枕草子 第213段 日記的章段
十月十余日の月
十月十日過ぎの明るい月夜、女房たちが濃い衣を上に着て月見に出歩いたとき、中納言の君が紅の張り衣を着て髪を首から前に回していたのが、新しい卒塔婆にそっくりだったので、若い女房たちは「靫負の佐」とあだ名をつけた。
場面イラスト(準備中)
- 1十月十月じゅうがつ十餘日十餘日とおかあまりののの月月つきいといといとあかきあかきあかきにににありきありきありきててて物物もの見見みむむむとてとてとて、、、女房女房にょうぼう十五六人十五六人じゅうごろくにんばかりばかりばかり皆皆みな濃濃こききききぬきぬきぬをををうへうへうえににに着着きててて、、、引引ひききき隱隱かくしししつゝつゝつつありありありししし中中なかににに、、、中納言中納言ちゅうなごんののの君君きみののの紅紅くれないののの張張はりりりたるたるたるををを着着きててて、、、頸頸くびよりよりより髪髪かみをををかいかいかいこしこしこし給給たまへへえりりりしかしかしかばばば、、、あたらしきあたらしきあたらしきそとはそとはそとわにににいといといとよくよくよくももも似似にたりたりたりしかしかしかななな。。。ゆげひゆげひゆげいのののすけすけすけとととぞぞぞわかきわかきわかき人々人々ひとびとはははつけつけつけたりたりたりししし。。。しりしりしりににに立立たちちちててて笑笑わらふふうももも知知しらららずずずかしかしかし。。。
現代語訳
十月十日過ぎの月がたいそう明るいときに、出歩いて見物しようと、女房十五、六人ほどが、みな濃い色の衣を上に着て、顔を隠すようにしていた中で、中納言の君が紅の張り衣を着て、首のところから髪を前に回していらっしゃったので、新しい卒塔婆にたいそうよく似ていたことだよ。「靫負の佐」と若い女房たちはあだ名をつけた。本人は、後ろについて笑っているのも知らないのだよ。
意訳
月夜の散歩での、女房たちのたわいない笑い話である。中納言の君が、真っ赤な張り衣に髪を首から前に垂らした姿は、まるで新しい卒塔婆のようだった。若い女房たちは「靫負の佐(ゆげいのすけ)」とあだ名をつけて、後ろで笑い合う。本人は気づかない。宮仕えの日常の、気の置けない明るさが伝わってくる。
語釈・文法注
文法
- 「そとは」
- 卒塔婆。供養のために墓に立てる細長い板。
- 「ゆげひのすけ」
- 靫負の佐。衛門府の次官。赤い袍を着たことから、紅の衣の姿をたとえた。
解説
同僚の装いをからかう女房たちの姿を、作者は温かく描いている。卒塔婆にたとえるのはずいぶん辛辣だが、仲間内の冗談として許される親しさがあったのだろう。
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出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、319頁(コマ162)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日