枕草子 第254段 類聚的章段
うれしきもの
うれしいものとして、まだ読んでいない物語がたくさんあること、続きの巻を見つけること、悪い夢が何でもないと判じられること、中宮が自分に目を向けて話してくれること、遠くの人の病が治った知らせ、思う人がほめられること、知らなかった古歌を後で見つけること、上質の紙を得ること、人に問われた歌をすぐ思い出せること、得意げな人をやりこめることなどを挙げる。
- 1うれしきうれしきうれしきものものもの題
- 2まだまだまだ見見みぬぬぬ物語物語ものがたりののの多多おおかるかるかる。。。又又また一一ひとつつつををを見見みててていみじういみじういみじゅうゆかしうゆかしうゆかしゅうおぼゆるおぼゆるおぼゆる物語物語ものがたりののの二二ふたつつつ見見みつけつけつけたるたるたる。。。心心こころおとりおとりおとりするするするやうやうようもももありありありかしかしかし。。。人人ひとのののやりやりやり捨捨すてててたるたるたる文文ふみををを見見みるるるににに同同おなじじじつゞきつゞきつづきあまたあまたあまた見見みつけつけつけたるたるたる。。。いかならいかならいかならむむんととと夢夢ゆめををを見見みててて恐恐おそろしろしろしととと胸胸むねつぶるゝつぶるゝつぶるるににに、、、ことことことにににもももあらあらあらずずず合合あわせせせなどなどなどしししたるたるたるいといといとうれしうれしうれし。。。よきよきよき人人ひとののの御御お前前まえににに人々人々ひとびとあまたあまたあまた侍侍さぶらふふう折折おりににに、、、昔昔むかしありありありけるけるける事事ことにににもももあれあれあれ、、、今今いま聞聞きこしめししめししめし世世よにににいひいひいいけるけるける事事ことにににもももあれあれあれ語語かたらららせせせ給給たまふふうををを、、、我我われににに御覽御覽ごらんじじじ合合あわせせせてててののの給給たまはせはせわせ、、、いひいひいいきかきかきかせせせ給給たまへへえるるるいといといと嬉嬉うれししし。。。遠遠とおききき所所ところははは更更さらなりなりなり、、、同同おなじじじ都都みやこののの內內うちながらながらながら、、、身身みにににやんごとなくやんごとなくやんごとなく思思おもふふう人人ひとののの惱惱なやむむむををを聞聞ききききててていかにいかにいかにいかにいかにいかにととと覺束覺束おぼつかなくなくなく歎歎なげくくくににに、、、をこたりをこたりおこたりたるたるたるせうそこせうそこしょうそこ得得えたるたるたるもももうれしうれしうれし。。。思思おもふふう人人ひとののの、、、人人ひとにににももも譽譽ほめめめられられられ、、、やんごとなきやんごとなきやんごとなき人人ひとなどなどなどののの、、、口口くちをしからをしからおしからぬぬぬものものものにににおぼしおぼしおぼしのたまふのたまふのたまうものゝものゝものの折折おり、、、もしはもしはもしは人人ひとととと言言いひひいかはしかはしかわしたるたるたる歌歌うたののの聞聞きこえええてててほめほめほめられられられ、、、うちうちうちぎゝぎゝぎきなどなどなどににに譽譽ほめめめらるゝらるゝらるる、、、みづからみづからみずからのののうへうへうえにににはははまだまだまだ知知しらららぬぬぬ事事ことなれなれなれどどど猶猶なお思思おもひひいやらやらやらるゝるゝるるよよよ。。。いたういたういとううちうちうち解解とけけけたらたらたらぬぬぬ人人ひとのののいひいひいいたるたるたるふるきふるきふるき事事ことののの知知しらららぬぬぬををを聞聞きききき出出いでででたるたるたるもももうれしうれしうれし。。。後後のちににに物物もののののなかなかなかなどなどなどにてにてにて見見みつけつけつけたるたるたるはははをかしうをかしうおかしゅう「「「唯唯ただこれこれこれにににこそこそこそありありありけれけれけれ」」」とととかのかのかのいひいひいいたりたりたりししし人人ひとぞぞぞをかしきをかしきおかしき。。。