枕草子 第278段 日記的章段
雪のいと高う降りたるを
雪が高く降り積もった日、御格子を下ろして炭櫃を囲んでいると、中宮が「少納言よ、香炉峰の雪はどうでしょう」とおっしゃる。作者が御格子を上げさせて御簾を高く巻き上げると、中宮はお笑いになった。女房たちも、その詩句は知っていても思いつかなかった、やはりこの宮にお仕えするにふさわしい人だと言う。
場面イラスト(準備中)
- 1雪雪ゆきいといといと高高たかくくく降降ふりりりたるたるたるををを例例れいならならならずずず御御み格子格子こうしまゐらせまゐらせまいらせててて、、、すびつすびつすびつににに火火ひ起起おこしししててて物語物語ものがたりなどなどなどしししててて集集あつまりまりまり侍侍さぶらふふうににに「「「少納言少納言しょうなごんよよよ香爐峰香爐峰こうろほうののの雪雪ゆきはははいかならいかならいかならむむん」」」ととと仰仰おおせせせられられられけれけれければばば、、、御御み格子格子こうしあげあげあげさせさせさせててて、、、御簾御簾みす高高たかくくく卷卷まききき上上あげげげたれたれたればばば、、、笑笑わらははわせせせたまふたまふたまう。。。人々人々ひとびとももも皆皆みなさるさるさる事事ことははは知知しりりり、、、歌歌うたなどなどなどにににさへさへさへうたへうたへうたえどどど、、、思思おもひひいこそこそこそよらよらよらざりざりざりつれつれつれ。。。「「「なほなほなおこのこのこの宮宮みやののの人人ひとにににはははさるさるさるべきべきべきなめりなめりなめり」」」ととといふいふいう。。。
現代語訳
雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつもと違って御格子を下ろして、炭櫃に火をおこして、話などをして集まってお仕えしていると、中宮様が「少納言よ、香炉峰の雪はどうでしょう」とおっしゃったので、御格子を上げさせて、御簾を高く巻き上げたところ、お笑いになる。女房たちも、「みなそういう詩句は知っていて、歌などにまで詠むけれど、思いつきもしなかった。やはりこの宮にお仕えする人としては、そうあるべきなのでしょう」と言う。
意訳
『枕草子』の中で最もよく知られた段の一つである。中宮定子の「香炉峰の雪はいかならむ」という問いかけは、白居易の詩「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」をふまえた謎かけであった。作者は言葉で答えるかわりに、御簾を高く巻き上げてみせる。詩の一節を行動で示した見事な応答に、中宮はほほえみ、女房たちも感心する。主従の教養と機知が響き合う、鮮やかな一場面である。
語釈・文法注
文法
- 「香爐峰の雪」
- 白居易の詩「遺愛寺の鐘は枕を欹てて聴き、香炉峰の雪は簾を撥げて看る」(『白氏文集』)による。
- 「すびつ」
- 炭櫃。いろり、火鉢。
解説
作者の機知を伝える代表的な逸話で、古来最もよく知られた段である。中宮が詩句で謎をかけ、作者が言葉でなく行動で答える。その呼吸の合った応答に、二人の信頼関係が表れている。
女房たちの「この宮の人にはさるべきなめり」という言葉は、作者をほめるとともに、中宮定子のサロンの教養の高さを示している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、352頁(コマ188)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日