枕草子 第272段 随想的章段
月の明き見るばかり
月の明るい夜ほど、遠いことや過ぎた日のことが思いやられる時はない。雨は心もとなく、尊い行事も雨で台なしになるのに、濡れて来たことを恩着せがましく言う男がすばらしいはずがない。雪の夜に濡れて来る男はかえって趣がある、と述べる。
- 1月月つきののの明明あかききき見見みるるるばかりばかりばかり遠遠とおくくく物物もの思思おもひひいやらやらやられれれ、、、過過すぎぎぎにににししし事事こと憂憂うかりかりかりしししももも嬉嬉うれしかりしかりしかりしししもももをかしをかしおかしととと覺覺おぼえええしししももも、、、唯今唯今ただいまののの樣樣ようににに覺覺おぼゆるゆるゆる折折おりやややはははあるあるある。。。こまのゝこまのゝこまのの物語物語ものがたりははは何何なにばかりばかりばかりをかしきをかしきおかしき事事こともももなくなくなく、、、詞詞ことばもももふるめきふるめきふるめき見見み所所どころ多多おおからからからねねねどどど、、、月月つきににに昔昔むかしををを思思おもひひい出出いでゝでゝでて、、、蟲蟲むしばみばみばみたるたるたるかはほりかはほりかわおりとりとりとり出出いでゝでゝでて「「「元元もと見見みししし駒駒こまににに」」」ととといひいひいいててて立立たてるてるてるかどかどかど哀哀あわれなりなりなり。。。雨雨あめははは心心こころもとなきもとなきもとなきものものものととと思思おもひひいしみしみしみたれたれたればばばにににややや、、、片時片時かたとき降降ふるるるもももいといといとにくゝにくゝにくくぞぞぞあるあるある。。。やんごとなきやんごとなきやんごとなき事事こと、、、おもしろかるおもしろかるおもしろかるべきべきべき事事こと、、、尊尊とうとくくくめでたかるめでたかるめでたかるべきべきべき事事ことももも、、、雨雨あめだにだにだに降降ふれれればばば言言いふふうかひかひかいなくなくなく口惜口惜くちおしきしきしきににに何何なにかかかそのそのその濡濡ぬれれれてててかこちかこちかこちたらたらたらむむんがががめでたからめでたからめでたからむむん。。。實實げににに交野交野かたの少將少將しょうしょうもどきもどきもどきたるたるたる落窪落窪おちくぼののの少將少將しょうしょうなどなどなどはははをかしをかしおかし。。。それそれそれもももよべよべよべおとゝひおとゝひおとといののの夜夜よもももありありありしかしかしかばばばこそこそこそをかしけれをかしけれおかしけれ。。。足足あし洗洗あらひひいたるたるたるぞぞぞにくくにくくにくく、、、きたなかりきたなかりきたなかりけむけむけん。。。さらさらさらでででははは何何なにかかか、、、風風かぜなどなどなどののの吹吹ふくくく荒々荒々あらあらしきしきしき夜夜よきたるきたるきたるはははたのもしくたのもしくたのもしくてててをかしうをかしうおかしゅうもももありありありなななむむん。。。雪雪ゆきこそこそこそいといといとめでたけれめでたけれめでたけれ。。。「「「忘忘わすれれれめめめややや」」」などなどなど獨獨ひとごちごちごちててて忍忍しのびびびたるたるたることことことははは更更さらなりなりなり。。。いといといとさささあらあらあらぬぬぬ所所ところももも直衣直衣のうしなどなどなどははは更更さらにににもももいはいはいわずずず、、、狩衣狩衣かりぎぬ、、、うへのきぬうへのきぬうえのきぬ、、、藏人藏人くろうどののの靑靑あおいろいろいろなどなどなどのののいといといとひやゝかひやゝかひややかにににぬれぬれぬれたらたらたらむむんははは、、、いみじういみじういみじゅうをかしかるをかしかるおかしかるべしべしべし。。。ろうさうろうさうろうそうなりなりなりともともとも雪雪ゆきにににだにだにだにぬれぬれぬれなななばばばにくかるにくかるにくかるまじまじまじ。。。昔昔むかしののの藏人藏人くろうどはははよるよるよるなどなどなど人人ひとののの許許もとなどなどなどににに、、、唯唯ただ靑色靑色あおいろををを着着きててて雨雨あめにににぬれぬれぬれてててもももしぼりしぼりしぼりなどなどなどしししけるけるけるががが、、、今今いまははは晝晝ひるだにだにだに着着きざざざめりめりめり。。。