みちのくにみちのくにみちのくに紙紙がみ、、、白白しろききき色紙色紙しきし、、、たゞたゞただのののももも白白しろううう清清きよきききははは得得えたるたるたるもももうれしうれしうれし。。。恥恥はずかしきしきしき人人ひとののの歌歌うたののの本本もと末末すえ問問とひひいたるたるたるににに、、、ふとふとふとおぼえおぼえおぼえたるたるたる我我われながらながらながらうれしうれしうれし。。。常常つねにににはははおぼゆるおぼゆるおぼゆる事事ことももも又又また人人ひとののの問問とふふうにににははは清清きよくくく忘忘わすれれれててて止止やみみみぬるぬるぬる折折おりぞぞぞ多多おおかるかるかる。。。とみにとみにとみに物物ものもとむるもとむるもとむるににに見見み出出いでででたるたるたる。。。唯今唯今ただいま見見みるるるべきべきべき文文ふみなどなどなどをををもとめもとめもとめ失失うしなひひいててて、、、よろづよろづよろずののの物物ものをををかへすがへすかへすがへすかえすがえす見見みたるたるたるににに捜捜さがししし出出いでででたるたるたるいといといとうれしうれしうれし。。。物物ものあはせあはせあわせ何何なにくれくれくれととといどむいどむいどむことことことににに勝勝かちちちたるたるたるいかでいかでいかでかかか嬉嬉うれしからしからしからざらざらざらむむん。。。又又またいみじういみじういみじゅう我我われはははととと思思おもひひいてててしたりしたりしたりがほがほがおなるなるなる人人ひとはかりはかりはかり得得えたるたるたる、、、女女おんなどちどちどちよりよりよりももも男男おとこはははまさりまさりまさりてててうれしうれしうれし。。。これこれこれがががたふたふたうははは必必かならずせせせむずむずむずらむらむらんとととつねつねつねににに心心こころづかひづかひずかいせせせらるゝらるゝらるるもももをかしきをかしきおかしきににに、、、いといといとつれなくつれなくつれなくなになになにとととももも思思おもひひいたらたらたらぬぬぬやうやうようにてにてにてたゆめたゆめたゆめ過過すぐすすすもももをかしをかしおかし。。。にくきにくきにくきものゝものゝもののあしきあしきあしきめめめ見見みるるるももも罪罪つみははは得得えらむらむらむととと思思おもひひいながらながらながらうれしうれしうれし。。。挿櫛挿櫛さしぐしむすばむすばむすばせせせてててをかしげをかしげおかしげなるなるなるももも又又またうれしうれしうれし。。。思思おもふふう人人ひとははは我我わががが身身みよりよりよりもももまさりまさりまさりてててうれしうれしうれし。。。御御お前前まえににに人々人々ひとびと所所ところもももなくなくなく居居いたるたるたるににに、、、今今いまのぼりのぼりのぼりたれたれたればばば少少すこししし遠遠とおききき柱柱はしらもともともとなどなどなどににに居居いたるたるたるををを、、、御覽御覽ごらんじじじつけつけつけててて「「「こちこちこちこここ」」」ととと仰仰おおせせせられられられたれたれたればばば、、、道道みちわけわけわけててて近近ちかくくく召召めししし入入いれれれたるたるたるこそこそこそ嬉嬉うれしけれしけれしけれ。。。
現代語訳
うれしいもの。
