枕草子 第262段 類聚的章段
わろきものは
見苦しいものとして、言葉の使い方のおかしいことを挙げる。文字一つで上品にも下品にもなる。「と」を落として「言はむずる」「出でむずる」と言うのは見苦しく、文章に書くのはなおさらだ。物語を下手に書き写すのも作者が気の毒だと述べる。
- 1わろきわろきわろきものものものははは題
- 2詞詞ことばののの文字文字もじ怪怪あやしくしくしくつかひつかひつかいたるたるたるこそこそこそあれあれあれ、、、唯唯ただ文字文字もじ一一ひとつつつににに怪怪あやしくしくしくももも、、、あてあてあてにににもももいやしくいやしくいやしくもももなるなるなるはははいかなるいかなるいかなるにににかかかあらあらあらむむん。。。さるはさるはさるはかうかうこう思思おもふふう人人ひと萬萬よろずののの事事ことににに勝勝すぐれれれてててもももえええあらあらあらじじじかしかしかし。。。いづれいづれいずれををを善善よききき惡惡あしきしきしきとととははは知知しるるるにににかかかあらあらあらむむん。。。さりともさりともさりとも人人ひとををを知知しらららじじじ。。。唯唯たださささうちうちうち覺覺おぼゆるゆるゆるもももいふいふいうめりめりめり。。。難義難義なんぎののの事事ことをををいひいひいいてててそのそのその事事ことさせさせさせむむんとととすすすととといはいはいわむむんととといふいふいうををを、、、ととと文字文字もじをををうしなひうしなひうしないててて「「「唯唯ただ言言いははわむずるむずるむずる、、、里里さとへへへ出出いでででむずるむずるむずる」」」などなどなどいへいへいえばばば、、、やがてやがてやがていといといとわろしわろしわろし。。。ましてましてまして文文ふみををを書書かきききてててはははいふいふいうべきべきべきにににもももあらあらあらずずず。。。物語物語ものがたりこそこそこそあしうあしうあしゅう書書かきききなどなどなどすれすれすればばば、、、いひがひいひがひいいがいなくなくなくつくりつくりつくり人人びとさへさへさへいといといとほしけれほしけれほしけれ。。。「「「なほすなほすなおす、、、定本定本じょうほんのののまゝまゝまま」」」などなどなど書書かきききつけつけつけたるたるたるいといといと口口くちをしをしをし。。。「「「ひでひでひでつくるつくるつくるまにまにまに」」」などなどなどいふいふいう人人ひともももありありありききき。。。もとむもとむもとむととといふいふいう事事ことををを見見みむむむととと皆皆みないふいふいうめりめりめり。。。いといといと怪怪あやしきしきしき事事ことををを男男おとこなどなどなどはははわざとわざとわざとつくろはつくろはつくろわででで殊更殊更ことさらにににいふいふいうはははあしからあしからあしからずずず。。。我我わががが詞詞ことばにににもてもてもてつけつけつけててていふいふいうががが心心こころおとりおとりおとりするするすることことことなりなりなり。。。
現代語訳
見苦しいものは。
言葉の文字をおかしく使っているのがそうだ。ただ文字一つで、妙にも、上品にも下品にもなるのは、どういうわけだろう。もっとも、こう思っている人も、すべてのことにすぐれているわけではないだろう。どれをよい、悪いと判断できるのだろうか。それでも人の言うことは気にしまい。ただ、そう思われることを言うのだろう。「難儀のことを言ひて、その事させむとす」と言おうとするのを、「と」の文字を落として、「ただ言はむずる」「里へ出でむずる」などと言うと、すぐにたいそう見苦しい。まして文章に書くのは言うまでもない。物語こそ、下手に書き写したりすると、どうしようもなく作者まで気の毒だ。「なほす」「定本のまま」などと書きつけてあるのはたいそう残念だ。「ひでつくるまに」などと言う人もいた。「もとむ」ということを「見む」とみな言うようだ。たいそう妙なことを、男などがわざと取り繕わずに、ことさらに言うのは悪くない。自分の言葉にしてしまって言うのが、がっかりすることである。
意訳
言葉づかいの乱れに対する作者の厳しい目が表れた段である。一字の違いで上品にも下品にもなる言葉の繊細さを指摘し、助詞を落とした言い方や、誤った写本を嘆く。一方で、男性がわざとくだけた言葉を使うのは悪くないとし、それを自分の言葉にしてしまうのが見苦しいという区別をしている。言葉に敏感な作者の面目がうかがえる。
語釈・文法注
文法
- 「むずる」
- 助動詞「むず」の連体形。「むとする」がつづまった俗語的な言い方。
- 「定本」
- 写本で、底本とした本。写本の注記として書きつけられたもの。
解説
作者の言語感覚がよく表れた段で、当時の言葉の乱れを知る資料としても興味深い。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、345–346頁(コマ184–185)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日