唯唯ただろうさうろうさうろうそうをををのみのみのみこそこそこそうちうちうちかづきかづきかずきためためためれれれ。。。衞府衞府えふなどなどなどののの着着きたるたるたるはははましてましてましていといといとをかしかりをかしかりおかしかりしししものものものををを、、、かくかくかく聞聞ききききててて雨雨あめにににありかありかありかぬぬぬ人人ひとやややはははあらあらあらむずむずむずらむらむらん。。。月月つきのののいといといとあかきあかきあかき夜夜よ、、、紅紅くれないののの紙紙かみのののいみじういみじういみじゅう赤赤あかきききににに「「「唯唯ただあらあらあらずずず」」」とととももも書書かきききたるたるたるををを廂廂ひさしにににさしさしさし入入いれれれたるたるたるををを、、、月月つきにににあてゝあてゝあてて見見みしししこそこそこそをかしかりをかしかりおかしかりしかしかしか。。。雨雨あめ降降ふらららむむん折折おりはははさささはははありありありなななむむんややや。。。
現代語訳
月の明るいのを見ているときほど、遠いことが思いやられ、過ぎ去ったつらかったことも、うれしかったことも、おもしろいと思ったことも、ついさっきのことのように思われる時があろうか。狛野の物語は、それほどおもしろいこともなく、言葉も古めかしく、見どころも多くないけれど、月に昔を思い出して、虫食いの蝙蝠扇を取り出して、「もと見し駒に」と言って立っている場面は、しみじみと趣がある。雨は心もとないものと深く思い込んでいるからだろうか、わずかの間降るのもたいそう憎らしい。高貴な事、おもしろいはずの事、尊くすばらしいはずの事も、雨さえ降れば言いようもなく残念なのに、どうしてその、濡れて来たと恩着せがましく言うのがすばらしいことがあろうか。本当に、交野の少将を非難した落窪の少将などはおもしろい。それも、前の晩や前々日の夜も来ていたからこそおもしろいのだ。足を洗っているのは憎らしく、汚かったことだろう。そうでなければどうして。風などの吹く荒々しい夜に来たのは、頼もしくておもしろくもあるだろう。雪こそたいそうすばらしい。「忘れめや」などと独り言を言って、忍んで来るのはもちろんである。それほどでもない所にも、直衣などは言うまでもなく、狩衣、袍、蔵人の青色の袍などが、たいそう冷たく濡れているのは、たいそう趣があるだろう。緑衫であっても、雪にさえ濡れていれば憎らしくはないだろう。昔の蔵人は、夜などに女のもとなどに、ただ青色の袍を着て、雨に濡れても絞ったりしたものだが、今は昼でさえ着ないようだ。ただ緑衫ばかりをかぶっているようだ。衛府の者などが着ているのは、まして趣があったものなのに、こう聞いて、雨の日に出歩かない人などいるだろうか。月のたいそう明るい夜に、紅の紙のたいそう赤いのに、「ただあらず」とだけ書いたのを、廂に差し入れてあったのを、月の光に当てて見たのはおもしろかった。雨の降るときに、そんなことができるだろうか。
意訳
前段から続く、月と雨と雪をめぐる随想である。月の夜は昔のことが今のことのように思い出される。それに対して雨は、どんなすばらしい行事も台なしにしてしまう憎らしいもので、雨に濡れて来たことを恩に着せる男などはありがたくない。ところが雪は違う。雪に濡れた直衣や蔵人の青色の袍は、かえって趣がある。最後に、月明かりの下で赤い紙に書かれた短い手紙を読んだ思い出を語り、「雨の日にこんなことができるか」と結ぶ。作者の美意識がはっきりと表れた一節である。
語釈・文法注
文法
- 「こまのゝ物語」
- 散逸した物語。前の「物語は」の段にも見える。
- 「落窪の少將」
- 『落窪物語』の主人公。雨の夜に足を洗ってまで女のもとに通った。
- 「ろうさう」
- 緑衫。六位の着る緑色の袍。
- 「忘れめや」
- 古歌の一節を独り言に口ずさむこと。
解説
雨の夜の訪問を称える世間の考えに対し、作者は月夜や雪の夜を好むと主張する。物語の場面を例に引きながら、恋の情趣を論じているのが興味深い。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、349–350頁(コマ186–187)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日