枕草子 第199段 類聚的章段
笛は
笛の中では横笛がすばらしく、遠くから近づく音、遠ざかる音、懐に入れても目立たない手軽さ、知った調子の美しさを述べる。笙の笛は月夜に車の中で聞くのがよいが扱いにくく、篳篥はうるさいが、臨時の祭で横笛に篳篥が加わって吹き上げるところは身の毛もよだつほどすばらしいという。
- 1笛笛ふえははは題
- 2橫笛橫笛よこぶえいみじういみじういみじゅうをかしをかしおかし。。。遠遠とおうううよりよりより聞聞きこゆるゆるゆるがががやうやうやうやうようよう近近ちこうううなりなりなりゆくゆくゆくもももをかしをかしおかし。。。ちかゝりちかゝりちかかりつるつるつるがががはるかはるかはるかににになりなりなりててていといといとほのかほのかほのかににに聞聞きこゆるゆるゆるもももいといといとをかしをかしおかし。。。車車くるまにてにてにてもももかちかちかちにてにてにてももも馬馬うまにてにてにてももも、、、すべてすべてすべてふところふところふところにににさしさしさし入入いれれれてててもたるもたるもたるももも何何なにとととももも見見みえええずずず。。。さばかりさばかりさばかりをかしきをかしきおかしきものものものはははなしなしなし。。。ましてましてまして聞聞きききき知知しりりりたるたるたる調子調子ちょうしなどなどなどいみじういみじういみじゅうめでたしめでたしめでたし。。。曉曉あかつきなどなどなどににに忘忘わすれれれててて枕枕まくらのののもともともとにににありありありたるたるたるををを見見みつけつけつけたるたるたるももも猶猶なおをかしをかしおかし。。。人人ひとののの許許もとよりよりよりとりとりとりにににおこせおこせおこせたるたるたるをををおしおしおし包包つつみみみててて遣遣やるるるももも唯唯ただ文文ふみのののやうやうようににに見見みえええたりたりたり。。。さうさうそうのののふえふえふえははは月月つきのののあかきあかきあかきににに車車くるまなどなどなどにてにてにて聞聞きこえええたるたるたるいみじういみじういみじゅうをかしをかしおかし。。。所所ところせくせくせくもてもてもてあつかひあつかひあつかいにくゝにくゝにくくぞぞぞ見見みゆるゆるゆる。。。吹吹ふくくく顏顏かおやややいかにいかにいかにぞぞぞ。。。それそれそれはははよこよこよこ笛笛ぶえもももふきふきふきなしなしなしありありありかしかしかし。。。ひちりきひちりきひちりきはははいといといとむつかしうむつかしうむつかしゅう秋秋あきののの蟲蟲むしをををいはゞいはゞいわばくつわくつわくつわ蟲蟲むしなどなどなどににに似似にててて、、、うたてうたてうたてけぢかくけぢかくけじかく聞聞きかかかまほしからまほしからまほしからずずず、、、ましてましてましてわろうわろうわろう吹吹ふきききたるたるたるはははいといといとにくきにくきにくきににに臨時臨時りんじののの祭祭まつりののの日日ひ、、、いまだいまだいまだおまへおまへおまえにににははは出出いででではてゞはてゞはてで物物もののののうしろうしろうしろにてにてにて横笛横笛よこぶえをををいみじういみじういみじゅう吹吹ふききき立立たてててたるたるたる、、、あなあなあなおもしろおもしろおもしろととと聞聞きくくく程程ほどににに、、、なからなからなからばかりばかりばかりよりよりよりうちうちうちそへそへそえててて吹吹ふきききのぼせのぼせのぼせたるたるたる程程ほどこそこそこそ、、、唯唯ただいみじういみじういみじゅう麗麗うるわしきしきしき髪髪かみもたらもたらもたらむむん人人ひとももも皆皆みな立立たちちちあがりあがりあがりぬぬぬべきべきべき心心ここちちちぞぞぞするするする。。。やうやうやうやうようよう琴琴こと笛笛ふえあはせあはせあわせててて步步あゆみみみ出出いでででたるたるたるいみじういみじういみじゅうをかしをかしおかし。。。
現代語訳
笛は。
横笛はたいそうおもしろい。遠くから聞こえてくるのが、だんだん近くなっていくのもおもしろい。近くで鳴っていたのが遠くなって、たいそうかすかに聞こえるのも、たいそうおもしろい。車に乗っていても、徒歩でも、馬に乗っていても、いつも懐に差し入れて持っているのも、何とも目立たない。これほどおもしろいものはない。まして聞き知っている調子などは、たいそうすばらしい。明け方などに、男が忘れて枕もとに置いてあったのを見つけたのも、やはりおもしろい。その人のもとから取りによこしたのを、包んで渡すのも、ただ手紙のように見える。笙の笛は、月の明るい夜に、車の中などで聞こえたのはたいそうおもしろい。ただ、かさばって扱いにくそうに見える。吹く顔はどうであろうか。それは横笛でも吹き方によってはそうなるだろう。篳篥はたいそううるさく、秋の虫でいえば轡虫などに似て、いやな感じで近くでは聞きたくない。まして下手に吹いているのはたいそう憎らしいのに、臨時の祭の日、まだ御前には出きらずに物の後ろで横笛をたいそう吹き立てているのを、ああおもしろいと聞いているうちに、途中から篳篥が加わって吹き上げたときこそ、ただもう、たいそう美しい髪を持っている人でも、みな髪が逆立ってしまいそうな気持ちがする。だんだんと琴や笛を合わせて歩み出て来るのは、たいそうおもしろい。
意訳
笛の中で横笛を最もすばらしいとし、その魅力を具体的に語っている。近づいては遠ざかる音色、懐に入れても目立たない手軽さ、そして恋人が忘れていった笛を手紙のように包んで返すという場面まで添えられている。篳篥はうるさいと手厳しいが、臨時の祭で横笛に篳篥が加わって高らかに吹き上げる瞬間だけは、髪の毛が逆立つほどの感動があるという。音楽の感動を身体の感覚で表しているのがおもしろい。
語釈・文法注
文法
- 「さうのふえ」
- 笙の笛。竹の管を束ねた形の管楽器。
- 「ひちりき」
- 篳篥。縦笛の一種で、音が大きく鋭い。
- 「くつわ蟲」
- 轡虫。秋にガチャガチャとやかましく鳴く虫。
- 「立ちあがりぬべき」
- 髪が逆立つ、つまり身の毛がよだつほどの感動。
解説
楽器の音色を、恋の場面や虫の声にたとえて描いた、作者らしい段である。横笛と篳篥を対照的に評しながら、最後に両者が合わさる瞬間のすばらしさで結んでいる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、312–313頁(コマ159)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日