枕草子 第273段 随想的章段
常に文おこする人の
いつも手紙をよこす人が「もう言ってもしかたない」と言って音沙汰がなくなり、物足りなく思っていると、雨の日の夕暮れに傘をさした童が「水増す雨の」と書いた手紙を持って来た。雪の日に随身らしい男が届けた、墨の凍った手紙を女が何度も読み返す様子などを描く。
- 1常常つねににに文文ふみおこするおこするおこする人人ひとののの「「「何何なにかかかははは、、、今今いまはははいふかひいふかひいうかいなしなしなし。。。今今いまははは」」」などなどなど言言いひひいててて又又またののの日日ひ音音おともももせせせねねねばばばさすがさすがさすがにににあけあけあけたてたてたてばばば文文ふみののの見見みえええぬぬぬこそこそこそさうざうしけれさうざうしけれそうぞうしけれととと思思おもひひいててて「「「さてさてさてもももきはきはしかりきはきはしかりきわきわしかりけるけるける心心こころかなかなかな」」」などなどなどいひいひいいててて暮暮くらしししつつつ。。。又又またののの日日ひ雨雨あめいたういたういとう降降ふるるる。。。晝晝ひるまでまでまで音音おともももせせせねねねばばば「「「むげむげむげににに思思おもひひい絕絕たえええにににけりけりけり」」」などなどなどいひいひいいててて端端はしののの方方かたににに居居いたるたるたる夕暮夕暮ゆうぐれにににかさかさかささしさしさしたるたるたる童童わらわののの持持もてててきききたるたるたるををを、、、常常つねよりよりよりももも疾疾とくくくあけあけあけててて見見みれれればばば「「「水水みずますますます雨雨あめののの」」」とととあるあるある、、、いといといと多多おおくくく讀讀よみみみ出出いだしししつるつるつる歌歌うたどもどもどもよりよりよりはははをかしをかしおかし。。。唯唯ただあしたあしたあしたはははさしもさしもさしもあらあらあらずずず、、、さえさえさえつるつるつる空空そらのののいといといと暗暗くろうううかきかきかき曇曇くもりりりててて雪雪ゆきのののかきかきかきくらしくらしくらし降降ふるるるにににいといといと心心こころ細細ぼそくくく見見み出出いだすすす程程ほどもももなくなくなく白白しろくくく積積つもりりりててて猶猶なおいみじういみじういみじゅう降降ふるるるににに、、、隨身隨身ずいじんだちだちだちててて細細ほそやかやかやかににに美々美々びびしきしきしきをのこをのこおのこのののからからからかさかさかささしさしさしててて、、、そばそばそばののの方方かたなるなるなる家家いえののの戶戶とよりよりより入入いりりりててて文文ふみをををさしさしさし入入いれれれたるたるたるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。いといといと白白しろきききみちのくにみちのくにみちのくに紙紙がみ、、、白白しろききき色紙色紙しきしののの結結むすべべべたるたるたる上上うえにににひきひきひき渡渡わたしししけるけるける墨墨すみのののふとふとふと氷氷こおりりりにににけれけれければばば、、、裾裾すそ薄薄うすににになりなりなりたるたるたるををを、、、あけあけあけたれたれたればばばいといといと細細ほそくくく卷卷まきききててて結結むすびびびたるたるたる卷目卷目まきめはははこまごまこまごまこまごまととと窪窪くぼみみみたるたるたるににに、、、墨墨すみのののいといといと黑黑くろううう薄薄うすくくく、、、くだりくだりくだりせばせばせばににに裏裏うらうへうへうえ書書かきききみだりみだりみだりたるたるたるををを、、、うちうちうち返返かえししし久久ひさしうしうしゅう見見みるるるこそこそこそ何事何事なにごとならならならむむんとととよそよそよそにてにてにて見見みやりやりやりたるたるたるもももをかしけれをかしけれおかしけれ。。。まいてまいてまいてうちうちうちほゝゑむほゝゑむほほえむ所所ところはははいといといとゆかしけれゆかしけれゆかしけれどどど、、、遠遠とおううう居居いたるたるたるははは黑黑くろききき文字文字もじなどなどなどばかりばかりばかりぞぞぞ、、、さささなめりなめりなめりととと覺覺おぼゆるゆるゆるかしかしかし。。。額髪額髪ひたいがみながやかながやかながやかにににおもやうおもやうおもようよきよきよき人人ひとののの、、、暗暗くらききき程程ほどににに文文ふみををを得得えててて、、、火火ひともすともすともす程程ほどももも心心こころもとなきもとなきもとなきにににややや、、、火桶火桶ひおけののの火火ひをををはさみはさみはさみあげあげあげててて、、、たどたどしげたどたどしげたどたどしげににに見見み居居いたるたるたるこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。
現代語訳
いつも手紙をよこす人が、「何の、今はもう言ってもしかたがない。もう」などと言って、次の日は音沙汰もないので、それでも夜が明けると手紙が来ないのは物足りないと思って、「それにしても、ずいぶんきっぱりした心だこと」などと言って一日を過ごした。次の日、雨がひどく降る。昼まで音沙汰がないので、「すっかり思い切ってしまったのだ」などと言って、端の方に座っている夕暮れに、傘をさした童が持って来たのを、いつもより早く開けて見ると、「水ます雨の」とだけあるのは、たくさん詠み出した歌などよりもおもしろい。また、朝はそうでもなかったのに、冷え込んでいた空がたいそう暗くかき曇って、雪があたりを暗くして降るのを、たいそう心細く眺めているうちに、たちまち白く積もって、なおひどく降るところに、随身らしい、ほっそりとして見事な男が唐傘をさして、そばの方の家の戸から入って手紙を差し入れたのはおもしろい。たいそう白い陸奥紙や白い色紙を結んだ上に引き渡した墨が、すぐに凍ってしまったので、下の方が薄くなっているのを開けると、たいそう細く巻いて結んである巻き目は、こまごまとくぼんでいて、墨がたいそう黒く、また薄く、行間を狭く、紙の裏表に書き乱してあるのを、何度も返して長い間見ているのは、何が書いてあるのだろうと、よそから見やっているのもおもしろい。まして、ほほえむところなどは、たいそう知りたいけれど、遠くに座っている者には、黒い文字などばかりが見えて、そうなのだろうと思われるのだよ。額髪の長い、顔立ちのよい人が、暗いころに手紙を受け取って、灯火をともす間も待ちきれないのだろうか、火桶の火を挟み上げて、たどたどしげに読んでいるのはおもしろい。
意訳
手紙にまつわる情景を描いた段である。もう終わりだと言って音沙汰のなかった人から、雨の夕暮れに「水増す雨の」と古歌の一節だけを書いた手紙が届く。たくさんの歌を詠むより、そのほうがずっと心に響く。続いて雪の日の場面。凍ってかすれた墨の手紙を、女が何度も読み返してはほほえむ。それを遠くから見る作者の好奇心。最後は、暗がりで灯火を待ちきれず、火桶の火で手紙を読もうとする女の姿。手紙を待ち、受け取り、読む人の心のときめきが、細やかに描かれている。
語釈・文法注
文法
- 「水ます雨の」
- 古歌「水増す雨の」の一節を書いて、思いが募っていることを伝えたもの。
- 「くだりせば」
- 行間を狭く詰めて書くこと。
- 「裏うへ」
- 紙の裏と表。
解説
手紙を受け取る女の心の動きを、外から観察する作者の目が生きている。凍った墨のかすれ、細く巻かれた巻き目のくぼみなど、手紙という物の描写も細やかである。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、350–351頁(コマ187)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日