まだ読んでいない物語がたくさんあるの。また、一冊を読んで、たいそう続きが読みたいと思っていた物語の二冊目を見つけたの。読んでみたら期待はずれということもあるけれど。人が破り捨てた手紙を見ていて、続きの部分をたくさん見つけたの。どうなることだろうと思うような夢を見て、恐ろしいと胸がどきどきしていたのに、何でもないと夢合わせをしてもらったのは、たいそううれしい。身分の高い方の御前に女房たちが大勢お仕えしているときに、昔あったことでも、今お聞きになって世間で言っていることでも、お話しになるのを、私の方に目を合わせておっしゃり、言い聞かせなさるのは、たいそううれしい。遠い所はもちろん、同じ都の中でも、自分にとって大切に思う人が病気だと聞いて、どうだろう、どうだろうと気がかりで嘆いているときに、快方に向かったという知らせを受け取ったのもうれしい。思う人が人にもほめられ、身分の高い人などが、なかなかの者だとお思いになりおっしゃる折や、あるいは人と詠み交わした歌が評判になってほめられ、伝え聞いた所などでほめられるのは、自分のことではまだ経験がないけれど、やはり想像されるよ。それほど打ち解けていない人が口にした古歌で、知らないものを聞き出したのもうれしい。後で書物の中などで見つけたのはおもしろく、「ああ、これだったのだ」と、あの言った人のことがおもしろく思い出される。陸奥紙や白い色紙、普通の紙でも白くきれいなのを手に入れたのもうれしい。気後れするような立派な人が、歌の上の句や下の句を尋ねたときに、ふと思い出せたのは、我ながらうれしい。いつもは覚えていることも、また人に尋ねられるときれいに忘れてしまって終わることが多いものだ。急いで物を探しているときに見つけ出したの。今すぐ見なければならない書状などを探して見つからず、あらゆる物を何度もひっくり返して見たところ、探し出したのはたいそううれしい。物合わせや何やかやと競い合うことに勝ったのは、どうしてうれしくないことがあろう。また、たいそう自分こそはと思って得意顔をしている人をだまして、うまくやったのは、相手が女どうしよりも男のほうがいっそううれしい。きっとこの仕返しをしてくるだろうと、いつも用心させられるのもおもしろいのに、相手はたいそう平気で何とも思っていないような様子で、こちらを油断させて過ごしているのもおもしろい。憎らしい者がひどい目にあうのを見るのも、罰が当たるだろうと思いながらうれしい。挿櫛を作らせて、それが美しくできたのもまたうれしい。思う人のことは、自分のことよりもまさってうれしい。中宮様の御前に女房たちが場所もないほど座っているときに、今参上したので、少し離れた柱のもとなどに座っていたのを、お見つけになって「こちらへ」とおっしゃったので、人々が道を開けて近くに召し入れてくださったのこそ、うれしい。
意訳
作者がうれしいと感じることを、思いつくままに並べた長い段である。物語の続きを見つける、悪い夢が吉と判じられる、病人の回復の知らせ、上質の紙を手に入れる、思い出せなかった古歌を書物の中で見つける。どれも身近な喜びばかりである。得意顔の男をやりこめるうれしさや、憎い人がひどい目にあうのを見て、罰が当たると思いながら喜んでしまう本音もさらりと書く。最後は、大勢の女房の中から中宮に「こちらへ」と呼ばれる喜びで結ばれ、中宮への深い思いがにじむ。
語釈・文法注
文法
- 「心おとり」
- 期待していたよりも劣って見えること。
- 「合せ」
- 夢合わせ。夢の吉凶を判じること。
- 「みちのくに紙」
- 陸奥紙。陸奥国産の上質の檀紙。
- 「はかり得たる」
- だましおおせた、うまくやりこめた。
- 「たふ」
- 答。仕返し、報復。
解説
『枕草子』の中でもよく知られた段の一つで、作者の人柄や好みがよく表れている。物語や紙への愛着は、文筆に生きた作者ならではのものである。
最後に置かれた、中宮から「こちこ」と呼ばれる喜びの場面は、次段の紙の話とともに、中宮と作者の親密さを伝えている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、331–332頁(コマ174–175)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日