古典ライブラリー

枕草子 第183段 類聚的章段

心にくきもの

奥ゆかしく心ひかれるものとして、隔てて聞く女房の忍びやかな声や衣ずれ、食事の際の箸や匙の音、打ち衣のつやの上にかかる髪、炭櫃の火に照らされた几帳の紐や御簾の帽額、夜更けの碁石の音、夜中にひそやかに笑う男の声などを挙げる。

  1. 1こゝろにくきこゝろにくきこころにくきものものもの題
  2. 2物もの物ものものへだてゝへだてゝへだてて聞き聞ききくくくににに、、、女房にようばう女房にようばうにょうぼうとととはははおぼえおぼえおぼえぬぬぬ聲こゑ聲こゑこえののの忍しの忍しのしのびびびやかやかやかににに聞きこ聞きこきこえええたるたるたるににに、、、こたへこたへこたえわかやかわかやかわかやかにににしししてててうちうちうちそよめきそよめきそよめきててて參まゐ參まゐまいるるるけはひけはひけわい。。。物もの物ものものまゐるまゐるまいる程ほど程ほどほどにににややや、、、箸はし箸はしはしかひかひかいなどなどなどのののとりとりとりまぜまぜまぜてててなりなりなりたるたるたるひさげひさげひさげののの柄え柄ええのののたふれたふれたうれ伏ふ伏ふふすすすももも耳みみ耳みみみみこそこそこそとゞまれとゞまれとどまれ。。。打う打ううちちちたるたるたるきぬきぬきぬのののあざやかあざやかあざやかなるなるなるににに、、、さうがしうさうがしうそうがしゅうはははあらあらあらででで髪かみ髪かみかみのののふりふりふりやらやらやられれれたるたるたる。。。いみじういみじういみじゅうしつらひしつらひしつらいたるたるたる所ところ所ところところのののおほとなぶらおほとなぶらおおとなぶらははは參まゐ參まゐまいらららででで、、、長なが長ながながすびつすびつすびつにににいといといと多おほ多おほおおくくくおこしおこしおこしたるたるたる火ひ火ひひののの光ひかり光ひかりひかりににに、、、御み御みみ几帳きちやう几帳きちやうきちょうののの紐ひも紐ひもひものののいといといとつやゝかつやゝかつややかににに見み見みみえええ、、、みすみすみすのののもかうもかうもこうのののあげあげあげたるたるたる、、、このこのこのきはやかきはやかきわやかなるなるなるもももけざやかけざやかけざやかににに見み見みみゆゆゆ。。。よくよくよく調てう調てうちょうじじじたるたるたる火桶ひをけ火桶ひをけひおけののの灰はひ灰はひはい清きよ清きよきよげげげにににおこしおこしおこしたるたるたる火ひ火ひひににに、、、よくよくよく書か書かかきききたるたるたる繪ゑ繪ゑえののの見み見みみえええたるたるたるをかしをかしおかし。。。はしはしはしのののいといといときはやかきはやかきわやかにににすぢかひすぢかひすじかいたるたるたるもももをかしをかしおかし。。。夜よ夜よよいたういたういとう更ふ更ふふけけけててて人ひと人ひとひとののの皆みな皆みなみなねねねぬるぬるぬる後のち後のちのちにににとととのののかたかたかたにてにてにて、、、殿上人てんじやうびと殿上人てんじやうびとてんじょうびとなどなどなど物もの物ものものいふいふいうににに、、、奧おく奧おくおくににに棊石ごいし棊石ごいしごいしけにけにけにいるいるいる音おと音おとおとのののあまたあまたあまた聞きこ聞きこきこえええたるたるたるいといといと心こころ心こころこころにくしにくしにくし。。。簀子すのこ簀子すのこすのこににに火ひ火ひひともしともしともしたるたるたる。。。物もの物ものものへだてゝへだてゝへだてて聞き聞ききくくくににに人ひと人ひとひとののの忍しの忍しのしのぶるぶるぶるががが夜中よなか夜中よなかよなかなどなどなどうちうちうち驚おどろ驚おどろおどろきききててていふいふいう事こと事ことことははは聞きこ聞きこきこえええずずず、、、男をとこ男をとこおとこももも忍しの忍しのしのびびびやかやかやかにににうちうちうち笑わら笑わらわらひひいたるたるたるこそこそこそ何事なにごと何事なにごとなにごとならならならむむんとととをかしけれをかしけれおかしけれ。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

奥ゆかしく、心ひかれるもの。

物を隔てて聞いていると、女房とは思われない声が忍びやかに聞こえたのに、答える声が若々しくて、衣ずれの音をさせて参上する気配。お食事を差し上げるときだろうか、箸や匙などが混じり合って鳴っているところに、提子の柄が倒れ伏す音も耳にとまる。打ち衣のつややかなものに、騒がしくない様子で髪が振りかけられているの。たいそう美しく飾りつけた部屋で、大殿油はともさず、長炭櫃にたくさんおこした火の光に、御几帳の紐がたいそうつやつやと見え、御簾の帽額を巻き上げてある、その鮮やかな色もくっきりと見える。よく手入れした火桶の灰をきれいにならしておこした火に、上手に描いた絵が見えているのもおもしろい。火箸がたいそうくっきりと斜めに置いてあるのもおもしろい。夜がたいそう更けて、人がみな寝てしまった後に、外の方で殿上人などが話をしているときに、奥で碁石を碁笥に入れる音がたくさん聞こえるのは、たいそう奥ゆかしい。簀子に灯火をともしているの。物を隔てて聞いていると、人が忍んでいるのが、夜中などに目を覚まして話すことは聞こえず、男もひそやかに笑っているのは、何事だろうと興味をそそられる。

意訳

「心にくし」は、はっきりとは見えないものに、かえって心ひかれる奥ゆかしさをいう。几帳越しに聞こえる声、衣ずれ、箸の音、夜更けの碁石の音、ひそやかな笑い声。作者が挙げるのは、ほとんどが音や気配、ほのかな光である。灯火を落とした部屋で、炭櫃の火に照らされて几帳の紐がつやめく場面など、光と影の美しさもとらえている。

語釈・文法注

文法

「かひ」
匙(かい)。
「ひさげ」
提子。酒などを入れて注ぐ、つるのある器。
「おほとなぶら」
大殿油。宮中や貴族の邸でともす灯火。
「けにいる」
碁石を笥(け、碁石入れ)に入れる。

解説

視覚よりも聴覚に訴えるものが多く挙げられているのが特徴である。見えないものを想像させる奥ゆかしさに、平安時代の美意識の一つの典型がある。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(枕草紙) 板倉屋書房、明治36年(1903)、309–310頁(コマ157–158)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日