枕草子 第237段 随想的章段
細殿の遣戸を
細殿の遣戸を朝早く押し開けると、御湯殿の馬道から下りて来る殿上人が、ほころびた直衣から色々な衣をこぼれ出させているのを押し入れながら北の陣の方へ歩いていく。開いた遣戸の前を通るとき、冠の纓を引き越して顔を隠して過ぎて行くのがおもしろいという。
場面イラスト(準備中)
- 1ほそどのゝほそどのゝほそどのの遣戶遣戶やりどいといといととうとうとう押押おしししあけあけあけたれたれたればばば、、、御湯殿御湯殿おゆどののののめだうめだうめどうよりよりよりおりおりおりてててくるくるくる殿上人殿上人てんじょうびとののの萎萎なえええたるたるたる直衣直衣のうし指指さし貫貫ぬきのののいたくいたくいたくほころびほころびほころびたれたれたればばば、、、いろいろいろいろいろいろのののきぬきぬきぬどもどもどものののこぼれこぼれこぼれ出出いでででたるたるたるををを押押おししし入入いれれれなどなどなどしししててて、、、北北きたののの陣陣じんのののかたかたかたざまざまざまににに歩歩あゆみみみ行行ゆくくくににに、、、あきあきあきたるたるたる遣戶遣戶やりどののの前前まえををを過過すぐぐぐとてとてとて纓纓えいをををひきひきひきこしこしこしててて顏顏かおにににふたぎふたぎふたぎててて過過すぎぎぎぬるぬるぬるもももをかしをかしおかし。。。
現代語訳
細殿の遣戸をたいそう早く押し開けたところ、御湯殿の馬道から下りて来る殿上人が、着なれた直衣や指貫がひどくほころびているので、色とりどりの衣がこぼれ出ているのを押し込んだりして、北の陣の方へ歩いて行くが、開いている遣戸の前を通るときに、冠の纓を前に引き回して顔をふさいで通り過ぎて行ったのもおもしろい。
意訳
朝早く、女房の局から帰っていく殿上人の姿である。ほころびた直衣から下に着た衣がはみ出しているのを押し込みながら、急いで歩いていく。開いた戸の前では、冠の纓を顔の前に回して顔を隠す。朝帰りの気まずさと照れくささが、何気ない仕草から伝わってくる。
語釈・文法注
文法
- 「めだう」
- 馬道(めどう)。殿舎と殿舎の間の、板を渡した通路。
- 「纓」
- 冠の後ろに垂らす細長い布。
解説
朝帰りの男の姿を、ユーモラスに描いた小品である。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、327頁(コマ170)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日