやややなりなりなり侍侍はべらららむずむずむずらむらむらん」」」とてとてとて、、、曉曉あかつきににに參參まいりりりたれたれたればばば「「「昨日昨日きのうののの返返かえししし暮暮くらしししかねかねかねけるけるけるこそこそこそいといといとにくしにくしにくし。。。いみじういみじういみじゅうそしりそしりそしりききき」」」ととと仰仰おおせせせらるゝらるゝらるる、、、いといといとわびしうわびしうわびしゅう誠誠まことにににさるさるさることことことももも。。。
現代語訳
そのころ、また同じように物忌をしに、そうした所に出ていたときに、二日目の昼ごろ、ますます退屈がつのって、今すぐにも参上してしまいたい気持ちがするちょうどそのときに、中宮様からの仰せ言があったので、たいそううれしくて見る。浅緑の紙に、宰相の君がたいそう趣深くお書きになっていた。
どのようにして、これまでの日々を過ごしてきたのだろう。あなたのいない昨日今日は、暮らしかねていることよ。
との仰せです」とあり、私信としては「今日はとりわけ千年もたったような気がするので、せめて明け方には早く」とある。この宰相の君がおっしゃるのでさえうれしいはずなのに、まして中宮様の仰せとしては並々でない気持ちがするけれど、申し上げる言葉とも思われないのが困ったことだ。「宮中で暮らしかねていらした春の日を、場所柄のせいかと思って眺めておりました」と返し、
宰相の君への私信としては「今夜のうちにも、少将のようになってしまいましょうか」と書いて、明け方に参上すると、中宮様が「昨日の返事の『暮らしかねける』というのがたいそう憎らしい。ひどく悪く言いましたよ」とおっしゃるのは、たいそうつらく、本当にそうでもあった。
意訳
物忌で里にこもっている作者に、中宮から「あなたがいなくて昨日も今日も暮らしかねている」という歌が届く。作者は「宮中で暮らしかねていらしたのは、場所柄のせいでしょう」と、少しひねって返した。ところが中宮は、自分の気持ちを場所のせいにされたのが不満で、「憎らしい」と責める。冗談めかしたやりとりの中に、作者を待ちわびる中宮の真情がにじんでいる。
語釈・文法注
文法
- 「少將にやなり侍らむずらむ」
- 深草の少将が小野小町のもとに百夜通おうとした話をふまえ、一晩で参上してしまいそうだという意。
- 「所から」
- 場所柄。宮中という場所のせいで。
和歌
いかにして過ぎにしかたを過ぐしけむ暮らしわづらふ昨日今日かな
- 詠者
- 中宮定子(宰相の君代筆)
- 状況
- 物忌で里にいる作者に、中宮が寄こした歌。
雲の上に暮らしかねける春の日を所からともながめつるかな
- 詠者
- 清少納言
- 状況
- 中宮の歌への返歌。宮中(雲の上)で暮らしかねたのは場所のせいでしょう、とひねって返した。
修辞
- 見立て
- 「雲の上」は宮中のこと。
解説
中宮と作者の親密な関係を示す段である。中宮の歌を代筆した宰相の君を介しながらも、中宮自身の気持ちが率直に伝わってくる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、352–353頁(コマ188)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日